動き始めた獅子 3&My Fair Lady 1
得体の知れないものが蠢く。それが夜。
宵の口というには、少々早すぎる時間だったが、この天枢町にしては、人の姿はほとんど見受けられなかった。
北斗通りの脇道を入り、小さな小道を数度曲って、そろそろ住宅街に入ろうかという所に、その店はあった。
店の外観は、この町の景観には恐ろしいほどマッチしていない古びたレンガ造りのもので、また外の看板には、バーとしてはいささか消極的過ぎるような粗末な木の板が、風に揺られてフラフラと垂れ下がっていた。
この、いかにも客が寄って来なさそうな店内の中に、普段は表に出ない、二人の吸血鬼の姿があった。
一人は、何時もと違う事のない漆黒の上下の服に、外観同様草臥れた店内でも栄える銀色の髪の乙女、セシル・フレイスター。カウンターに座る彼女は大きな溜め息を吐くと、隣に座っているもう一人の吸血鬼の方を向いた。
「本当に来るのか? そもそも、日本の支部に、高名なハンターがいるとは聞いていないが」
「……まぁ、セシルの考えているぐらいのレベルのハンターは居ないだろうな」
着崩したブラックスーツに、どこまでも深く、艶やかな光沢を放つ黒い髪。そして低い声に似合わず、まだまだ若い顔つきのその男は、軽い笑みを浮かべ、軽くグラスを揺らした。
「しかし、あれもあれで一応は日本の支部長だからな。実力としてはお前と同等くらいのもんは持っているはずだ」
「? 父上の知り合いなのか?」
「知り合いと呼ぶには、少し付き合いが長すぎるかもな。まぁ、戦友みたいなものだ」
普段は猫の姿をしているその男、アルフレッドは、腕時計を見るとカウンターの先の店主に視線を送る。それに気付いた店主は、コクリと一度だけ頷き、いそいそと店の外へと歩いていった。
「さてと、もうすぐ時間だな。念のため言っとくが、期待はするなよ?」
「……ここに来る以前から期待などはしていない。孤立無援だというのは重々承知の上だ」
「孤立無援か……。ま、これ以上悪くなる事はあるまい。それに、交渉次第で状況は改善されるかもしれんしな」
アルフレッドの言葉に、セシルは鼻を鳴らす。上の連中が、そんな協力などしてくれるはずがない。父上もそれは分かっているだろうが、それでも彼女にはこの皮肉は如何ともしがたいものだった。
「……たまらないものだな。規則や義務というものは」
「縦社会なんてそんなもんだ。何時の時代も上の者は規定や事例に縛られている。……そろそろだな」
アルフレッドが言い終わるが先か否か、そのタイミングでドアからチリンと鈴の音が鳴る。先程の店主とは違う、そして人間のものではない、粘り付くような存在感を纏った存在の感覚。アルフレッドは空いたコップに酒を注ぐと、振り返らずに口を開いた。
「アルフレッド・フレイスター、並びに一名、指定の定期報告をしに訪れた」
誰も居ない筈の空間に、アルフレッドは躊躇う事無く言葉を走らせる。だが、その言葉は確かにセシルではない誰かに届き、そしてその言葉は確かな返答を生んだ。
「……了解した。私、望月猛、吸血鬼協会日本支部長がそれを確認した」
不意に店内の空気が淀む。そこに足音はない。だが次の瞬間だった。誰も居なかったはずのアルフレッドの隣の席に、何時の間にか一人の男がさも最初から居たかの座っていた。
白髪の混じった長髪を後ろで束ね、逞しい顎鬚を生やした大男。望月猛と名乗ったその男もまたセシル達と同じ、闇の眷属たる存在だ。彼はカウンターに肘を突くと、酒の注がれたコップに口を付けた。
「それにしても懐かしい名前だ。こうして会うのも二十年ぶりか」
「昔の事は忘れたよ、タケル。それに、俺もお前も大分変わった。お前の姓が出雲だった頃から考えれば、お前は十分過ぎる程に逞しくなった」
