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君は誰だ……

 ガコーン!

 何もない夜空に突然、大きな音が響く。

 それは大きな時計台の歯車が回るかのような音。

 それとともに僅かに揺れる夜空の空間。

 歪みの中におぼろげながら巨大な門の姿が浮かびあがる。

 その高さ……ゆうに60階建てのビル以上。

 その門を取り囲むかのように8つの鍵穴が見て取れた。

 そんな頂点部分の鍵穴から、突然七色の光が一つパッと光ると水平線を引いて飛びだした!

 ――もしかして、ここにきてフィーバーか!

 先程まで打ちひしがれていた高斗(タカト)の眼はその光景にくぎ付けになった。

 だが、その光は重力に引かれ弧を描きだす。

 そして、徐々に輝きを失い始めて落ちていく。

 しかし、タカトの眼はしっかりと見ていた。

 その落ちていく光の正体を。

 それは、一人の少女……七色の髪をした女の子……

 まるで狙いすましたかのように高斗(タカト)に向かって落ちてくる。

 高斗(タカト)は受け止めようと手を伸ばす。

 人一人分の質量。しかも、この重力加速度を考慮すれば到底受け止められる訳はない。

 それどころか、衝突の衝撃に巻き込まれれば即死ものである。

 そんなことは技術者である高斗(タカト)には理解できていた。

 だが、それでも手を伸ばさずにいられなかったのだ。

 その少女に向かって。


 落ちてくる少女の顔がはっきりと高斗(タカト)の眼に映る。

 それは、まるでスローモーションでもみるかのようにハッキリと……

 幼いながららも大人びた顔の輪郭。

 猫のような緑の眼。その切れ長な瞳には強い信念を宿しているのだろう。

 ひときわ目を引く妖艶なピンクの唇はきっと甘く美しい音色を奏でるに違いない。

 背後に見える長い七色の髪……それは、まるでアイドルの衣装、いや!天から舞い降りる天使の羽のように美しいではないか。

 高斗(タカト)の眼は大きく見開かれていた。

 ――君は誰だ……

 高斗(タカト)が伸ばす指先。

 その指先が少女の頬に触れた瞬間!


 少女は消えた。


 そう、まるで霧にでも触れたかのようにスッと消えたのだ。

 そのあとには、もう、何も残っていない。

 先ほどまで見えていたあの巨大な門すらも既に消えてなくなっていた。


 それからだ……不審な殺人事件が発生し始めたのは。

 ――おそらく、あの少女がかかわっているに違いない。

 公園通りを一人歩く高斗(タカト)は思う。

 だが、発生する殺人事件があの少女の犯行のようにも思えないのだ。

 いや、EBE(地球外生命体)であれば、地球人の命など石ころと同程度。

 人殺しに是非など関係ない。

 しかし……

 ――あの時、落ちてきた君は泣いていた……

 高斗(タカト)には、はっきりと見えていた。

 緑の瞳にたたえられた涙があふれ出すさまを……

 そして、ハッキリと聞こえたのだ、「タ・ス・ケ・テ……」と

 ――そんな彼女が人を殺す?

 思えない! 到底、そんなことをするとは思えない。

 もしかしたら高斗(タカト)自身が、そう思いたくはなかっただけなのかもしれない。

 ――君はどこだ……


(というかwwwwここはどこだ?)

 先ほどから見るものすべてが興味深いタカト君。

 あいかわらず体は動かせないままなのだが、それでも視界に映る光景だけでも十分興奮できていた。

(なんだ?なんだ! 光る眼がこちらに向かって走ってくるぞ! もしかして魔物なのか? だが、目の色は緑じゃなくて白?だよな……というか、まぶしい!)

「ぼけ! ハイビームだと眩しいだろうが! このクソ猿が!」

 高斗(タカト)は走り抜けていくヤンキー車、通称ヤン(しゃ)に向かって怒鳴り声をあげた。

 それを意識の中で聞くタカトは、

(ほほう……あれはハイビームという名の魔物なのか……というか、この世界の魔物は目が白なんだな……)

 だが、怒鳴った相手が悪かった……

(なに! 今度の眼は赤色! もしかして、荒神だったとか?)

