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8011E列車 ケンカ

 小学校4年生の夏。発端はこれだった。

和田山(わだやま)さん。水やり僕がやりたい。」

「分かりました。」

和田山(わだやま)さんから水の出ているホース受け取って、今まで和田山(わだやま)さんがしていたことを僕がやり始める。

「私。あっちにいるからね。」

(もえ)がそう言って僕が水をかけている方向とは逆に行く。僕はそれに返事をした。

 しかし、乗って水やりをしているとつい(もえ)がどこにいるかなんて忘れてしまった。そして、問題が起こった。僕がくるっと今まで向いていた方向とは逆を向いて水やりを始めたのだ。

「キャッ。」

そういう声がしたので、すぐにホームを別の場所に向けた。すると、不機嫌な顔をして(もえ)がこちらを見ている。

「もう。ナガシィ。あっちにいるって言ったじゃん。」

「・・・ごめん。つい・・・。」

「ついじゃないよ。もう。ナガシィって本当にバカなんだから。」

「・・・。」

「ちょっと貸して。」

(もえ)が手を差し出し、僕がホースを(もえ)に渡した。すると(もえ)は僕に向かって水をかけた。

「うわっ。・・・何するんだよ。」

今度は(もえ)からホースを奪い返して、(もえ)に向かって水をかけようとする。それを阻止しようとして、(もえ)がまたホースを握る。上に向いたホースの口をどちらが早く抑えれるかの競争になる。ほぼ同時にホースの口をふさいだため、行き場を失った水は勢いよく僕たちに降りかかった。

「うわ・・・。」

ふりともびしょ濡れだった。プールにでも使ったみたいだ。福は自分の体に密着し、自分の体温で段々と熱を持ってくるので気持ち悪い。

「・・・もう。ナガシィのバカ。マヌケ。アホ。」

「・・・なんだよ。」

「だってそうじゃん。ナガシィあっちに私がいるってこと忘れたんだし。バカとしか言いようがないじゃん。バカ、バカ、バカ、バカ・・・。」

「・・・水がかかるのが嫌だったら、近くにいなければよかったのに。」

「ちゃんと遠くにいたよ。それでもかけてきたのはナガシィじゃん。」

「・・・。」

「バーカ。バーカ。バーカ。」

「・・・。」

もう我慢の限界だった。

「なんだよ。そんなに人をバカ呼ばわりして。バカっていうほうがバカなんだぞ。」

「私は関係ないの。ナガシィのバカ。」

「・・・。」

「もうナガシィなんか大っ嫌いだ。」

「ふん。勝手にしろよ。(もえ)なんか大っ嫌いだ。」

「フン。」

そっぽを向いて、その日から顔を合わせないようにしていた。けど、僕にはそうなってしまったことが嫌だった。

(もえ)ちゃんに謝ればいいじゃないか。」

「そんな単純じゃないんだって。(もえ)に大っ嫌いだって言われたし、僕だって大っ嫌いだって言っちゃったし・・・。」

「・・・。」

「ねぇ、どうすればいい。駿(しゅん)兄ちゃん。」

「どうすればいいってなぁ・・・。もう言っちゃったことはしょうがないとしか言いようがないからなぁ・・・。」

「・・・。」

そう聞いて、(もえ)と距離が開いてしまったような気がした。これでは2年生の時と同じではないのか・・・。原因はまた僕が作ってしまったのだし・・・。

「自分から謝るしかないな。」

「謝れない・・・。なんか謝りたくない・・・。」

「謝らなかったら、これからずっと(もえ)ちゃんとは話せないかもな。」

「えっ。それはヤダ。」

「いやなら謝れ。(もえ)ちゃんと話だけでもしたいんだろ。」

「・・・。」

駿(しゅん)兄ちゃんの言う通りなのは自分でもわかっていた。しかし、どうやって切り出せばいいのだろう。それがいまいちよくわかんない。

 この時。僕は初めて(もえ)と話せない寂しさを感じた。


まだまだ続くよ。

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