動き始めた獅子 1
「……恐らく、遠野君も失敗作だったわ。安全な時だけ慎重になって、それでいて肝心な所で利益に目が眩む。本当にこれじゃ、古賀君と大差ない」
天枢町のオフィス街を抜け、少し歩いた場所にあるファミリーレストランの片隅。先日の魁皇学園文化祭での葛城信介捕獲作戦の失敗を受け、遠野と古賀の直接の上司である二条薫は、何度も大きな溜め息を吐いては、向かいに座る趙雲海に愚痴を溢していた。
時間は、魁皇学園文化祭に彼女達の部下が強襲をかけてから二週間後まで進む。当初、葛城信介の隙を突き、人混みに紛れて協会の吸血鬼に牽制する事が目的だった今回の作戦だったが、計画の要だった遠野幸太郎が逃走寸前に倒され、有ろう事かサポートに回した古賀茂もまったく見当違いな場所で失神していたという失態を犯し、彼らの上司である二条は、その事で上層部に厳しい御咎めを食らったのだった。
趙は二条に向かって軽く笑みを浮かべ、持っていたコーヒーカップをテーブルに置く。そして彼女の方にある灰皿を引き寄せると、煙草に火を付けて大きく息を吸いこんだ。
「そういう君も、今回は戦果は期待していないと言っていたじゃないか」
「それはそうだけど、今回のは訳が違うわ。今回の作戦は確かに捕獲は優先事項だけど必須事項じゃない。向こうにこちらの動きを強く意識させるのが目的だったのに。なのに結果がこれじゃ、返って向こうに自信を持たせるようなものだわ」
協会の吸血鬼がこちらの動きを執拗に警戒するようになれば、彼女達としては非常にやりやすくなるはずだった。現に彼女は来るべきのためにその準備はしていたし、計画もそれに合わせて進めて来たのだ。
加え、貴重な戦力になるはずだった遠野を失ったのは、実は彼女にとって、結構な痛手であったりする。確かに遠野の能力は戦闘向きではないが、彼女やその部下にはない偵察や牽制に特化した能力であり、また彼自身もその能力をフルに行使できる性格をしていた。だが彼が粛清されたとなれば、これから変更せざるを得ない作戦の幅は大きく狭まり、それがまた彼女の頭痛の種に成りつつあるのだ。
「確かにそれは言えるかも知れないな。君の話を聞いている限りでは臆病で慎重な性格だったみたいだし、彼の“血の力”もそういった性格に合っていたかも知れない」
「だからこそ、変な所で欲を出さないで欲しかったのよ。彼単体だったらそれほど戦闘力があるとは言えないし。必死になって作戦考えてる私の身にもなって欲しいわ」
「ははは……。ハキムさんも見誤ったな。ま、いいじゃないか。まだ俺を入れて部下は三人も残っているんだし」
「その三人だって、貴方を除いた二人はハーフでしょ? しかも一人は問題児。確かに好戦的な性格は申し分ないけど、それ以上に実力がないわ」
況してや、彼は葛城信介との初遭遇では、ただの人間であったはずの目標をいとも簡単に取り逃がしてしまったという経歴だって持っているのだ。だから彼女の計算では、はっきり言ってその問題児はサポートすら任せられない、ただのお荷物に他ならなかった。
「古賀君の事かい? 俺は好きだけどなぁ、ああいう怖いもの知らずな奴。そういうタイプって、何時かどっかでコツを掴んで化けるんだよ。彼は明らかに大器晩成型だし」
「何時かって……。そんな悠長に待ってる暇なんてないわよ?」
「いやいや分からないさ。もしかしたらそれが今日か明日かも知れないし。それに、この前だってあの“銀狼”相手に生き残ったそうじゃないか」
「あれはきっとただのお情けよ。彼女にしてみれば、粛清する価値すらない相手だったって事でしょ?」