 そう、タカトの世界では魔物の眼の色は緑色。神の眼の色は金色と決まっていた。

 そして、その神が生気を使い果たし荒神に変わるとき目の色は赤に染まるのだ。

 だが、ここはタカトのいた世界とは違う……

 というのも、先ほどのヤン車が高斗(タカト)の目の前で急ブレーキを踏んだだけのことなのだ。

 夜道に鳴り響く甲高いブレーキ音。

 ききっー!

 タダでさえ低い車高がさらに低くなりテールランプ赤く光らせていた。

 そして、降りてきたのは……

「うっきっきー!」

 顔を真っ赤にした猿……もとい、二人組の絶滅危惧種並みのヤンキーだったwww

 それはもうレッドブックに掲載してもいいぐらいのリーゼント頭にサングラス。

 だが、そのヤンキーたちの顔つきは、少々奇妙であった。

 顔の横まで広がった大きな口に全面出っ歯! しかも、リーゼントのくせに髪の毛が逆立っているのだwwww何のためのリーゼントやねんwwww

 で、もう一人はというと……身長に対して異常にでかい顔。しかも、野球のホームベースのような形をしていたのだ。そして、何よりも目を引くのはその顔には眉毛がないのだ! もう、極道かと思うぐらいツンツルてん! サングラスの上からでもはっきりとわかる。

 こいつら……一見すると奇妙な顔つき……奇面? いや、鬼面と言った方がいいのか。

 だが、いかに鬼面なヤンキーであってもヤンキーはヤンキーに違いないwwww

 当然……ひ弱なタカト君ではかなわない。

 だって、タカトの人生で喧嘩というものに一度として勝ったことがないのだから無理というもの。

 しかし……よくよく考えてみると……

 今は陸自の3曹、高斗(タカト)君だったか。

 しかも、茂武(もぶ)にもらった(?)『超振動チタンブレード』まで持っているのだ。

 まさに!鬼に金棒! 

 やりたい放題!

 ヤンキーごとき!瞬殺モノである!瞬殺!

 だがしかし……

 残念ながら……ここは日本……

 ヤンキーだろうが原始人だろうが二足歩行をする以上、人権というモノが存在する。

 すなわち、殺せば殺人罪!

 しかも、高斗(タカト)の立場的にそれだけでは済まない。

 おそらく、ここで彼らを血祭りにあげれば、茂武(もぶ)敏子(としこ)も責任を取らされるに違いないのだ。

 そうなれば……

 鬼と化した二人組に高斗(タカト)が血祭りにされるのは火を見るよりも明らかであった。

 だからこそ! 賢い公務員というものは争いごとに首を突っ込まない!

 それが鉄則!この世の(ことわり)! 絶対のルールなのだ!

 ということで、高斗(タカト)は素知らぬ顔で二人の脇を通り抜けようとした。


 しかし、そんな高斗(タカト)の肩を二人組がガッツリと掴むのだ。

「オイゴルァや! ケツの穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたろかいヤ!」

「お前の頭シュコーン!と割ってストローで脳みそチューチュー吸うたろかシュ!」 

 と、すごむ二人組に

(こええええええええええ!)

 意識の中のタカト君はビビりまくりwwww

 もう、ションベン漏らしそうなぐらい怯えていた。 あっ! 体は高斗(タカト)だから、いくらタカトがビビってもションベンなんて漏れないんだけどねwww

 よかったじゃん! タカト君! 漏らさなくてwwww

 でもって、当の高斗(タカト)は余裕の様子で鼻で笑っていた。

「フwww お前ら、吉本かよwwww」


「馬鹿かいや! 俺たちが吉本なわけあるかいや!」

「そうしゅ! 我らは吉本などではないっしゅ!」

 唾をまき散らせながら反論する鬼面組ヤンキー。

 それを手で払いながら高斗(タカト)はお約束どおりツッコんだ!

