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8010E列車 記憶

前の部と合わせてEがなかったら「カシオペア」。


 これは僕の嫌な記憶・・・。

「100系とか200系ぐらい区別がつくんだけどねぇ。」

「100系が青で200系が緑だったっけ。」

「そうだよ。駿(しゅん)兄ちゃん僕に100系見せたくないのか知らないけど、毎回200系走らせるんだよねぇ・・・。なんでだろう。」

「アハハ。」

「でも、ダダこねたりすると駿(しゅん)兄ちゃんも100系走らせてくれるんだけどねぇ。」

僕はいつもの調子で(もえ)と話していた。

「ちょっとうるさいよ。」

「えっ。」

誰だっけ。クラスの人全員まだ覚えきれていない。多分クラスの人だと思う。

「そのくらい大きな声で話せるんだったら外で遊んできたらどうなんだよ。迷惑だよ。」

「分かったよ・・・。ねぇ、ナガシィ。行こう。」

「なんでだよ・・・。」

小さい声でそう言った。迷惑かぁ・・・。僕の声ってそんなに見境なく大きい声か・・・。こっちはいつもの声で話しているだけなのに・・・。

「なんでって。そのぐらいの声で話せるなら・・・。」

「どこで話そうがこっちの勝手じゃないか。大きな声で話せるなら外でしろみたいなことでも決まってるのかよ。」

「ナガシィ・・・。」

「そういう声が迷惑なんだって。お前この頃授業中もうるさいだろ。」

我慢の限界だった。

「・・・。」

もう人の言うことなんて聞く気にもなれなかった。そのままその場を去った。

 その帰り。

「ナガシィもあんなこと気にしなきゃいいのに。」

(もえ)のそういう声が聞こえていた。でも、今は(もえ)とも話す気にはなれなかった。(もえ)は僕の前に回り込んで、

「ねぇ、ナガシィ。また電車の話でもしてよ。」

「ヤダ。」

僕は目をそらした。僕にとってはそれが凶器になっている気がしたからだ。あの原因はすべてここにあるのではないか。やっぱり僕は人と会うことはないんだ。(もえ)と気があったのは単なる偶然だったのだろう。

「なんで・・・。」

(もえ)の普段聞いたことない声が耳に入ってきた。

「なんでそんなに気にするの・・・。そんなこと気にしなきゃいいのに。ナガシィのバカ・・・。」

後ろに押されて、(もえ)のいた方向を見た。すると(もえ)の赤いランドセルはどんどん小さくなっていっていた。

(もえ)。ちょっと・・・ま・・・。」

傘が地面に落ちていることに気が付いた。僕の傘は自分で持っているから、これは(もえ)の傘だ。

(・・・。悪いことしちゃったかなぁ・・・。)

 僕は(もえ)の傘を持って、普段歩きなれた道を歩いた。普段(もえ)と一緒に話をしながら歩いているから、帰り道はそんなに長く感じていなかったのだけど、こんなにも長いものだったっけ・・・。えーと・・・。確か(もえ)の家は僕の家からちょっと反対に歩いて行ったところにあった。家に行く道を普段は左に曲がるが、きょうは右に曲がった。

「えーと。(もえ)のうちどこ・・・。」

(もえ)の家は確か・・・。あれ・・・。どこだったっけ。(もえ)が僕のうちに来たことはあるのだけど、僕が(もえ)のうちに行ったことがない。しかし、どこに家があるのかぐらいは(もえ)から聞いていた。記憶だけを頼りに、道を歩いて行く。

「あっ。あった。」

ようやく家を見つけたので、インターホンを鳴らした。すると(もえ)のお母さんが出てきた。

「あら。(とも)君。どうしたの。」

「これ。(もえ)が忘れてったから届けに来ました。」

「あっ。ありがとう。(もえ)ったら帰ってきてすぐ自分の部屋に入っちゃったから。」

「・・・あの・・・(もえ)に伝えてくれないかなぁ。悪いことしちゃってごめんなさいって。」

「ケンカでもしたの。」

「・・・。」

喧嘩じゃないんだけど、どういっていいのかわからないから小さくうなずいた。

(もえ)呼ぶ。」

それには首を振った。家に上がってもいいといわれたけど、それも・・・。すぐに家に帰ることにして、(もえ)の家を後にした。


永島は子供ですから。今も変わらない・・・。

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