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マル・マル・モリ・モリ! とにかくヤバい! 著作権もひっくるめていろんな意味でとにかくヤバい!

 その頃、ビン子はというと……

 権蔵の元へと森の中をかけていた。

 うっそうと茂る緑。邪魔するかのように伸びる枝葉……

 ――でも、こんなところ、通ったかしら……

 なんだか行きがけに通った道とは違うような気がするのだ。

 どうやらビン子ちゃん……タカトの背中ばかり見ていたために森の様子をおぼえていないみたい。

 ――多分……こっちから来たような気がする!

 と、わずかな手掛かりをもとに木々の間をかき分ける。

 実際、どんな森であったとしてもランドマークが見えなければ簡単に迷う。

 山の形。巨木の姿。はたまた星の位置などを頼りに自分の位置を把握するのが常というものなのだ。

 ということで、ビン子もまた独自のランドマークを見つけて進んでいた。

「あっちから! 聞き覚えのある鳥の鳴き声がするわ!」

 はい……?

「絶対!この鳥の声! 森に入った時に聞いたものと同じ声だわ!」

 え……と……

 もしかして……

 もしかしてですよ……ビン子さん……鳥の声をあてに森の中を走ってます?

 ――それの何が悪いのよ! だいたい、右を見ても左を見ても同じ緑じゃない! 鳥の声ぐらいしか目印がないのよ!

 おそらく、タカトがこの場にいれば言うだろう……

『お前は! 馬鹿かぁぁぁぁぁぁぁぁあ!』

『お前は!この森の中に一体!何羽の鳥がいると思っているんだ!』

 などと、激しいツッコみを入れること間違いなしwwww

 だって!鳥なんていくらでもいるのだから!

 まぁ……百歩譲って、仮にその鳥が同じ鳥だったとしよう……

 だが……鳥とは羽が生えている生き物なのだ。

 まさに彼らは自由の徒!空を飛ぶことができるのだ!

 まぁ、仮に飛べないブタ!改め、飛べない鳥であったとしても足は生えている。

 腹が減れば、エサを求めて森の中を移動する。

 そんな鳥の声を目印にして、どうして目的の場所にたどり着けようか!

 いやたどり着けはしない! 絶対に!

 なぜなら! ランドマークは動いてはダメなのだ!

 鳥、犬、猫! はたまた井戸端会議をするおばちゃんなどが、かつてその場所にいたからと言って、それを道順のマークにしてはいけない!

 かろうじて許せるのは死にかけ、いや死んだジジイぐらい……いや、それもサンド・イィィッ!チコウ爵のようにゾンビとして徘徊する可能性もあるのだから、絶対にダメだ!

 ということで……

 めでたく、ビン子は森の中で迷っていた。

「どうしよう……」

 焦るビン子。その顔はすでに半分泣きべそをかきだしていた。

 だが、こうしている間にもタカトは……巨大なイノシシに食べられそうになっているのだ。

 早く権蔵を連れて戻らないとタカトがミニ大根がミニウ○コになりかねない。

 だがしかし……

 見渡す限り……森! 森! 森!

 まるでThe森なのだ!

 焦れば焦るほど!ビン子の頭はパニックを起こす!

 ――マル・マル・モリ・モリ!タカト食べるよ!

 そう、このままではあのイノシシが、タカトを丸々モリモリ食べてしまうのだ!

 というか森・森と混同しとるがなwwww

 ――ツル・ツル・テカ・テカ!アソコも食べよかな?

 おい! それは本当にイノシシの事なのか!

 ――あの大根は私のヨ!

 確かにタカトのミニ大根はツルツルテカの畑の植わっている……

 ということは……これはミニ大根を見たビン子ちゃんの願望なのだろうか?

 というか! なんでビン子ちゃん!タカトの畑がツルテカって知ってんのよw

「もう! わかんないわよぉ……」

 もう、何が何だか訳が分からない!

 分からないが、とにかくヤバい!

 著作権もひっくるめていろんな意味でとにかくヤバいのだ!

 ついに泣き出したビン子は足を止め、ついにはその場にうずくまってしまった。

 ――タカト……

 思いだされるのはタカトのミニ大根! ではなくてタカトの笑顔。

 こんな時、タカトだったらどうするだろ……

 そう、タカトだったらこんな時、『俺を誰だと思っている! この国一の融合加工職人!タカト様だァぁぁ!』と言わんばかりに自分の作った道具を取り出すはずなのだ。

 道具……

 道具!?

 ――融合加工の道具があったわ!

 そう、今、ビン子は一つのカバンを担いでいる。

 それは先ほどまで『モモクリ発見!禍機(カキ)断ちねん!』が入っていたカバン!

 当然ながら、それ以外にもタカトの作ったゴミ……もとい、融合加工の道具が詰め込まれているのだ!

 って、なんでやねん!

 ――え? だって、タカトの奴、せっかく私が部屋を片付けてあげてるのに、ゴミをすてたら怒るんだもん!

 まったく部屋を片付けられないタカト。そのまま放置しておけばゴミ部屋となってしまい、生臭いゴミの間からゴキブリが大量発生してしまいかねないのだ。

 ビン子は、それだけはなんとしても避けたかった。

 だから、タカトがいない間に勝手に部屋の片付けをしていたのである。

 部屋に散らばる無数の道具たち。

 おそらくタカトの奴。作ることが楽しくて、作った後はどうでもいいようなのだ。

 だから、完成しても棚に飾るわけでもなく、その辺に無造作に転がしているのである。

 しかし……どれもこれもよく分からない。

 おそらく何かに使う道具なのだろうが、ビン子にはとんと分からないのだ。

 そのため、床の上に転がる丸めたティッシュとの違いが分からかった。

 要はビン子にとって、それらの道具はゴミにしか見えなかったのである。

 いや、ティッシュの方がタカトの作ったエッチな香りがするだけマシというもの……って、お前は変態か!

