カヤとブンゴウ
昔々あるところにネズミだけの国があったそうな。
その国の姫であるカヤは大層綺麗な娘で白い髪に赤い目をしており、男達はカヤのその美貌に惚れて男を魅せたそうな。
そんなある日の事だ。
「たのもーう」
人の青年ブンゴウなる男がネズミの国訪れた。
そりゃあネズミ達は驚いた。 チューチュー人間が攻めてきた。 びっくらこいたありゃこりゃりゃ。
「皆の者落ち着くのです。 どうやら旅人らしいですから話を聞きましょう」
カヤは凛とした声を出して、民衆を止めました。 すると慌てた民衆がピタッと止まってカヤの方を見た。
「そうだそうだ。 カヤ姫が言うのなら話だけでも聞いてみよう」
「そうしよう」
民衆達はうんうんと頷き、仕事にえっさほいさ戻っていった。
「ここにカヤ姫という姫君がいると聞いた。 その姫と婚約を申し込みたい!」
ブンゴウは、門の前で大きな声を上げた。 するとチューチューと民衆達は声をあげてブンゴウを非難した。
「やいやい人間の。 カヤ姫様に婚約を申し込むたぁなまいきじゃねぇの!」
「そうだそうだ! カヤ姫様は天女のようにお美しい方なんだよ! そんじょそこらの人間がカヤ姫を妻に出来るなんて思わない事だねぇ」
女、男も子供も老人もブンゴウを非難した。 カヤ姫は民衆にとっては慈愛の天女様。 権力に傘を立てず、慈愛を分けるその心は民衆の心を掴まれてまさしくそれは地母神さ。
「……ではカヤ姫よ。 どうすれば婚約を結んでくれるのか教えてくれ!」
ブンゴウは剣を置いて、地面に座り門を睨みつけました。
「よろしい。 ブンゴウ。 本気でこのカヤの心を射止めたくば、民衆の父になって見なさい。 さすればカヤは民衆の母としてあなたの妻になりましょう」
「あい分かった」
それからブンゴウは民衆の心を止めようと、剣を振ったそうな。 道場の手入れに畑仕事。 飯屋の飯炊を手伝い少しずつ、少しずつ認められていった。
そんなある日、カヤ姫が庭を散歩していると大きな龍が現れた。 兵士は皆。 床に倒れて血だらけありゃ大変。
「もうおしまいだぁ!」
そう民衆が叫んだ時、出てきたのは我ら皆に認められたブンゴウ様。
「このブンゴウがこの龍を倒した暁には、カヤ姫との婚約を果たせて貰う!」
「分かりましたブンゴウ様。 あなた様が龍を討伐した暁にカヤはあなた様の妻となり添い遂げましょう」
誓いは果たされて、見事ブンゴウは龍を討ち取った。
「俺はこれよりこのネズミの国の王となりお前達を守ろう」
「うぉーブンゴウ様ばんざぁい!!」
こうしてブンゴウはカヤと結ばれた。 子宝にも恵まれて二十人の子供がチューチュー。 豊かに賑やか元気いっぱい。
そして五年が経った。
「ふはは。 この国は俺様のものだぁ!」
ある日突然遠い遠い国から敵の王様がやって来た。
「やめろ! ここはカヤと俺の治める国壊させないぞ!」
国境の境目でブンゴウは剣を振るいましたジャキジャキ。 馬に乗ってパカラパカラ。 一太刀で敵が吹っ飛んで、恐れをなして腰を抜かした。
「ええい! あの敵将を討ち取れ!」
「ははっ!」
ですが敵将はずるい頭を持っていた。 ブンゴウをぶすりと毒矢で討ち果たし、扇子を開いて踊り食い、たちまち国境を乗り越えてネズミの国へ侵攻した。
「ふはは。 これでネズミの国は俺のものだ」
王は、喜びの声をあげましたが不思議とチューチューと音は響きません。
部屋は空き家ばかり、金銀財宝すらありません。
「ふん。 まぁいい最低カヤやその娘達だけでも俺達の物にすればいい!」
王は部下を連れて、城へ入りました。 ですがそこでもチューチュー音はなりません。
みずらが歩く音が木をギシギシと音を鳴らします。
「ようこそおいでなさいました」
すると王様の前に、それは綺麗な綺麗なカヤがおりました。 母になっても娘のように美しくさらにその美貌は輝いておりました。
「ふはは。 ネズミの姫カヤよ。 お前の夫のブンゴウは死んだ俺のものになれ」
「カヤはあなた様のものにはなりませぬ。 カヤはずっとブンゴウのものです」
するとゴウゴウと城が燃え始めました。
「ま、まさか貴様我々と死ぬつもりか!」
「ええ。 民と子供達は既に逃しました。 お前達は夫の手向けとして死になさい」
ゾッとする笑みを浮かべてカヤは涙を流した。
「や、やめろ!」
こりゃ王も驚いたあの慈愛の天女のようなカヤが鬼の形相ゴロゴロ。 尻餅ついて、大涙。
「……よくもカヤの旦那様を!」
カヤは短刀で王の首を切り裂いた。 そして火に飲まれてカヤは死んだ。
ネズミの一族に繁栄あれ。 祝福あれ。
悪に滅びあれチューチュー。 燃えろ燃えろ情念燃えろ。 パチパチ燃えて衣のみ。
おあとがよろしいようでさようなら




