秋山蓮(仮面ライダーナイト)
秋山蓮(仮面ライダーナイト)の視点で、戦いが終わった後の静寂と、彼が背負い続ける「孤独な誓い」を描きます。
独奏:秋山蓮の残響
ミラーワールドの戦いは終わった。
空を覆っていた赤黒い雲は消え、鏡の向こうから聞こえていた不快な羽音も、今はもう聞こえない。
俺は一人、馴染みの喫茶店『花鶏』のカウンターで、冷めきったコーヒーを見つめていた。
城戸がいなくなった後のこの場所は、酷く静かすぎる。
城戸真司という「矛盾」
あいつは馬鹿だった。
最後まで「戦いを止める」なんて寝言を言い続け、あろうことか戦いとは無関係な場所で、誰かを守ってあっけなく死んだ。
俺はあいつを否定し続けた。甘い、お前のせいで誰かが死ぬ、と。
だが、結局どうだ。俺が生きてここにいるのは、あいつが最後までその「甘さ」を捨てなかったからじゃないのか。
「城戸……お前の言った通り、少しはマシな世界になったのか?」
答えを返してくる騒がしい声は、もうどこにもない。
北岡秀一との「貸し」
北岡。あんたとは最後まで決着がつかなかったな。
法廷で人を弄ぶような男だと思っていたが、あんたが最後に選んだのは、勝負を投げ出すことではなく、自分の命を使い切ることだった。
あんたが残した「自由」という言葉が、今の俺には重すぎる。あんたのように軽やかに生きて、軽やかに消えることなんて、俺にはできそうにない。
浅倉威への「憎悪」
浅倉。お前のような男が存在したこと自体が、あの戦いの呪いだった。
だが、お前がいたからこそ、俺は自分の「牙」を研ぎ澄ますことができた。お前という絶対的な悪を前にして、俺は「正義」ではなく「守るための暴力」を肯定せざるを得なかった。
お前のいない世界は、確かに平和だ。だが、お前が残した戦いの傷跡は、今も俺の右手に疼いている。
東條悟という「哀れみ」
東條。お前は最後まで「英雄」という形に囚われていた。
何かを犠牲にしなければ得られないものがある。それは真実かもしれない。だが、お前が殺したのは他人ではなく、自分自身の心だったんだろう。
俺もお前と同じ道を歩む可能性があった。恵里を救うために、誰かを切り捨てる覚悟はしていた。
ただ一つ、お前と俺で違ったのは……俺の隣には、俺を殴ってでも止めようとする、あの馬鹿な龍騎がいたということだ。
結末:そして、歩き出す
恵里の意識が戻り、世界は平穏を取り戻した。
けれど、俺の物語はここで終わったわけじゃない。
俺は、ミラーワールドという地獄を見てきた。
人が人を喰らい、欲望のために剣を振るう、あの醜い連鎖を。
城戸が守ろうとしたこの世界を、今度は俺が監視し続けなければならない。
俺はコートを羽織り、店を出た。
ふと通りがかったショーウィンドウ。ガラスの向こう側に映る自分の姿を一瞬だけ睨みつける。
そこにはもう、ダークウイングの影はない。
「……行くか」
俺は誰に呟くともなくそう言い、雑踏の中へ消えていった。
秋山蓮という男が、かつて仮面ライダーであった証を、その胸の痛みだけと共に抱えて。