 だが、タカトの奴、ティッシュは捨てても怒らないが、道具をゴミとして捨てると激オコなのである。

 ――まぁ、私としてはティッシュの方を残したいわけですけど♡

「ビン子! ふざけるな! あれを作るのにどれだけ時間がかかったと思ってるんだ!」

「一晩?」

 まあ、たいていは一晩寝ると回復しているのは間違いないwww

「あっ! 確か亜鉛を豊富に含む牡蛎などを食べれば速攻に出来上がると聞いたことがあるわ♡ ならば! 牡蛎食えば!(キン)がなるなり放出時!」

「うきぃぃいぃぃいぃ!」

 もう、こうなったタカトは手が付けられない……

 手が付けられないから、仕方なしにカバンの中にしまっておくのである。

 そうするとあら不思議……タカトの記憶から作った道具の存在が消えるのだw

 まさに片付けできない奴のアルアル現象www

 とりあえず使うだろうと思って置いておくと、その後、一生使うことがなかったとしても本人は満足なのである。

 もう、それがどこしまってあろうが、そんなことは関係ない。

 要は捨てるという行為が、ああいった人種にとって禁忌なのである!

 で、仕方なしに搔き集めたゴミ……もとい、タカトの作った融合加工の道具がビン子のカバンの中に納まっていた。

「なんか使える道具ないかしら……」

 ビン子は肩に背負ったバックを下すと中に入っている道具をいろいろと物色し始めた。

 そんな時、カバンの隙間から一本のバナナがこぼれ落ちた。

「うん? バナナ!?」

 それはミニ大根よりも立派なバナナ!

 まさに大人のバナナだった。

 頬を赤らめ熱を帯びた様子のビン子の表情。

 だが、皮がついたままでは食べられない。

 食べるためには皮をむかないとだめなのだ。そんなことはビン子だって知っている。

 だが、このバナナ……どうやって皮をむくのだろう?

 分からない……

 分からないけど、これはタカトが作った融合加工の道具である。

 ならば!

「開血解放!」

 ビン子の指先がバナナを優しく摘み上げると、その先にある棘に押し当てられた。

 流れ出す一滴の血液。

 その瞬間! バナナが!

 なにも変わらなかった……

 ――まあ、いいわ……皮被りでもバナナはバナナよ!

 そんなバナナをゆっくりと……ピンク色の潤んだ唇へと押し当てた。

「かたぁ~い♡」

 だが、それは女の甘い喘ぎ声ではなかった。

 どちらかというと男の小汚いダミ声。

 だが、その声はバナナをしっかりと耳に押し付けないと聞こえないほどの小さな声だった。

 もし、ビン子がこのバナナを下のお口にでも咥えようものなら絶対に聞きとることはできなかっただろう。

 だが、幸いにもビン子は上のお口で咥えようとしたのだ。

 バナナを顔に近づけたことによって、発せられる小さな音をかろうじて聞き取ることができたのである。

 よかったねwwwビン子ちゃん! 

 ――なーんだwwwこのバナナ、咥えるものじゃなかったのねwww

 ちょっと照れ笑いを浮かべるビン子は慌ててバナナを口から耳に当て直した。

 すると、先ほどよりもはっきりとした声が聞こえてきたではないか。

「度し難ーい!」

 なんか……かなりご立腹のようである。

 ――え? もしかして、この声……爺ちゃんの? 

 そう!その声は権蔵のものであった。

 どうやら開血解放されたバナナは、遠くに離れている権蔵の声を拾っているようだった。

「あのドアホが! 一体どこまで行ったんじゃ。小一時間経っても帰ってきやせん。また、さぼっておるにちがいない! 本当に度し難い奴じゃ!」

 バナナから権蔵の『不満のぼやき』が聞こえてくる。

 そう! このバナナ!ただのバナナではない!

 まして、女の人が性欲を発散するためのバナナでもない!

 何を隠そうこのバナナ!タカトが融合加工した『恋バナナの耳』だったのだ!

 恋バナナの耳……それはこの前、タカトが融合加工の道具コンテストに出品しようとしたイチモツ!

 タカト曰く、このバナナを耳につけると、遠くにいる女の子の恋話を盗み聞きすることができるという優れものだったらしいのだ……

 だが、実際には……

 恋バナというより……すさんだ花……

 不平や不満、嫉妬や怒りといった負の感情のみを拾うのだ。

 まるで使い物にならないwww

 しかし、驚くべきはその範囲。

 そんじょそこらの収音機なんかよりも広範囲の音を拾える。

 たとえ障害物があったとしても、その音源を確実にキャッチできるのだ。

 そう考えると、この『恋バナナの耳』は優れている。

 だが、タカトにとって知りたいのは女の子の恋バナであってジジイの糞バナではない!

「こんなのいらね!」

 ということで、めでたくビン子のカバンの中へとお蔵入りしたのだwwww

 しかし! 今!それが役に立つ!

 森で行く道を見失ったビン子!

 『恋バナナの耳』から聞こえる権蔵の声が大きくなる方向へとひた走りだした。

「じいちゃぁぁぁぁぁぁあん!」





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