「二十年もあったらそりゃ変わるさ。姿も、立場も、それに考え方も。見た目が変わらないのはお前ださ、アルフレッド。まぁもっとも、俺の知るアルフレッドの多くは黒猫の姿だがな」
「人の姿よりは随分楽でいい。それに、見た目が変化がないのはそれはそれで辛い事だ」
アルフレッドが視線を下に落とす。口には軽い笑みを浮かべ、何も言わずに酒を飲んだ。
「変わらないこそ、こんな所に来たのか。まぁ、良い。お前のしようとしている事に、俺は口を挿む権利はない。だが、アルフレッド。これだけは言っておく。……深追いだけは絶対にするな。世の中には、お前や上の連中よりもずっとずっと深い所に根を張って生きる、そんな化け物みたいな奴が居るんだ」
望月の声色が変わる。同時に、店の空気も深く、黒々とした雰囲気に呑まれていく。アルフレッドは一度望月の方を見ると、コップに残った酒を飲み干した。
「大人になったな、猛」
それはアルフレッドの正直な感想だった。やはり日本支部の支部長だけの事はある。自分の力を正確に理解出来ているようだ。
「大いに変わったさ。今は息子と娘が四人いる。それだけで変わる理由は十分にある。まぁ、ただの親馬鹿だな。だからお前には、あまりここで面倒を起こして欲しくない訳だ」
「安心してくれ。日本支部に迷惑をかけるつもりはない。これは全て俺の独断でやってる事だ。責任を全部背負う覚悟は出来ている。それに、これでも俺と娘はAランク以上のハンターだ。決して遅れを取る事はない」
「……“銀狼”か。ずっとお前とパートナーを組んでいる奴がいると聞いていたが、やっぱりお前の娘だったのか」
そういうと望月はアルフレッドの奥に座るセシルの方に顔を向ける。しかし、彼女はまるで興味がないようにソッポを向き、今も煌々と輝く電灯を見つめていた。
そのセシルの姿を見ながら、望月はとっさに軽く目を見開くと、しばしの間言葉を忘れる。そして突然我に返ると、アルフレッドの方を向いた。
「……驚いたな。まるで生き写し……いや、アルフレッド、お前は」
「まぁ、変わらないのは見た目だけではないって事さ。方法が変わっただけで、俺は昔と同じ夢を見続けている。……さぁ、そろそろ本題に戻ろう。お前もここに、世間話をしに来た訳じゃないだろ」
望月は一瞬、何か言いたげな顔をしたが、アルフレッドの言葉を聞くと、直ぐに顔を引き締めた。この男にはもう、自分の声は届かない。そう感じたのかは定かではないが、それでも彼の瞳は軽蔑と侮蔑と、そして憐みの色が混じっていた。
「……それもそうだな、アルフレッド・フレイスター。俺にも、此処の管轄者として聞かなきゃいけない事がある」
「魁皇学園文化祭の事か?」
今まで何も言わずにそっぽを向いていたセシルが、本題に入るや否や、望月に視線を向けた。
「それもあるな、嬢ちゃん。だが、それはさして重要じゃない。吸血鬼が人前で姿を出してしまう事は良くある事だし、その対策は十分にしてある。重要なのはだ、多数の人間に被害が及ぶ場合だ」
「要するに、今回の神居北斗市内の大量失踪事件とか、それに関する他の事件の事か。しかし、やはり今回の失踪事件も文化祭の時のような吸血鬼が絡んでいるのか」
「まだ十分な証拠は揃っていないがな。しかし、吸血鬼の関連性は確かに見られる。詳しく話すと先日の事だ、神居北斗市内で失踪した一人が発見された。失踪者は神居北斗市内に住む女子高生なんだが、色々と見過ごせない部分が見つかった訳だ」
「見過ごせない部分?」
腑に落ちない事など、吸血鬼が絡んだ事件では日常茶飯事ではないかと、セシルは言葉を続けようとしたが、望月の顔を見るとそれを思い留める。そうだ。死傷者くらいなら、彼等の言う対策の中にも十分組み込まれているはずだ。