“銀狼”は相手にするなと何度も言って置いたのに……。あの男は、自分の実力さえ分からないほど鈍間なのだろうか。彼女は憤慨して眉を顰めた。
「それこそ、彼が大物な証拠だよ。大物ってものはどうしてかは知れないけど、そういう圧倒的に不利な場面に限って生き残ってしまうものなのさ」
そう言うと、趙は微笑を浮かべながら煙草を灰皿に押し付け、残り少ないコーヒーを一気に口に流し込む。その彼の、まるでこの状況を楽しんでいるような姿を見て彼女は、呆れ半分で先程よりも大きな溜め息を吐き、頬杖を突いて外の方に視線を移した。
「……貴方のそういう楽観的な所、本当に羨ましく思うわ」
「そうかな? 俺はどちらかと言うと、君の方がちょっと焦っているように思えるけどね」
「焦ってなんか」
「確かに多少だけど、でも少なからず焦ってるよ。君のような直情型が他人の失敗を気にし始めたのが良い証拠」
冷静で、且つ的を得た趙の言葉に、彼女は思わず視線を彼に戻す。この趙という吸血鬼は、どういう訳か人のそういった心境の変化を敏感に察知するような、そんな感じの所が少なからずあった。そして、二条はそれがまるで自分の心の中を見透かされているようで、趙のそういう所がどうしても好きではなかった。
「とにかく、今度の作戦には貴方にも参加してもらう。手駒が減った今、これ以上出し惜しみは出来ないわ」
お茶を濁すようにそう言い、二条はすっかり冷めてしまったコーヒーに口を付ける。とりあえず“銀狼”さえ掻い潜れれば、ただの人間である葛城信介を捕獲する事は容易いはずだ。今回は趙にも出てもらうし、多少の損害を出しても構わない。彼女はそう自分を落ち着かせ、ゆっくりとコーヒーカップを受け皿に戻した。
「出し惜しみ出来ないって事は、古賀君と彼女も御同行って訳かい?」
趙の言う彼女。それは、恐らく二条の思い描いている人物と一致している。今回の新人の中では、古賀以上に戦闘向きで、遠野以上に覚醒が近い存在である。それに彼女なら十中八九、葛城信介を取り逃がすというような失敗は犯さないだろう。素質だけなら、もしかしたら趙や二条すら凌駕しているかも知れない。
「当然よ。何なら古賀君は置いてっても良いし」
「……いや。彼は連れて行くよ。葛城信介と接触した経験ははっきり言って大きい。逆に、俺は決行日までに彼女の“血の力”がフルに活用出来る環境が整っているかが心配だけどね」
趙はそう言うと再び煙草を口に銜え、先程よりも険しい表情で煙草に火を点ける。おどけてはいたが、彼も伊達に生まれてからずっと裏の世界で生きて来てはいない。生きるために自分や部下の命をやり取りをしなければいけないのなら、彼にも彼なりの覚悟があった。
「そのための準備はしてあるわ。一応、メインの計画が失敗した時のために、彼女にはもう二週間前から動いてもらってる」
今まで眠っていた獅子が、ようやく信介達に牙を剥こうとしていた。
「それにしても、良くあんな小さなナイフに当てたなぁ……。普通にビックリしたよ」
今日の昼飯のオムライスを軽くスプーンで突きながら、俺は何時も通りに平然としているセシルさんの方を向く。そして、その言葉に反応したからか、一心不乱に俺の分の三倍はあるオムライスを食べているセシルさんは、まるであれぐらい出来て当然のような顔を直ぐに俺に向けた。
あの文化祭での吸血鬼襲来から、早いものでかれこれ二週間が経とうとしていた。結局魁皇学園文化祭の怪物騒ぎは、近くの動物園から逃げだした二頭のヒグマが文化祭に紛れ込んだ、という形で収束を見せ、それ以来テレビや新聞でもたまに片隅で掲載されるだけで、これ以上の発展は見られなかった。
