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19/43

Great begin 1

お盆を挟んだせいか、久しぶりの更新となります。少し執筆が滞っていましたが、これからは今までどおりの周期で連載する予定です。

 魁皇学園文化祭がスタートしてから、早いものでもう三時間近く経過していた。その間、ほぼ全ての時間をこのくそ暑いタイツ生地のコスチュームと共に過ごしていた俺は、ようやく午前の部の上演というノルマをこなし、Tシャツに着替えて教室で少し遅めの昼食を取っていた。

 勿論、俺のようにクラスでゆっくりしている人間は少ない。ほとんどの者は他のクラスの出し物を見に行ったり、午後の公演の準備をしたりと、何だかんだ言いながらもそれなりに文化祭を満喫しているようだった。


「それにしても、あれだな……」


「ん? 何だ?」


 俺の前に座り、他のクラスの出店で買った焼きそばを食べていた賢治は、団扇をパタパタと扇ぎながら、少し感心したような目で俺の方を見る。この男も、やはり何だかんだ言いながら文化祭を楽しんでいるようで、これから飯を食い終えたら、すぐに午後の上演に向けて準備に行くらしかった。


「あんなに嫌がっていた割に、案外ノリノリで演技をしていたな。お前」


「……あのなぁ、俺一応主役だぜ? 嫌だとかそういう以前に、主役がやる気なかったらそれこそ興ざめだろ。まぁ、俺自体はやる気はないけどさ」


「なるほど。俺としてなんだ、俺の完璧な演出を無視してお前がヘルメットを取らなかったのが興ざめだったが」


 賢治の言葉に、俺は思わずギクッとして視線を逸らす。横目でチラッと賢治の方を見ると、賢治は軽く口元を緩め、まるで蔑むように俺の事を見つめていた。

 賢治の言う演出とは、恐らくクライマックスでのあのシーンでの事だろう。悪の手に落ちた親友と闘い、俺の演じるブラッディビートが最後の最後で被っていたヘルメットを取るという、非常に重要なワンシーンである。だが、俺はあまりの緊張と、この大衆の面前で、タイツ姿で顔面を披露するという状況での恥ずかしさのあまり、当初の打ち合わせを無視し、頑なにヘルメットを取るのを拒んだのだった。


 ――まぁ、劇は何とかなったけどさ。


 その後、舞台の上では想像以上に混乱が起きていたのは、賢治には絶対に黙っておこう。


「……あれはだな、まぁ、なんだ。間合いの取り方や台詞の間隔を考えていたら、ついうっかり忘れていたんだ」


 適当に言い訳を考え、俺は半ばしらを切り通す形で賢治に言う。無論、賢治も訝しげに俺の顔を見つめてはいたが、すぐに賢治は溜息を吐いて焼きそばを口に入れる。それを見てようやく俺は胸を撫で下ろすと、俺も持って来た弁当に箸をつけた。


