再会
私は尼崎のアパートに戻って、理緒と二人で暮らし始めた。
色々なところへ散歩に出た。
クリスマスが近くなると、街はイルミネーションできらきらと明るくなる。
私は夜型だから、理緒を早く寝かせる気にもなれず、外が暗くなっても連れて歩いた。
時々、電車に乗って芦屋の辺りにも足を伸ばした。
芦屋に住んでいた頃、瑠璃とあまり外を歩こうとせず、家に引きこもっていたのを今でも悔やんでいる。
理緒を連れて歩くことで、瑠璃に何が伝わるなんて訳はない。
それでも、ここをもっと歩きたかったなぁ、ここも、などと思いながら懺悔するかのように歩いた。
何てこともないような道の横に走っているJR神戸線だって、すぐ側の線路沿いが小高くて見晴らしがいい。
線路が広く並んでいるのを見渡せて気持ちいい。
時々電車が轟音を立てて通り過ぎる。それだけで本当に、すごい迫力だ。
ひたすら歩いていくと、この辺りで一番華やかなショッピングモール、阪急西宮ガーデンズが目に入った。
西宮ガーデンズの周りに並ぶ街路樹が、控えめなイルミネーションに彩られている。
引き寄せられるようにガーデンズへ入った。
「見て理緒、綺麗だねぇ」
エントランスに入るとすぐに、大きなクリスマスツリーが出迎えてくれる。
吹き抜けの広いエントランスで、煌めくクリスマスツリーを見上げた。
人が行き交う中、抱っこ紐に理緒を抱えてクリスマスツリーに見惚れていると、不意にポンポンと肩を叩かれた。
「………………⁈」
「久しぶり」
振り返ると、そこにタカオカさんがいた。
タカオカさんの目線が、抱っこ紐の中の理緒に移る。立ち話のままで喋った。
「……この子です」
「この子が俺の子ども?」
「はい。……女の子です」
「名前は?」
「理緒」
「りお? どんな字を書くの?」
「理性の理に、情緒の緒」
「……いい名前だね」
「…………ありがとうございます」
2人とも、少し黙った。理緒がふえん、ふえんと泣き始める。まだ小さな理緒の泣き声は、すごく小さくて可愛いものだと感じる。
理緒を少し揺らしながら、ガーデンズの中へ向かって歩き始めた。タカオカさんが軽く制する。
「どこ行くの? レストラン行くんなら、上に行こう」
タカオカさんとエスカレーターに乗る。クリスマスツリーの真横に差し掛かる。理緒は泣き止んだ。
「ガーデンズには、時々来るんですか?」
「買い物には来ないよ。売り方とか面白いから、たまに見に来るけどね」
「あぁ、市場調査みたいな?」
「そうそう、市場調査みたいな」
久しぶりに会って少しぎこちない。気を遣って普通に話してしまう。
明るい吹き抜けの中をゆっくりと、エスカレーターで登っていく。大きなクリスマスツリーを振り返って眺めるふりをしながら、タカオカさんの横顔を盗み見た。
その時のタカオカさんは、少し上背が高く見えるような気がした。
(了)