「だったら、お前らは一体何なんだよ!」

 待ってましたとばかりに鬼面組たちはサッと後ろにはねとんだ。

 そして、二人はそれぞれ訳の分からぬポーズをとったのだ!


「そう!我ら三人!」

「黒い三年生!」

 ………


 その様子をポカンと見る高斗(タカト)

 ――うん? なんか……セリフが途中で切れてない?

 語呂から言うと……三年生の後に何か別のセリフが続くような気がするんですよ……

 というか、3人?

「お前ら! どう見ても2人だろうが!」

 高斗(タカト)の言葉に鬼面組のヤンキーたちは何かに気づいたようだ。

「しまったやぁぁぁぁぁ!」

「オレテガがまだこっちに来てなかったしゅ!」

 オレテガ?

 どうやら、もう一人の仲間がいるようだ……

 ということは、最後の一人がキメのセリフを叫ぶ予定だったのだろうwww

 って、オレテガってwww

 ――黒い三連星のパクリかよwwww

「なら、お前たちは大方、ガイア、マッシュに近い名前ってとこかwww」

「なぜ分かったや! ちっ!仕方ないや! 我らの正体を知られた以上、こいつを生かしておくわけにはいかないや! 行くや!シュッセイ=C(シー)=マッシュ!」

 と、眉毛なしの巨大顔面が大声で命令した。

「アホか! お前らが勝手に名乗っただけだろうが! しかも、最後までちゃんと名のれてないだろう!」

 高斗(タカト)の激しいツッコミ!

 というか……当然の反応。

 だがしかし! そんなことは鬼面組の面々には関係ない!

「ガイヤ!『オーライ』しゅ! お前の脳みそ!吸わせろしゅ!」

 と、ツンツン頭の出っ歯野郎、もといマッシュと呼ばれた男が飛び出した。

 だが、驚くべきはそのスピード!

「とらん!ザム!しゅ!」

 赤みを帯びた体が高斗(タカト)との間合いを瞬時に詰める!

 飛び散る赤き血しぶき。

 高斗(タカト)の頬がマッシュの手刀によって切り裂かれていた。

 だが!間一髪!

 高斗(タカト)は咄嗟に身をよじって直撃を避けた。とてもタカトにはできない芸当である。

 頬から垂れる血をゴシゴシと拭き終わると高斗(タカト)は胸ポケットからスマホ型のカメラを取り出した。

 画面に映る人型の映像。

「やっぱり……お前ら……人間じゃなかったかよ……」

 対象が人であれば白き影が映るはず。だが、画面に映るは緑色。

 それは明らかに人以外の存在を表していた。

(というか……これ……『モモクリ発見!禍機(カキ)断ちねん!』と同じ原理じゃねえか!)

 意識の中のタカトは驚いた。

 そう、タカトの作った『モモクリ発見!禍機(カキ)断ちねん!』は、全ての物質が根源的に持っている命気を映し出すのだ。

 人であれば人の命気。

 石であれば石の命気。

 だから、どんなにグラマーな女性であったとしても、身に着けているものが作り物のモモや偽栗であれば、人の体とは違う命気を発するのである。

 タカトは、これを使って偽乳を見つけようとしたのだが……

 よくよく考えれば、魔物であれば魔物の命気をもっている。

 ならば、人以外のものを見分けることだって可能ってわけだ。


 ――しかし、どこからどう見ても人にしか見えないな……こいつら……

 まぁ、見た目は若干おかしいが、人だと言われれば人に見えてしまうwww

 おそらく、人を模した形というよりも、人に近しい形と言ったところ。

 おおかた、体温も人に近いのだろう。

 

 そんな眉毛なしの巨大顔面、もとい、ガイヤは腰に手を当て大きく笑っていた。

「はははははや! そうや! 我ら!アダム様の8人の従者の一人!」

「そんなこと聞いてないわ! といか!アダムってだれの事だよ!」

 と、高斗(タカト)は自分の知っている知識を整理する。

 ――もしかして、旧約聖書のあれか! エデンを追い出されたアイツの事か?