「ところで、公演中に四季ちゃんが来てたぞ」


 自前のミートボールを口に運びながら、俺は賢治の方を向いた。


「四季が? 俺の恥ずかしいコスチューム姿を見に?」


「そりゃ分からんが、何かお前の予定を聞きに来てた。何時頃から信ちゃんは暇になるかってな」


 そう言えば、四季と学園祭を一緒に歩く約束とかしてたんだっけ……。ここ最近ずっと忙しかったから、すっかり忘れてた。


「それで、お前は何て言ったんだ?」


「昼過ぎ頃になったら、多分暇してるって言っておいた。せっかくだし、ちょっと行ってみたらどうだ?」


「行きたいのは山々だが、時間は大丈夫なのか? 午後の上演まで、後一時間くらいしかないぞ?」


「四十分で戻ってくれば平気だろ。舞台は別に係もいるし、お前は着替える準備をするだけさ。……それにな、信介。人間、鈍すぎるのも駄目だと思うぞ?」


「いや、鈍すぎるってのは言い過ぎだろ? 俺だってちゃんと文化祭の事は考えてるし」


 俺の言葉に、賢治はさっきよりもずっと深い溜息を吐く。そして眉を顰めて俺の方を向くと、俺の頭を団扇でポンポン叩いた。


「……お前、頭はいいけど気は利かないな」


「悪かったな。どうせ俺は杓子定規な人間だよ」


 賢治の団扇を振り払い、俺は弁当を仕舞って立ち上がる。そしてバッグから財布を取り出すと、バッグの横に置いてあったワイシャツに袖を通した。


「行く気になったのか?」


「ああ。約束してたし、行くだけ行ってみるよ。上演時間までには戻るつもりだ」


「ははは、その気になったら抜け出してもいいぞ。責任は取らんが」


 そういうと賢治も立ち上がり、食べ終えた焼きそばのパックをゴミ箱に捨てる。賢治もそろそろホールの方に行くんだろう。少し待って、一緒に出るか。そう思いながら、俺はゆっくりと教室のドアを開けた。


「ん? 何だ、こんな所に居たのか、信介君」


 目の前に、目鼻顔立ちが整った、それはそれは美人な銀髪の少女が現れる。着ているのは余所行き用なのか、どこか欧州の方を彷彿とさせる真っ黒な長袖のシャツに、膝下よりも随分長いこれまた真っ黒なロングスカート。少し大きめの瞳をこちらに向け、若いながらも十分に威圧感を放つその女性は、……間違いない。セシルさんだ。

 途端、俺は踵を返して教室のドアを閉める。その間、僅かに二秒ほど。誰も見てない。まだ見てないはずだ。俺はそう自分に言い聞かせ、出来るだけ必死に頭の中を整理する。何でセシルさんがここに居る? どうして魁皇学園文化祭に来ている? ……ああ、そういえば、今日は見に来るって言ってたな。叔父さんに勧められたんだっけ? 俺の身辺警護とも言ってたし……違う違う!! 問題はそこじゃない! ここに居るクラスメートの少数にでもスーパー美人のセシルさんと俺が一緒に居る所を見られたら、間違いなく変な誤解されると思う。杞憂かもしれないけど、浮気騒動があった手前だ、それは重々考えられる。そうだ! 何としても今は逃げなくては!


「どうした? 信介?」


 ドアに背を向け、必死に今後の逃走経路を模索している俺に、賢治がそっと歩み寄って来る。俺はそれを右手で制すと、出来るだけ満面の笑みを浮かべ、賢治に返事をした。


「何でもない、何でもないんだ! 心配しないで先に行ってくれ!」


「行ってくれも何も、お前がそこ退いてくれなきゃ行けないんだが……」


「ここは駄目だ! 絶対に駄目だ! ここから行ったらお前を呪う!」


「いや、呪うなよ。ていうか、ドアの向こうに何かあるのか?」


「何もない! 絶対に何もない! ていうか早く行ってくれ! クラスのみんながお前の事待ってんだろ!」


「だったら早く退けっての! そこのドア以外どうやって行くんだよ! 意味分かんないから!」


「窓から行くとか壁抜けとか瞬間移動とか色々あるだろ! 応用利かせろよ!」


 ドアの前を死守し、俺は混乱しながらも必死に賢治を食い止める。途中、何で賢治を食い止めなきゃいけないのかとも思ったが、この際しょうがない。ここを開けるのだけは、絶対に阻止だ!