勿論、あの現場に居合わせた人間からは、ヒグマでは無かったとか、あれは明らかに新種の大型動物だとか、そういった類の意見もしっかりと挙がってはいたが、結局というか、やっぱりというか、世間では誰も信じる人は居なかった。アルフレッドさんの話では事実はしっかりと隠ぺいされてるって言ってたけど、それがセシルさん達の組織の仕業なのかそれとも敵の組織の仕業なのかは、結局教えてはくれなかった。
「ていうか、ハンドガンで当たるものなの? 150メートルくらいはあったよね?」
まぁ、かく言う俺もこの前の事件なんかは何だかんだですっかり霞んでるし、正直ここ最近はあのセシルさんの神業的な射撃が脳裏に焼き付いて離れない状態だったりする。だって、普通に考えて有り得ないだろ。あんな距離から動く小さな的を当てるなんて。
「正確には120メートルくらいだな。あれぐらいなら狙えば十円玉の誤差くらいで当たる。それに、私の使ってる銃にはそれなりの加工がされているし、取り立てて騒ぐ事じゃない。それより、私としては、君があの吸血鬼の能力を看破した事の方がよっぽど驚きなのだが」
何だそんな事かと俺は大きく溜め息を吐き、そしてスプーンに乗ったオムライスを頬張る。説明は前にもしたはずだが、どう振り返ってみてもあれは偶然が重なって、結果良い方向に転がっただけだと思う。たかが人間の俺が、圧倒的な強さの吸血鬼を凌駕出来たのは。
「窮鼠が猫を噛んだだけだよ。それに冷静に考えて見ると、案外簡単に怪物の正体が分かったし」
「あの状況でか? 私は父上ならともかく、君のような普通の人間があんな状況で冷静になれるとは考えづらい」
「発想の転換だよ。あいつには俺を殺す意思は無かったし、時間さえ稼げれば向こうの選択肢は逃げる事しかなかった訳だから。そう考えてみると、結構冷静になるもんさ」
「いや、そういう問題じゃないんだが……」
何だか歯切れが悪いセシルさんはさておき、一応は今回は無事に吸血鬼を撃退出来た訳だし、どうして俺が冷静になれたかなんて細かい事は気にしちゃいけない気がする。当然パニックにはなったし、不安や妥協もそれ以上にあったんだ。これはこれ以上説明のしようがない。
それに俺も俺で、吸血鬼と渡り合えるなんて、そんな変な誤解はしたくない。結果として俺の考えが間違ってなかっただけ
で、俺の考えが仮に一つでも間違っていたら、今頃こうしてセシルさんと昼食を共にしていなかっただろう。それに彼女達も素人判断で動かれてはたまらないはずだ。
「うむ。信介君の思考はどちらかと言うと策士向きなのかも知れんな」
「あ、アルフレッドさん」
昼食の美味しそうな匂いに釣られたのか、黒猫のアルフレッドさんがセシルさんの隣の椅子からひょっこりと顔を出す。また見回りと称した日向ぼっこをしてきたのだろうか、アルフレッドさんの首の下には点々と小さな砂粒がくっ付いていた。
今、こうして俺は至極当然の如くこの喋る猫に応対したが、勿論、最初の頃は喋る猫って事で一々驚いてたりもしてた。しかし、慣れと言うのは恐ろしいもので、アルフレッドさんもこの家に馴染んでいる事も手伝って、今や俺もアルフレッドさんを、“猫の姿をしたただのおっさん”のような対応になっていた。
「アルフレッドさんもオムライス食べますか? 一応材料はまだ余ってますけど」
猫の姿をしているが、アルフレッドさんは何時もちゃんと俺達と同じ時間に、俺達と一緒に食事を取る。お箸はやっぱり使えないが、それでもきちんと椅子に座り、俺が一本一本丁寧に取った骨抜きの魚料理を器用に口にするのだった。
「いや、ワシはさっきツナ缶食べたから大丈夫じゃ。それに、男にあーんとかされるのも嫌じゃしの」
「そんな理由でしたか。それならセシルさんにあーんしてもらえば……」