「そうだ。見つかった少女は、どうやら何らかの方法で精神を操作されていたようだ。見つかった時はここ二週間の記憶が曖昧なだけで、全く普通見えたんだがな。俺の部下の吸血鬼が吸血鬼との関連性を調べるために身体に触れた瞬間、急に正気を失って暴れ出した。力は人間のものだったから良かったものの、危うく俺の部下は右目を失う所だった」
「つまり、俺達のような吸血鬼に反応して、その少女は暴れ出したと。お前はそう言いたいのか?」
「実際に、他の吸血鬼ではない人間が触れても何も起こらなかったからな。今は我々の方で保護しているが、その少女が吸血鬼に操作されていた以上、そう何度も調べる事は出来ない。もし操作する吸血鬼がそれに気付けば、情報を隠すためにその少女を自殺するように仕向けるかも知れん」
「確かに……厄介な能力だな」
操作をする能力ならこの前の文化祭の吸血鬼と一緒だが、この吸血鬼は無関係な人間を操作する分、性質が悪い。しかも無自覚に吸血鬼を襲わせるオマケ付きだ。セシルは大きく溜め息を吐き、さらに言葉を続けた。
「だが、そこまで分かっていて、どうして私達に聞きたい事があるんだ。悪いが今回の一連の事件に関して、私達には支部が知っている事以上の情報は何もないぞ?」
「……そうだな、正直な所、別に嬢ちゃんから事件の首謀者やその目的なんて、そんなどうでもいい事を聞こうとは思っていない。それに、日本支部は対応こそするものの、この事件を本気で調査しようなんて考えてすらいない。だから、俺が聞きたいのはだ、恐らくこの首謀者も関係しているであろう、お前達のターゲットである組織、“ノーブルブラッド”の事だ」
そういうと望月はポケットから一枚の紙を取り出し、それをアルフレッドに渡す。アルフレッドはそれを受け取ると、セシルの目にも届くようにカウンターの上に置いた。
「それは一週間前、神居北斗市内の我々の管轄の建物で偶然ビデオに映った一人の男のものだ。名前はハキム・オードリック。まぁ、協会の第一級討伐指定を受けている男だから、お前らなら名前くらいは知ってるだろ?」
「ハキム……“鋼鉄”か。私は闘り合った事はないが、確かに知ってはいるな」
「俺もだ。だが猛、この男は群れるような性分ではないし、かと言って自分から身を隠すような事もしない。どうしてそんな奴が、このニホンにいるんだ?」
アルフレッドの質問に、望月は首を傾げた。
「それが分かれば俺も苦労しない。だが、一つだけ言える事は、今回の“ノーブルブラッド”が起こしている一連の事件と、この第一級討伐指定の男には何らかの関係があるという事だ」
「……そう思うのは、確かに当然だな」
「それでだ、アルフレッド。お前達が知っている奴らの情報を出来る限り提供して欲しい。無論、これから手に入るであろう情報もだ。第一級討伐指定者がこのニホンにいる以上、我々はそいつを追わなければいけないからな」
望月の話を聞き、アルフレッドから小さな溜め息が漏れる。また面倒な事が一つ増えてしまったと、口をへの字に曲げて頭を掻く。話がややこしくなったが、日本支部の狙いは最初からこれだったのかと。
「……なるほど。協会が今更俺に定期報告をしろだなんて、どういう風の吹きまわしかと思ってはいたが、やはりそういう事か、猛」
つまり、自分達を体良く利用しようとしているんだろうと、アルフレッドはまるで望月に問いかけるように、微かに笑みを浮かべて言う。望月は視線を外すと、悪びれるように口を開いた。
「謀った事は謝るよ、アルフレッド。だが、悪い話ではないだろ? 俺はお前達の身勝手とも言える行為を黙認する訳だし、お前等はそこで手に入った情報を俺に回してくれれば良い。勿論こちらからもある程度の情報は提供しよう。この話に乗るなら、決してお前達を悪いようにはしない。どうだ、アルフレッド。ここは公平にギブアンドテイクといかないか?」