「……信介君、そこの彼がすごく困っているが、いいのか?」


「良いんだ、セシルさん。今行かせたら、俺は色んな意味で終わりだと……」


 いろんな意味での終わりが、何故か俺の隣に居る。一気に硬直する思考。刹那の時間が、瞬く間に凍結する。俺の視線の先に居るのは、ドアの向こう側に居るはずの人間、もとい吸血鬼、セシルさんだった。


「あの……セシルさん?」


「? 何だ?」


「どうしてここに?」


「ん。お前がそこのドアを閉め切ってしまったから、後ろのドアから入った」


 そう言ってセシルさんは、全くノーマークだった教室の後ろのドアを指差す。そこには、恐らくセシルさんが引き連れてきてしまったのであろう他のクラスの男子が、それこそ山のようにドアの所に集まっており、そして間違いなくその視線は、年頃の男子高校生は誰もが持つであろう、エロスそのものであった。

 

 ――もしかしたら案外目立たないかもって思ってたけど……。そうだよね、そんな訳ないよね。こんな女に飢えた男の巣窟に、セシルさんみたいな超美人さんが来たら、絶対にこうなっちゃうよね。


「信介、知り合いか?」


 既に茫然自失の状態になっていた肩を叩き、賢治が俺に向かって言った。


「まぁ、知り合いだけど……」


 歯切れが悪そうにそう言い、俺は賢治の方をチラッと見る。顔は平常を装っているが、視線は明らかにセシルさんに向けられており、やはり、賢治も後ろの男共と同じように、セシルさんの事が気になっているようだった。


「何だ、信介君の級友か?」


 腕を組んで俺を見つめていたセシルさんが、急に賢治の方を向く。賢治はセシルさんと視線が交わると、彼らしく、そして何時ものように落ち着き払って口を開いた。


「そうですけど……貴方は?」


「セシル。セシル・フレイスターだ。見た所、君は信介君の友人のように見えるが……」


「セシル……さんですか。あ、俺、蒼井賢治っていいます。一応葛城君とは高校からの付き合いでして……」


「君が蒼井賢治君か。信介君から名前は聞いている。何時も信介君がお世話になっているようだな」


「いえいえ、持ちつ持たれつ、ですよ。俺も葛城君にはお世話になってますし」


 当初の予定を忘れ、賢治は結構満更でもない、というかめちゃくちゃ嬉しそうな顔でセシルさんと会話を始める。そんな賢治のだらしない様子に、俺はとりあえず軽く咳払いをすると、眉を顰めて賢治の肩を叩いた。


「……お前、ホールの方の準備の手伝いはいいのか?」


「おいおい、固い事言うなって。ていうか、お前こんな美人の友達が居るなら紹介しろよ」


「あのな、賢治。さっきまで意気込みはどこいったんだよ。演出家が聞いて呆れるぞ」


「いいんだよ、あんなの。大体な、こういう貴重な出会いを大切にしないなんて、天界のエロス神に失礼だろ」


 俺の耳元で小声でそう言い、賢治は笑いながら再びセシルさんの方を向く。ていうか、こいつ今さらっと最悪な事言わなかったか?


 ――まぁ、とりあえず今は何でもいいか。


 会話を続けている二人に気付かれないようにドアを開け、俺は忍び足で教室を後にする。幸い、セシルさんは賢治と話が弾んでるし、他の奴らも視線はセシルさんに向けられているままだ。後は後々誤魔化すとして、ここは撤退した方がいいだろう。まだ時間もあるし、少し他のクラスの出し物でもを回って見るか。


「ま、時間もあんま無いんだけどね……」


「ふぅん。どうして時間がないの?」


「そりゃ、これから午後の部の上演の準備をしなくちゃいけないし……って、四季。何やってんだ?」


 足取り重く階段を下りていると、隣に何時の間にか、最近あまり見なかったショートボブの少女の姿があった。身長は俺の肩ぐらいで、スタイルは胸を除けばほとんどパーフェクト。そして、学年中の男女問わずに人気があるその少女、岬四季みさき しきは、俺の顔を覗き込むと、何時ものように元気よく微笑んでみせた。


