表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

紫さん心配する

 綾乃さんは一晩かけて心の中を整理しました。婚約は受け入れます。断れない話ですし、八方丸く収まるからです。お見合いだと思えばいいのです。

 拓也さんに関しては、今までと同じ関係でいようと決めました。愛情の押し売りはしたくありません。


 綾乃さんは普通にしていたつもりだったのですが、翌朝みんなにいたく心配されました。どうやら夕食の時にかなり上の空だったようです。

 拓也さんにも、いきなりで悪かったな、と謝られたくらいです。


 その晩、各務のお父さまお母さまと拓也さんから改めてお話があり、綾乃さんは「わかりました」とお答えしたのでした。



 週末、拓也さんが泊まりがけで出張だったので、綾乃さんは紫さんのおうちにお泊まりに出かけました。

 紫さんの旦那さんの蘇芳さんは拓也さんの親友で経営企画室係長、今回の出張に同行してます。

 綾乃さんも友達が少なくない方ですが、カガミの内情がからんでいるので、話をできるのは事情を知っている紫さんだけです。

 紫さんは、高校の1年先輩で、よく各務のおうちにも遊びに来てもらっていました。会社でも同じフロアで、各務のこともカガミのこともよくわかっているのです。


 ご飯も食べて、お風呂も入り、ワインとおつまみを用意して、さぁガールズトークの始まりです。


「綾乃ちゃん、婚約のことに蘇芳さんから聞いたわ」


「あ、拓也さん話したんですね」


「綾乃ちゃん、いいの?」


「もう、決まった話ですから」


綾乃さんはふっと笑いました。紫さんの眉が下がります。


「大丈夫ですよぉ。今とほとんど変わらないし。会社は辞めることになるけど」


「綾乃ちゃんの気持ちは?専務室に閉じ籠った日、本当はこの話をしたんでしょ?嫌だったんじゃないの?」


「突然だったから、びっくりしちゃったんです。それに嫌じゃないですよ」


綾乃さんはふんわり微笑みます。


「ホントに?」


「はい。紫さんとこみたいにラブラブじゃないけど、友達夫婦になれればなぁって」


「綾乃ちゃん~」


 うるうるおめめの紫さんが、綾乃さんに抱きつきました。いつの間にか、ワインが空です。紫さんは、お酒にあまり強くありません。

 まずいと思った綾乃さんは、さりげなく紫さんのグラスにウーロン茶を注ぎます。

 綾乃ちゃんは幸せにならなきゃダメ!を繰り返す紫さんをなだめる綾乃さん。やがてソファーで眠ってしまった紫さんに布団をかけると、客間のベットに転がりました。


 幸せになれるかなぁ。

 綾乃さんは、1つ息を吐くと、夢の世界に旅だったのでした。


 翌日、昼過ぎに蘇芳さんは帰ってきました。紫さんが、嬉しそうに迎えます。

 綾乃さんがいいなぁと眺めていたら、蘇芳さんの後ろから拓也さんが顔を出します。


「あら、拓也さん。いらっしゃい」


「すまないな、休みにこいつ借りて」


「そうだぞ、まだまだ新婚なのに!」


「あらあら、お仕事でしょ」


 じゃれ合う拓也さんと蘇芳さんに突っ込む紫さん。綾乃さんもクスクス笑ってしまいました。



 出張土産でお茶をしてからおいとましました。拓也さんの車で各務のおうちまで帰ります。


「本当にラブラブだよね、あの2人」


「結婚したらおさまるかと思ったが、ぜんぜんだな」


「ふふ、でもちょっとうらやましいかも」


「あれがか?」


「うん、女子としてはね。自分がするかどうかは別にして」


「そんなもんか」


「そんなもんです」


 いまいち納得いかないといった拓也さんの横顔を見ながら、前と同じように話せてることにホッとした綾乃さんなのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