望月の話を聞き、アルフレッドは閉口する。セシルに至っては、呆れて再びそっぽを向いてしまった。
「……話も何も、もうお前はそのつもりなんだろう?」
元より、自分達にはその決定権すらない事をアルフレッドは知っている。それに、自分達がこのニホンで戦う以上、“ノーブルブラッド”以外の敵を作るのは、決して得策ではない。アルフレッドはセシルに合図をすると、すくっと席から立ち上がった。
「だが、生憎俺達も今は大した情報はない。何かしらの情報が入り次第追って連絡する。……今夜は、そういう事で良かろう?」
「そうだな、そういう事ならそれで良い。良い報告を期待している。……まぁ、今夜はここいらで終いにしよう。俺もお前等も、明日からやるべき事がたくさんあるだろうから」
「期待はしてくれるなよ。こちらも、何時死ぬか分からない状況だから」
「信じているよ、アルフレッド。君は、誓いを果たすまで死ねない男だ」
望月が言い終わらないうちに、セシルが店のドアを開ける。チロンと鈴の音が鳴り、まるでそれが合図のように望月の気配がすっと消える。ドアの前に立ち尽くしたアルフレッドは視線を落とし、振り返りもせずに口を開いた。
「……そんな事、誰にも分かるものか」
セシルさんとアルフレッドさんが家に帰って来たのは、もう日付が変わり、そろそろ寝ようかと思っていたくらいの時間だった。二人とも何だか疲れた様子で、一瞬明日からの行方不明者の探索の話を話そうか躊躇ったが、話してみたら案外あっけなく承諾を得てしまった。勿論、それなりの反対があると予想してた訳で、俺は二つ返事で快諾されてしまった事に少々肩すかしを食らった気分だった。
「それじゃ、夕飯前には戻るよ」
最低限の荷物をバッグに詰め込み、俺は見送りに来た叔父さんに向かって言った。どうやら、セシルさんはもう準備を済ませ、先に外で待っているみたいだ。アルフレッドさんの姿は見えないけど、彼には彼でやる事があるのだろう。気にせずに行く事にした。
「あんまり無茶するんじゃないぞ。それじゃ、セシルちゃんに宜しくな」
ドアの所で俺は叔父さんに手を振り、背負ったリュックを背負い直す。準備は万端だ。気合いを入れ、後は、何としても四季の知り合い、古川小夏さんを探すだけだ。
「遅いぞ、信介君」
「悪い悪い……って! またそんな格好で……」
意気揚々とドアを開け、目に飛び込んで来たのは学園祭以来あまりお目にかからなかった例の全身真っ黒の服装。まぁ、真っ黒な半袖のワイシャツは百歩譲って分からなくはないが、その同じく真っ黒なロングスカートとミリタリーブーツは果たして如何なものだろうか。
「ん。そんな格好とは言うが、街中で吸血鬼に攻撃を受けた場合、この格好の方が随分動きやすいんだ。長いスカートは確かに動きにくいが相手に足の動きを読まれにくいし、このブーツなら踏ん張る時に力が逃げにくい」
「そんなに力説されても困るんだけどさ。ていうか、その格好だと逆に目立って色んな意味で危ない気がするだけども……」
「心配ない。それに、目立たない服装で行っても、どうせこの髪色で嫌でも注目を引いてしまうからあまり変わらない」
――やっぱり、注目されてる自覚はあるんだね。
腕時計で時間を確認するふりをしながら、俺は隣を歩くセシルさんの方を横目でチラッと覗く。顔には全く出さないけど、やっぱりセシルさんにもこうして気にする事があるみたいだ。
「今は結構染めてる人が多いから、そこまで目立ってないと思うよ。ていうか、気になるなら帽子とか被ってみたら? 底がある帽子なら長い髪でも納まると思うし」
