転勤
瑠璃が風邪をひいてしまった。今日はお昼にタカオカさんと会って話す予定だったのに。幼稚園に預けることができない。
ドタキャンするしかない。タカオカさんは嫌がるだろうな……
「娘が熱を出してしまいました。本当に申し訳ありませんが、今日は行けません」
LINEを送ってほどなくすると既読がついた。返信は来ない。既読スルーでも仕方ない、と自分に言い聞かせる。
(怒ってるだろうな……)
タカオカさんは自分が最優先にされていないと、不機嫌になって怒る。
でも仕方ない。瑠璃が熱を出したらどうしようもない。
瑠璃は熱を出しても、ぐったり寝込むことはない。日頃が元気すぎるから、かえって丁度良いくらいに思える。声の大きさも悪戯の度合いも程々になって、熱を出した瑠璃は普通になる。
撮り溜めていたEテレを一緒に見てのんびりしたり、ご飯をだらだら食べたりしながら過ごした。週末にまとめ買いした食材を冷蔵庫からちょっとずつ取り出してつまむ。
本当は今日、タカオカさんに訊いてみるつもりだった。
(子どもができました。タカオカさんは嬉しいですか?)
そう訊きたかった。
喜んでくれたら産むと決めていた。もし喜んでくれなかったら? それはまだ、どうしても決められない。
風邪ひきの瑠璃とのんびり過ごして、夜になると寛さんが帰宅した。
「ただいま」
「おかえり。お疲れさま」
「転勤が決まったよ」
「え? 転勤?」
「うん、千葉に転勤になる。僕はもう来月頭から」
「早いね……」
「みなみと瑠璃の引っ越しは一ヶ月遅らせようか。瑠璃は今の幼稚園が気に入ってるから。お遊戯会は楽しみにしてたからさ、終わらせた方がいいんじゃない」
「確かにね……」
頭が混乱して、まとまらない。




