今日のよき日に
短いですが。
拓也さんは綾乃さんが自分の結婚なのに他人事みたいで気になっているのですが、仕事に忙殺されていました。
仕事中に蘇芳さんにこぼしたところ「マリッジブルーでは」と言われました。まあハネムーン中にじっくり話し合えばいいか、と仕事に戻ったのです。
3ヶ月後、綾乃さんは無事に引き継ぎを終え、みんなに祝福されて退社しました。
もちろん、同期、フロア、仕事でお世話になった部署合同と、最後の方は連日送別会でした。紫さんと蘇芳さんも送別会を開いてくれたのですが、何故か拓也さんも乱入し結局いつもの食事会になったりもしましたが。
お仕事が無くなって、綾乃さんは心の中にぽっかり空いたような気がしました。
仕事は大変だったけど、楽しかったなぁと自分を振り返ります。このままぼ~っと一生暮らすのか~何て思っていたら――。
お母さまsに今日はエステ、明日は美容院にネイル、お買い物と引っ張り回されております。合間にお友達や紫さんと会う時間を作り、残業ガンガンの拓也さんとゆっくり話す暇もありません。愛ある結婚て訳じゃないしと綾乃さんは諦めておりました。
実はかおるお母さんに綾乃さんがマリッジブルーでは?と話した拓也さん。あらまあ大変。悩む暇が無いくらい忙しくすれば大丈夫よ!とお母さまsが動いたのです。
これが忙しい拓也さんの出来る精一杯でした。
そんなこんなで、3ヶ月。あっという間に結婚式当日です。
綾乃さんは、前日から実家に泊まっております。ここから各務のおうちにお嫁にいくのです。綾乃さんがたった1つお願いしたことでした。
朝早くリムジンがお迎えに来ました。プランナーさんのこだわりです。
お母さんと二人、ホテルに到着。ここからは綾乃さんは、スタッフの言うがままになります。着付けヘアメイクが終わると挙式、披露宴と長丁場の始まりです。何しろ、世界のカガミですから、招待客の数も半端ありません。
何とか挙式を笑顔で乗りきり、今は披露宴会場の扉の前で綾乃さんは拓也さんの横にたっています。ちらっと拓也さんの顔を見れば、いつも通り。
こんなもんか、と笑顔を顔に張り付けて、綾乃さんは、前を向きます。
「新郎新婦の入場です!」
司会者の声がかかり、扉が開かれます。
「皆様には今日の良き日に、お集まりいただき――」
司会者の言葉により、綾乃さんと拓也さんの結婚式が始まったのでした。