「断る」
間髪入れずにセシルさんはそう答え、三倍オムライスの手を付けていない部分を崩しにかかる。この即答は、正直洒落にならんだろと、俺は心の中でセシルさんに突っ込みを入れつつ、しょぼんとしたアルフレッドさんの方を向いた。
「ま、何時か嫁に旅立つ時までには、わしの存在の大きさに気付くじゃろうて」
「セシルさんの花嫁姿なんて、想像出来ませんけどね。所で、昼食が目当てじゃないなら、どうして帰って来たんです? 何時もは何にも言わなくても外でふらふら遊んでるのに」
近所では、人に良く懐く、可愛い黒猫で通っているアルフレッドさんは、俺が帰ると結構な頻度で表の喫茶店の方で女子高生やら女子大生やらと下心丸出しで戯れている。アルフレッドさんは向こうが勝手に寄って来ると言ってはいたが、それならあんな所でふらふらなんてしてないだろう。まぁ、喫茶店の方も招き猫とかそういう訳ではないが人が入るようになったし、家計が安定するならそれはそれで結構な事だ。だが、俺個人の意見を言わせてもらえば、とっとと地獄に落ちればいいと思う。
「わしだって、何時も遊んでる訳じゃないんじゃぞ。とりあえず、今日は信介君も一日家におるし、せっかくだから今後の話をしようと思っての」
「今後の事?」
猫らしからぬ肯きをし、アルフレッドさんはチラッとセシルさんの方に向ける。セシルさんは横目でそれを確認すると、持っていたスプーンをテーブルに置き、息をついて俺の方を向いた。
「今後の事……というと些か語弊があるやもしれん。事はもう既に動き出しておる」
アルフレッドさんの声のトーンが急に下がり、俺もこの話が、先程までの世間話ではない事を何となく感じる。恐らく、二人の話とは、何時も通り敵の吸血鬼の事だろう。思い当たる話といえばそれしかない。
「ここだけの話、今の状況はとても良いとは言えない。この前は何とか敵を退けられたが、どうやらそれで向こうも火が付いたようだ。奴らもこれから本気で君を狙って来るだろう」
口をへの字に曲げ、セシルさんは僅かに苦悶の表情を浮かべる。セシルさんにしてはそれは珍しい表情で、俺も多少呆気に取られながら返事をした。
「本気って、今までだって十分に本気だったように思えますが……。それに、この前だって、十分条件は悪かったじゃないですか?」
現に、俺の幼馴染の岬四季だって、あの文化祭襲撃事件では巻き込まれそうになったんだ。俺に言わせれば、あれだって随分と始末に負えない状況だった訳で、それ以上の状況って普通に言われても、やっぱりちょっと想像が出来なかった。
「あれは、条件としてはどちらも人目に姿が晒す可能性があった。だが、今回のは少し種類が違うかもしれないんだ」
「種類? それはつまり、場所や時間が変わるって事ですか?」
「それはそうじゃろう。あいつらも、これ以上人の目につく所で戦う気はないはずじゃ」
だったら、条件は前よりかはずっと良いじゃないか。確かに今度は見境無しに攻撃してくるかも知れないけど、それはこっちだって同じだ。状況だけ考えたら、こっちの方が圧倒的に有利じゃないか。
「だったら、この前とどう違うんです?」
「セシル、頼む」
アルフレッドさんの言葉にセシルさんは肯き、そして軽く咳払いをする。
「この神居北斗市内の行方不明者の数は、私達がここに来た時点でおよそ135名。無論、この中には単に失踪しただけの者や、吸血鬼とは別の事件に巻き込まれた者がほとんどで、これらは時間も私達が来るよりずっと前からのものだ。そして残りの、吸血鬼と接触し一時的に吸血鬼になった者は、私達の粛清の有無に関わらず、数日で皆発見されている」
