表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

8006E列車 夜

 小学校3年生の夏。

(じゅん)兄ちゃん遊んでよ。」

いつもは駿(しゅん)兄ちゃんにたかっているけど、駿(しゅん)兄ちゃんは今日でかけていて、家には来ない。

「はいはい。でも、遊ぶのはちょっと待ってくれよ。俺も見たいのがあるから。」

「見たいのって何。」

「プロジェクト○。この前「きたぐに」のことやったから・・・。お前も見たいだろ。」

「うん。」

「きたぐに」ってなんだろうって思ったけど、僕に振ってくるってことは電車のことなのだろう。もちろん。僕はそれがどんなビデオか知らないのだ。

 (じゅん)兄ちゃんとビデオを見始めると、火事の描写が出てきた。あっ。事故のことでその救出劇なんだなということがここで分かった。(もえ)もこのビデオは見ていたけど、(もえ)はすぐに目をそらした。こういうこと苦手なのだろう。僕もこういうことは苦手だけど、見る分にはまだいい。体験するのが嫌なだけだ。

「・・・。」

「ピィィィィィィィィ。」

テレビから「きたぐに」の発車を告げる汽笛が流れてくる。その音を聞いた瞬間僕は一気に怖くなった。(じゅん)兄ちゃんの右手をつかんで、テレビ画面が見えないようにしがみついた。

(怖いんだな・・・。)

テレビ画面はどんどん切り替わって行くだろう。そして、数分経たない内に激しく燃え上がる火事の描写になった。僕はこの時画面に目をやっていたけど、さっきの汽笛が頭から離れなかった。僕は火事の怖さではなく、汽笛に怖さを植え付けられたのだ。この時(じゅん)兄ちゃんは一瞬テレビ画面から目をそらして、(もえ)のいる方向を見た。多分、(もえ)(じゅん)兄ちゃんにしがみついているのだろう・・・。

 テレビはそれから35分ぐらいたって終わった。

「はぁ。おい。二人とも。もう終わったんだからいい加減離してくれないか。」

「あっ。うん。」

(もえ)(じゅん)兄ちゃんから離れる。だけど、僕は(じゅん)兄ちゃんから離れることができない。あの汽笛は今でも僕の頭の中に響いていた。

(とも)(とも)。」

「えっ。何。」

「そろそろ離してくれないかなぁ。」

「あっ。ごめんなさい。」

「よっぽど怖かったんだな。あの汽笛。」

「えっ。うん・・・。」

「ナガシィ。そっちが怖かったの。」

「えっ。だって結果がわかると何かと怖いじゃん。あれ冷たすぎたもん。」

「ごめん、ごめん。見るなんて誘うんじゃなかったな。」

「別に(じゅん)兄ちゃんが悪いんじゃないし。」

「・・・今日寝れるか。怖いもの見ちゃったから。」

「寝れるよ・・・。」

とは言ったものの。その夜。

(クッ。なんで・・・。眠れない・・・。)

頭の中はずっとあの汽笛が響いている。それを思い出すたびに鳥肌になって、寝付くことができない。何度も何度も寝よう寝ようとしているのに汽笛がそれを邪魔した。

(あー。どうすればいいわけ。ちっとも眠れないよ・・・。)

するとドアが開いた。

(とも)。寝れるか。」

その声は(じゅん)兄ちゃん。あれ。家に帰ったんじゃなかったっけ。

(じゅん)兄ちゃん。」

「やっぱり心配でな。」

「別にいいのに。来てくれなくても。」

「そうか。もう真夜中だっていうのに・・・。(とも)。お前もうすぐで次の日になっちゃうぞ。明日学校内からよかったな。」

「もうすぐって・・・。今何時。」

「今11時53分。」

(ウソ・・・。)

布団に入ったのは9時だった。もうすぐで3時間もの間寝付くことができなかったことになる。

「どうする。」

「・・・。」

何も言わなかったけど、(じゅん)兄ちゃんは近くに来て、そのまま僕が寝るまでついていてくれたのだろう。

 次の日。また寝ることができなかった。僕の死闘はこのあと数日続くことになって完全な寝不足となった。


ああ。怖かった・・・。実は私も同じ経験があります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