「あらあらー? まさか私との約束、忘れたとは言わせないから!」


 ああ、そう言えば。さっきのセシルさんとの一騒動のせいで、危うくまた忘れる所だった。


「覚えてたよ。だから、こうして校庭に出ようとしてるんだろ?」


 勿論、これは苦し紛れの言い訳ではあるが、さっきまでは四季の所に行くつもりだったのだから、語弊はないはずだ。要は気持ちの問題だと思う。


「ふぅん。でも丁度良かった。私も今の時間は空いてるし、しょうがない。彼女なんて代物とはほとほと縁のない信ちゃんのために、私が一緒に回って上げましょう!」


「うわー、自分から誘っといて何それ。何かすっごく恩着せがましくないか?」


 第一、彼女に縁がないのは、お前が原因だったりする時も結構あるんだぞ。


「いいじゃんいいじゃん。せっかくの文化祭なんだし。楽しく行きましょうよ? 楽しく!」


 そう言いながら四季は、俺の腕に自分の腕を絡め、人目も気にせず楽しそうに階段を下っていく。ちょっとしたお祭り騒ぎで、きっと浮かれてるんだろう。こういうのも悪い気はしない。それに、


 ――役得!


 小振りだが、確かに柔らかな感触が、四季の着ているワイシャツ越しに確かに伝わってくる。しかも四季も浮かれてテンションが高いせいか、胸が腕に当たっている事などまったく気にする様子もない。……まぁ、最近は“超”が付くほど忙しかったんだし、これぐらいの役得があっても罰は当たらないだろう。


「ところで四季。今日は岬さんはどうした?」


 階段を下りきった所で、俺はふと岬さんの事を思い出す。久しぶりに休暇を取って見に来ると言っていたし、もしかしたら午前中だけで帰っちゃったのかな?


「うん。午後から来るって言ってたから、そろそろ居るんじゃないかな? 文化祭のパンフレットも渡したし、大丈夫だよ、きっと」


「だといいけどね」


 ていうか、こんな腕組んで歩いてる姿、岬さんに見られたら、半殺しじゃすまないだろうな。まぁ、出くわす事なんて、恐らく無いだろうけど。


「ところで信介。お前は何時からうちの娘とそうやって引っ付いてる?」


「そりゃ、階段からだから、かれこれ五分位前……」


 その瞬間、再び思考が硬直する。急転直下。錐もみ状態。そして暗転。俺の野生の本能が、目の前にいる少し渋めな四十代こと、岬登志男みさき としおから逃げるように、それこそ必死になって体中に訴えかけてきていた。


「あっ父さん。ようやく来たんだ」


「ああ。学校が案外広くて、少しの間迷っていたが、そこの命知らずな茶色い癖毛が偶然目に入ってな」


「あの……岬さん? まさかとは思うけど、命知らずな茶色い癖毛って……俺の事?」


 無言で俺の頭に手を置き、岬さんは顔に笑みを浮かべたまま、情け無用に俺の頭を鷲掴みにした。


「このドアホが! 高校生の分際で、変に色気づきやがって!」


「いててっ! ちょっとタンマ岬さんっ! 本気で潰れるって!」


「本気で潰すつもりでやってんだ! この色年増!」


「誤解ですっ! 変な事は考えたけど、故意じゃないんだって!」


 顔はあくまで笑っているが、何を隠そう、岬さんの目がまったくと言っていいほど笑っていない。まさに鬼神。俺の経験上、これは岬さんがプッツンいっちゃってる時だ。ていうか、四季もいい加減絡ませてる腕を放せって!


