綾乃さんの現状
入江綾乃さんは、入社3年目。もうすぐ26歳になります。幼稚園から大学まで筋金入りの女子校育ち。高校から父の海外赴任に伴い、知人のおうちにお世話になっています。
そこのおうちは、世界的大企業の社長さんのおうちだったりするので、毎日黒塗りの車で送り迎えされちゃいました。お嬢様学校だったので、悪目立ちはしません。綾乃さんは、部活動は熱心に、お勉強はほどほどにがんばりました。大学に入ってからは、お食事会や飲み会の時は、3歳上の息子さんがお迎えです。まるで過保護のお父さんとお兄さんを持った気分でした。
そんな訳で、ばっちりがっちりガードされたおかげで(?)清く正しい学生生活を送りました。
おじ様に、もちろんうちの会社入るよね、といわれて、素直にうなずきました。去年大好きな先輩が入ったのです。綾乃さんにとってわたりに船です。しかも、あの世界的なカガミコーポレーションです。うなずかないわけがありません。
入社してからは、おじ様の息子さんの部下になりました。カガミコーポレーション専務取締役営業本部長 各務拓也さん。ちょっと俺様なイケメンです。
専務としての秘書(男性)は別にいて、綾乃さんのお仕事は、営業本部長としてのお仕事のアシスタント、いってみれば窓口なのでした。前任者のおば様が定年退職するので引き継いだのです。
最初は大変でしたが、おば様の退職時には、あなたになら任せられるとお墨付きをもらえるほどまでになりました。綾乃さんは、仕事にやりがいを感じるようになり、ますます張り切ります。
同じフロアには、大好きな紫先輩がいます。拓也さんの親友でよく遊びに来ていた蘇芳さんもいて、とても居心地がいいです。実は、社長と拓也さんが手を回した結果なのですが、綾乃さんは、これっぽっちも気づいていません。営業部のみんなは、そんな綾乃さんをあたたかく見守っています。
社長の娘同然の綾乃さんです。入社前から、話題の人でした。しかも「姫」ですから、近づこうとした男性もいましたが、拓也さんのブロックでみんな撃沈しました。綾乃さんはといえば、仕事にいっぱいいっぱいで、そんなことに気がまわっていません。
そういう訳で、綾乃さんは社会人になってからも、ばっちりがっちりガードされているのでした。
「おい、帰るぞ。綾乃、早くしろ」
「待って~、拓也さん」
今日もまた、二人の声がエントランスに響きます。
社内組織は、適当です。こんなのあるわけ無いと思ってもスルーしてください。現代のおとぎ話ですから~。