8005E列車 いじられた日
初めての春休みに入った。今日は坂口ちゃんが単独で家に遊びに来ている。今日は駿兄ちゃんも家に来ているし、みんなで離れにいる。
「まぁ、智もこうして女の子と遊ぶようになったんだし、一安心だけどなぁ。」
「どういうこと。駿兄ちゃん。」
「んっ。なんでもないよ。」
(うらやましいなぁ。この野郎・・・。)
「駿お兄ちゃん。今日はどんな電車走らせてくれるの。」
「えっ。そうだな・・・。じゃあ、きょうはまたここら辺を走ってる電車でも走らせようかなぁ・・・。」
「えー。「ネックス」走らせてよ。」
「「ネックス」・・・。「ネックス」なんて電車あったっけ。」
萌がそうつぶやいた。萌はこの時電車のことはよく知らない。「ネックス」と聞いても何がなんなのかわからないのは当然だった。僕もこの時は「ネックス」イコール253系とはなっていなかった。僕は愛称で「成田エクスプレスを知っていただけである。
「はいはい。じゃあ、「ネックス」でも走らせるかぁ・・・。ほかに希望は。」
「えっ。100系と0系と300系と500系走らせて。」
(あからさまに700系は除外するんだ・・・。)
「わかったわかった。200系のHはいいのか。」
「うん。」
僕がそう答えると駿兄ちゃんは車両庫に消えていった。
「永島君よく100系新幹線って好きだよっていうけど、100系新幹線ってどんなの。ほかの新幹線みたいに丸い顔してるの。」
「・・・100系新幹線は0系新幹線みたいに丸い顔なんてしてないよ。それに今の新幹線は0系と200系以外全部丸い顔なんてしてないからね。500系新幹線みたいにくちばしみたいなのもあるし、700系新幹線みたいに「カモノハシ」なのもあるし。」
そこまで言ったころだろう。駿兄ちゃんが車両庫から戻ってきた。
「あっ。駿兄ちゃん。模型見せて。」
「ああ。」
駿兄ちゃんから模型のケースを受け取るとケースを開いた。そして、中にある先頭車を取り出す。駿兄ちゃんはほかにも200系新幹線と400系新幹線の模型も持ってきていた。それぞれの先頭車を出して、線路の上に並べた。
「ねっ。違うでしょ。」
「・・・。」
たぶん同じだろというのは0系と200系以外ないと思う。でも0系も200系も当然違う。0系新幹線は雪には対応していないけど、200系新幹線は雪に対応している。それに0系よりも200系の鼻は少し長い。素人目では見過ごしてしまうような違いだが、電車というのはそういう細かいところの表情も違うから、見分けるポイントとして大切だ。
「へぇ・・・。でもこれとこれは同じだよねぇ。」
指差したのは案の定0系と200系。まぁ、これは素人目だから。坂口ちゃんにもまだ知識がないし・・・。これからだんだん覚えていくのかなぁ・・・。そうなってくれると僕としてもありがたい。
「まぁ、同じに見えるよなぁ。でも色は違うだろ。」
まぁ、見てわかる違いを駿兄ちゃんは言った。
「なんで。同じ顔なのに色が違うの。」
「その新幹線は浜松のほうには来ないんだよ。ここよりもずっと寒い所に行くから。そっちには緑が多いから、そっちに合った色にしたんだよ。」
駿兄ちゃんは坂口ちゃんにもわかりやすいように説明した。
「・・・。じゃあ、100系新幹線にもそういうところでも違うところってあるわけ。」
「えっ。あるよ。」
僕は自分の好きな新幹線の説明を坂口ちゃんにした。もちろん坂口ちゃんがわかるようには説明するつもりである。
「えっと。100系新幹線には中がレストランみたいになってるのと、中がスーパーみたいになっているのと、2階建てが4両くっついてるのがあるんだよ。それぞれ違うからアルファベットも違ってて・・・。」
といったところで駿兄ちゃんが一度止めた。
「新幹線ってこういうもの使って種類分けしてるんだよ。」
と言って紙の上にアルファベットを描いた。書いたアルファベットはH(0系新幹線)、G(100系新幹線)、X(100系新幹線)、V(100系新幹線)、J(300系新幹線)、F(300系新幹線)、Sk(0系新幹線)、N(0系新幹線)、W、C(700系新幹線)、B(700系新幹線)。それぞれの編成記号は確か・・・。あれ、何がなんだったっけ。判別ができるのはX、G、V、W。それ以外は何が何だかわからない。まだ作中で言っていなかったが、Wの編成記号を使っているのは500系新幹線である。
「こういうの使ってるんだ。それで100系新幹線にはX編成とG編成と「グランドひかり」っていうのとV編成っていうのがあるんだ。」
「へぇ・・・。」
「智・・・。」
「何。駿兄ちゃん。」
「お前ずっとそう思ってたのか。」
「えっ。何を。」
「V編成と「グランドひかり」っていうのは同じやつのことを言ってるんだぞ。」
「えっ。そうなの。」
「あっ。ってことは今永島君ウソ言ったんだ。」
「えっ。だって知らなかったんだもん。」
「知らなかったんだもんって。お母さん言ってたよ。ウソつくのはいけないんだって。」
「アハハ・・・。」
「別にウソついたわけじゃ・・・。」
「あっ。反省しないのもいけないんだ。ちょっと待って。ナガシィ。ウソつく人には何かしてあげないと、ねぇ、駿兄ちゃん。」
「えっ・・・。」
「ちょっと待ってよ。」
「待たない。」
まさか。こんなことになるなんて。これが引き金となって、僕はいじられキャラに転じることになる。そして、坂口ちゃんはこれ以来僕のことをナガシィと呼ぶようになったのだ。
引き金はこれです。ここから永島は萌のおもちゃに転じることになります。