「ははは。……そういえば、父さん。その様子だと仕事には行ってないみたいだけど、午前中は何処に行ってたの?」


「ん? ……ああ」


 俺の頭を握り潰そうとしていたそのごつい右手を離し、岬さんは少し俯いて四季の方を向く。四季も俺から腕を離すと、少し首を傾げて岬さんの顔を覗き込んだ。


「……ちょっと、母さんの所にな。今日は四季の学校の文化祭だって、一応伝えてきた」


 岬さんの言葉に、四季の表情が若干曇る。傍から見ればほとんど微々たるものだったが、だが、それでも近くに居た俺は、瞬時にその変化に気付いた。


「そう、なんだ」


「ああ。仕事が忙しくて、しばらく母さんの墓前には立てなかったからな」


 四季は心の変化を悟られまいとすぐに口元を閉め、まるでその事を無かった事にするかのように、先程の元気な笑顔を岬さんに向けた。


「……そう。それじゃ、気を取り直して何処かに行こうか、信ちゃん。……父さんも、一通り見てまわったら、私の出店の所にも来てみて」


「ああ。もう少し見てまわったら、探して行ってみるよ」


 そっと俺の手を握り、四季は何も言わずに岬さんから遠ざかって行く。そして振り返った矢先、一瞬岬さんの瞳に影が差したように見えたが、岬さんは俺と視線が合うと、胸の所で軽く手を振った。









 魁皇学園の第二校舎の屋上。本来文化祭では使われる予定のないそのスペースに、どういう訳か二人の男が手すりに寄りかかって校舎の間に広がる中庭の方を眺めている。無論、周りには誰もいない。というより、ここは普段から立ち入り禁止の場所であり、元より誰かが居る可能性など、皆無に等しいのだ。

 何をするでなく、ただ呆然と立ち尽くしている二人の視線には、先程まで中年の男と会話をしていた、恐らくこの学校の生徒であろう一組のカップルが映っていた。そして、そのカップルがゆっくりと校庭の方に遠退いていくのを確認すると、二人のうち、体格がいい方の男が、胸ポケットから煙草を取り出し、もう一人の男を横目で見ながら口を開いた。


「……さてと。ようやく獲物が動いてくれたようだが」


 銜えた煙草に火を付け、体格のいい方の男、古賀茂こが しげるは、今度は視線をカップルが消えていった校庭の方に向ける。カップルの男の方は、ここ最近の彼の標的である葛城信介。もう一人は、その葛城信介と噂があり、その葛城信介の近所に住んでいる幼馴染みの女だった。


「ええ。どうやら、思惑通りに校庭に移ってくれましたか」


 もう一人の男、遠野幸太郎とおの こうたろうは携帯電話を開き、現在の時刻を確認する。予定より少し早いが、贅沢は言ってられない。遠野は煙草を吹かす古賀の方を見ると、まるで自分自身の気を引き締めるかのように、縁無しの眼鏡をぐいっと上に押し上げた。


「そろそろこちらも行動に出ましょう。ぐずぐずしていては、せっかくのチャンスも逃げてしまいそうですからね」


「……そうだな。そろそろ頃合いだろう。ところで、あの協会のハンターはどうする? お前の予想通り、向こうの校舎付近を徘徊しているぞ?」


 協会のハンターとは、無論あの銀色の髪の女の事だ。大方の予想通り、あの女もこの文化祭に紛れ込んでおり、葛城信介の行く先々に、事前に他の吸血鬼の警戒をしているのだった。


「問題ありません。古賀君は、予定通り目標の取り巻きの排除です。協会のハンターについては、古賀君に全てを任せます」


 口ではこうは言っているが、当然遠野には所詮ハーフの古賀が、熟練の協会のハンターに敵うなどとは思っていない。足止め上等。時間を稼いでくれれば、遠野にとってはそれで十分だった。


「分かった。出来る限り目標とは離すつもりだが、あまり期待はしないでくれよ」


「……古賀君らしくないですね。まぁ、いいでしょう。算段通り、死角になるような所には鏡を設置しましたし、こちらもそのための用意は出来ています。五分も時間を稼いでくれれば、後はこちらで何とかします」


 遠野の顔に浮かぶのは、まさしく自信。抜かりの無い作戦だという、完璧な自負だった。そして彼は何時ものように眼鏡を上に押し上げると、静かに精神統一を始めた。


「始めましょう、古賀君。これから、楽しい楽しいパーティの時間ですよ」

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