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8008E列車 寝ていた


 小学校2年生の春。

(とも)。久しぶりに駅でも行ってみるか。」

駿(しゅん)兄ちゃんがそう持ちかけてきた。

「あっ。行きたい。行きたい。」

僕は久しぶりに100系に会えると思って興奮した。この頃坂口(さかぐち)ちゃんたちと遊んでいたから、100系新幹線に会いに行っていなかったのだ。

「駅って。」

当然その場にいる坂口(さかぐち)ちゃんにもこのことは通じている。

「浜松駅に行くんだよ。坂口(さかぐち)ちゃんも一緒に行く。」

そういうと、駿(しゅん)兄ちゃんから待ったがかかった。

「ちょっと待った。(もえ)ちゃんを連れて行くっていうのはどうかなぁ・・・。(とも)。お前の場合はおじさんに連れてくよっていえば済むことだけど、(もえ)ちゃんはそうはいかないだろ。(もえ)ちゃんの親に連れてくよっていうこと言わなきゃ。」

「・・・そうなんだ。じゃあ、僕がそれ言ってくる。」

「だから。お前がそれ言っても仕方ないし、(もえ)ちゃんが行きたいって言ってもしょうがない。(もえ)ちゃんが自分の親に言わなきゃ。」

「言ってくる。」

そういって坂口(さかぐち)ちゃんは離れから出て行った。10分ぐらいして戻ってくると、

「私も行く。」

許しが出たようだった。ていうか。よく許可が出たものだと思った。いくらなんでも僕のいとこのお兄ちゃんに連れて行くといってどんな親が許すだろう。それとも、坂口(さかぐち)ちゃんが何か言ったのだろうか・・・。そこはまぁ、どうでもいいかぁ・・・。

 浜松駅に着くと久しぶりにここに来たという気になった。

駿(しゅん)兄ちゃん早く。」

「わかってる。わかってる。そんなに急ぐな。まだ行っちゃわないから。」

駿(しゅん)兄ちゃんはそう言うと僕たちに入場券を渡した。

「ほら、(とも)からそこに通せ。」

抱かれて改札を通る。次は坂口(さかぐち)ちゃんが抱かれて改札を通る。一緒に駿(しゅん)兄ちゃんも入ってきた。

「よしっ。行こう。」

それで階段を駆け上がっていった。駿(しゅん)兄ちゃんは改札口を通った時のまま坂口(さかぐち)ちゃんを抱いて、僕の後を追っかけてきた。どっちのホームに上がっていいかわからない。とりあえず左に行こうとすると、駿(しゅん)兄ちゃんが右へ行くように言った。

 ホームに上がると久しぶりの光景が広がっていた。もうちょっとで「こだま」名古屋(なごや)行きが入る。

駿(しゅん)兄ちゃん。あっちのホームに新幹線が来るのに何でこっち来たの。」

「こっちでも見えるだろ。」

「100系は間近で見たいの。」

「分かってる。分かってるからいい子にしてろ。」

「はーい。」

「100系っていつもナガシィが模型で走らせてるやつ。」

「うん。それの本物が来るんだ。カッコいいんだよ。」

「・・・。」

確かに入ってきた新幹線は今まで「ひかり」とか無縁だった300系新幹線。だんだんと「ひかり」の運用にも入ってきたようだ。「ひかり」が100系でなくなるのは信じられない。

「「ひかり」って100系新幹線じゃなかったっけ。」

(とも)。100系新幹線もだんだん疲れてきたんだよ。だから、新しい子たちにもっとたくさん走ってもらおうって思ってるんだよ。」

「・・・それでも100系は「ひかり」じゃなきゃダメなの。」

(・・・100系は「ひかり」じゃなきゃダメ・・・。どういう意味だろう。)

「あのなぁ・・・。(とも)、自分が100系の「ひかり」が好きだからって言っても本当はそうじゃなかったりするってことだよ。お前の好きな500系新幹線だって「のぞみ」だけじゃないんだぞ。「こだま」だって「ひかり」だって500系で走ることはあるんだし、これからあるかもしれないんだぞ。」

「・・・。」

「ふくれたってどうにもならないって。」

そうすると坂口(さかぐち)ちゃんが僕の頬に人差し指をつけて、ふくれた頬を抑えた。

「エヘヘ。」

「・・・。」

 しばらく時間が経つと100系新幹線の「こだま」が入ってきた。カフェテリアがついているといったからG編成。ここまではわかる。でも、これ以上はわからない。

「100系新幹線だ。」

「うわっ。大きい。」

僕は久しぶりに駿(しゅん)兄ちゃんに抱かれずに100系を見上げた。ホームの上から3メートルぐらいはあるだろう巨体はとても大きい。100系はその巨体をしばらく浜松のホームに横たえていた。その間に500系「のぞみ」が抜いて行った。

 入場券が使える時間をフルに使って、浜松駅を後にした。あとにしたのは3時ぐらいだと思った。おやつを食べてから家に帰る。その帰りの列車の中で僕は寝てしまった。電車の中では基本寝ないを貫き通してきたのに・・・。

「ナガシィ寝てる。」

「そうだな・・・。久しぶりに100系見たから疲れたんだろうね。」

「ああ・・・。私も眠たい。」

「眠ればいいじゃんか。着いたら二人とも起こすから、安心して寝ろ。」

「えっ・・・。うん。」

それで(もえ)はしばらくして眠りについた。

「んっ。」

駿(しゅん)兄ちゃんはあることに気付いた。

「偶然かなぁ・・・。」

(もえ)の手は寝ている僕の右手の上に置かれていたのだった。互いの頭を寄り添わせて・・・。


本編と照らし合わせていただきたいです。萌の言っていたことは真実です。

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