可能性を見てみたい
みなみさんは面白い。打てば響く。どれだけ響くのか試してみたくなる。発想が独特で常識に全く囚われていない。離婚も選択肢に考えているだろう。
みなみさんが苦悶する姿が見たい。
だからあえて避妊しなかった。
孕むかどうかは知らないが、悩むだけでも悪くはない。みなみさんが自分で考えた結論を見たい。
俺を口説くなら、離婚してからやればいいと思う。
そういえば「タカオカさんは優しい人だと思います」なんて言われたことがあった。
「自分のことを一番大事にしなさい、って言えるタカオカさんは、優しい人ですよね」
そんなことを言われた記憶がある。
俺は優しくはない。自分が優しいなんて、思ったこともない。面白くもない人間、役に立たない人間は切り捨てる。今までもそうしてきたし、これからも変わらない。
みなみさんは賢そうにも見えるが、やはり愚かだ。
愚かにこのまま堕ちていくのか、何かを掴み取って這い上がるのか。
それを見たい。
この強い興味が好意だとすれば、そうかもしれない。惹きつけられているのは確かだ。
俺に言わせるな、好きなら俺を口説き落としてみろ…………そういう健気な姿を見たい。
みなみさんから来るLINEは楽しい。俺のツイートをよく読んでよく覚えていて質問してくる。あの記憶力は空恐ろしい。
みなみさんは好みが渋い。古典的なものに反応する。俺が時々アップする絵でも、日本画風に筆で描いたら喜んでいた。小説風に描写したツイートにも甚く喜んだものだった。
気を遣っているのは分かるが、あの気の遣いようには才を感じる。返信で喜ばせてみたくなる。
みなみさんはあまり自覚していないようだが、野心的だ。才能の有無に強い拘りを見せる。女性だとあまり見ないタイプだ。
努力を積み上げて結果を出し、妥当な評価を受けても、あまり喜んでいない。ピアノをやっていた影響だろうか。謙虚にも見えるのだが、不遜なプライドがある。
「みなみさんは世界初の存在になるかもしれないね」
LINEにこう書いた時、みなみさんはどんな顔をしていただろうか。送信と同時に既読がついた。
「え、どこが世界初なんですか?」
「それは追々《おいおい》また話すよ」
世界で初めてのレベルで、独創的な表現をしたいんだろうと思う。
それが決して無謀な試みではなく、みなみさんならやれるかもしれないと思わせる鬼才を感じさせる。
だが、その日のLINEはいつもと様子が違った。
「お話ししたいことがあるんですが、お時間とれませんか?」
思い詰めるみなみさんが目に浮かぶようなLINEだった。