「ん。私も新米の頃は、人前ではなるべく目立たないように帽子を被っていたが、しかしどうもあれは、視界が狭まって好きにはなれなかった。……だが、まぁ確かに、今後君とこうやって行方不明者の探索に街へ行く以上、目立たない服装というのも考えねばならないな」
顎に手を置き、考える仕草をするセシルさん。それだったら、せっかく街に行くんだから、探索ついでにセシルさんの服を見繕うのも悪くないかも知れないな。四季がずっと前に、女の子は誰だってお洒落したいもんだって言ってたし、普段世話になっているから、その恩返しにもなるだろう。
「そうだね。とりあえず、今日は時間があったら服でも買いに行こうよ。今日は初日で分からない事だらけだし、セシルさんに天枢町も案内した方が良いと思うしさ」
「ん。……ん? それは私のために服を買うという事か?」
一瞬のうちに眉を顰め、セシルさんは俺に抗議とも思えるような視線を向ける。俺はそんなセシルさんの視線を流し、さらに言葉を続けた。
「他に誰の服があるの? それに、服とかはあっても困らないでしょ。外に着ていかないなら部屋着になるし」
「別に、そこまでする必要はないんだが。君が服を貸してくれるなら、私はそれで良いぞ。だから、態々私のために時間を割いてくれなくても……」
「それは別に良いんだ。セシルさんだって、何時も俺のために時間を割いてくれるじゃないか。まぁだったら、服はセシルさんの気が向いたなら、買いに行けばいい。どっちにしろ街の大まかな案内はしないといけないしね」
家から程近いバス停に着くと、俺はバスの来る方向に目をやる。隣のセシルさんは、未だに戸惑っているみたいだったが、強引にでも買ってしまえば本人も着てくれるだろう。セシルさんは結構強情だけど、人の厚意は素直に受ける人だし。
そんな事を考えていると、遠くの方から一台のバスがやって来る。天枢町駅へ直通のバスだ。俺は隣にいるセシルさんに声をかけた。
「とりあえずバスに乗ろう。あっちに着くまで時間はあるから、バスの中で街の立地の事も話しときたいし」
「それは構わんが、その前に君に渡しておきたいものがある」
「うん?」
セシルさんは持っていたバッグから、何かを包んだような新聞紙の塊を取り出し、そしてそれを俺に差し出す。なんだろうと俺は多少の疑問を含み、それを受け取った。
受け取った途端、手にずっしりと重い感触が伝わってくる。俺は思わず声を上げ、セシルさんの方を向いた。
「せ、セシルさん……?」
「中身は……そうだな。もし君一人の時に敵の吸血鬼に襲われたら、その紙を開けてくれ。それまではなるべく仕舞っていて欲しい」
やけに重たいこの荷物を見つめ、セシルさんは俺に念を押すように言う。俺は、唐突な事に訳も分からずに、とりあえず頷いた。
「それは……これからずっと?」
「ずっとだ。少なくても、こうやって天枢町へ外出する時はずっと」
なんだろうという疑問が頭の中を反復し、そして俺はセシルさんに聞こうとする。だがセシルさんは既に視線をバスの方に向け、それ以上は他に何かを言ってくれそうになかった。
バスがバス停に止まり、運転手がこちらを見る。セシルさんは呆然としている俺を尻目に、早々とバスのステップに足をかける。何だかよく分からないが……これはつまり、セシルさんなりの保険なんだろうか? だとしたら、そんなに今から行く天枢町は危ないんだろうか。そう考えると、何だか額から嫌な汗が噴き出して来るようだった。
「ん? どうした? 乗らないのか?」
「あ、うん」
気を取り直し、俺はバスへと飛び乗った。
強烈なほど私生活が忙しく、あまり寝ていません。楽しみにしてもらっている方、本当にすいません。