 だが、それは逸話の中の話。本当にいるとは思えない。

 いるとは到底思えないのだが、目の前にEBE(地球外生命体)がいる以上、アダムが存在する可能性も想定しないといけない。

 ――今できること……

 なにも手掛かりのない高斗(タカト)。いや、茂武(もぶ)をはじめとして誰もまだ情報を持ち得ていないのだ。

 それが、目の前で馬鹿のようにしゃべる男がいる。

 チャンス!

 とばかりに、

「そのアダム様が、この地球に何の用なんだ……」 

 いまだ笑い続けるガイヤは悪気もなく答える。

「別に用などないやwww」

「……用などない?」

 ならば、こいつらはなぜここにいる?

 もしかして、宇宙で漂流して、この地球に迷いついたのか?

「もしかして……お前ら迷子かwwwぷっwww」

 まるで馬鹿にでもするかのように高斗(タカト)は、わざと挑発した。

 ――あまりにも情報が足りなすぎる。

 だが、ガイヤは顔を真っ赤にしながら反論するのだ。

「うきー! 誰が!迷子や! 別に迷子になんかなっとらへんや!」

「そうっしゅ! アダム様の命令で無理やりここに送り込まれただけっしゅ!」

 しかし、よくしゃべる奴らだ。

 ――ならば、このまま勝手にしゃべらせるまで!

「アダムって奴は上官か? しかし、無理やりってwwwwひどいなぁwwww」

「仕方ないや……仲間の一人が脱走したんや……」

「そうっしゅ! あのクソ女! 門を開ける前に逃げおったしゅ!」

 門? 

 どこかで見たことがあるような……

 ――そうか! あの門か!

 七色の髪の女が空から降ってきた時、わずかに見えた大きな門。

 目の前の男たちといい……異質な存在同士……大方、あの門の事で間違いないだろう。

 しかし……コイツら……あの門を開けるつもりなのか?

「というか、お前ら、門を開けてどうするつもりなんだ?」

「そんなこと決まっているや! 門を通るだけや!」

「は? 門を通る? あの門……通れるのか?」

「ぷっwwwwコイツwww馬鹿でしゅ! 門なんだから通れるに決まってるでしゅwww」

「いや、そういう意味ではなくて、通れるということは、あの門の裏側はどこかにつながっているってことだよな」

「当然しゅ! 我らの世界、魔人世界とつながっているっしゅwww」

 魔人世界? 聞いたことがない。

 おそらく、この地球とは別の世界……異次元? いや、もしかしたらパラレル世界?

 何でもいい! その世界とこの地球をつなげるのが、あの門の役割。

 そして、アダムという存在が門をくぐってこの世界にやってくる。

 ――だが……ならば、なぜ、コイツらはこんなところにいるんだ?

「で、お前らは何をしてんだ?」

「聞いてくれっしゅ! 上官の女が逃げたんしゅよ!」

「そうなんや……鍵を開けたと思ったら、いきなり、こっちの世界に逃げ込んだんや!」

 上官の女?

 門の話があの時の門であるならば……

 ――女というのは七色の髪をした女の事か?

「あの女のせいや! あの女のせいで、俺たちがこんな目に会わんといけなくなったんや!」

「あの女! 見つけたらぶち殺してやるっしゅ!」

 ――とにかく、コイツら、七色の髪の女とやらを探しているという理解でいいようだ。

 しかし、まだ、情報が足りない……

 あの女のことも、アダムの事も、そして、コイツらのことも……何もかも。

「分かるわwwwその気持ちwww俺の上官の女もひどいやつでなwwww」

 高斗(タカト)のやつ、話を合わすつもりか?

 いや、高斗(タカト)がマジでそう思うのは仕方がないことだったのだ。

 上官の女、そう、それは先ほど会った敏子の事。

 高斗(タカト)は敏子に対して不満どころか怨念にも近い恨みを持っていたのだ。



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