「その一時的に吸血鬼になった人達……ってのが、定本とか遠野とか、“ハーフ”って呼ばれる奴ですよね?」
「その通りだ。吸血鬼になるには二つの方法がある。一つは血統によって生まれつき吸血鬼の者、そして後者は他の吸血鬼によって吸血鬼にされる者。この二つは実は一長一短で、前者は単純に数は少ないが、後者に比べて能力は格段に上だ。逆に、後者は完璧に吸血鬼になるまで多少の時間が必要で、尚且つ能力もハーフの頃に比べれば多少上がるが、前者には遠く及ばない。だが、こちらは素質があれば容易に吸血鬼なる事が出来る上、短い時間で純潔の吸血鬼に準ずる強さを身に付ける事が出来る」
確かに、簡単に戦力を増やしたいなら多少弱くても後者の方が遥かに効率がいいだろう。しかも現地の人間なら、俺に関する調査だってスムーズに出来るし、しかし、今の話は何度か聞いていた事だし、俺としてはそれが、今後の事態の説明とは到底思えなかった。
「それは前にも聞きました。俺が聞きたいのは、どうしてこの前と状況が違うのかって所ですよ。今の二つの話だけでは、とてもじゃないですが言いたい事が分かりません」
「信介君の言いたい事は分かるが、とりあえず話は最後まで聞くもんじゃ」
静かに話を聞いていたアルフレッドさんが、真面目な顔で俺の方を見つめる。その視線は、話の腰を折るなとでも言いた気で、俺はしぶしぶ口を閉じると、もう一度セシルさんの方を向いた。
「……話を戻そう。さっき、私達が来た時の行方不明者の人数の事を話したが、それは覚えているな?」
「確か……135人」
「そうだ。そしてその行方不明者の数は、当然一時的な吸血鬼達が発見された事によって減少している訳だが、つい二週間前辺りからだ。その数が、どういう訳かはまだ分からないが、また増加傾向にあるんだ」
今のセシルさんの説明で、俺はようやく二人が何を言いたいか少しだけ理解出来た。つまり、再び減少傾向にあるという事は、また向こうは古賀や遠野のような仲間の吸血鬼を増やそうとしているって訳か。それなら、別にこんな遠まわしな説明は要らないような気がするんだが。
「つまり、敵はまた新しい仲間をって所ですか?」
「確かに、それならまだ手に負えるんだが……」
「? どういう事です?」
再び複雑そうな顔をし、今度はセシルさんがアルフレッドさんの方を向いた。
「行方不明者が、今回に限って皆行方不明のままなんじゃよ。まぁ、説明しなくても分かるじゃろうが、居なくなったままじゃと、その行方不明者の素性が公開されて、逆に向こうが不利になるはずなんじゃがな……」
「うん、確かに」
確かに、増やした吸血鬼を手元に置いておくのは、向こうにとっては不利益にしかならないような気がする。アルフレッドさんが言うように、行方不明者の大半には家族が居るはずだし、既に行方不明者として名前が挙がっているなら、名前や顔だって分かってしまう可能性が大いに有り得るじゃないか。
「これは、ひょっとしたら、目的は仲間集めじゃないかも……」
よくよく考えてみれば、敵は意図してただの人間を集めて、それを何かに利用しようとしているのかも知れない。血を吸うだけなら、セシルさんが殺す必要もないし、少量で足りるって言ってたし。
実際、セシルさん達が此処に来て以来、二人が血を飲んでいる所を俺は見た事がない。それに能力はセーブ出来るものらしいし、やっぱり態々誘拐なんてする必要がない。
「うむ。そう考えるのが妥当な所じゃな。敵は何らかの策があり、それで一般人を誘拐しておるのかも知れん」
「まったく……もうすぐ夏休みになるのに、また面倒な事を考えやがる」
今年の夏は、どうやら遊んでる暇はなさそうだ。