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非日常への誘い


 ……何ともまぁ、ありふれた日常である。


 朝は起きたら身だしなみを整え朝食をとり学校へ、着いてからは勉強をして昼食をとって放課後は帰って友達と遊ぶ。帰ったら妹に叱られて……そんな当たり前の日常に俺は嫌気がさしつつあった。

 が、正直変えるつもりもないしそんな気力もない。別にクラスカーストで下の方にいるわけでもないし、友達は割といる。妹は……まぁ、結構な問題児だが、それでも大切な妹だ。だからまぁ、正直心のどこかではこのまま何も起こらないことをただひたすら願っていたのかもしれない。


 ちょくちょく髪の毛が入っていることさえ除けば地味に旨い妹の朝ご飯を食べきりつつ、今日も家から逃げるように学校へと向かう。

 授業は割と難しいが、何とかついていけている。給食はうまい。


 毎日変わる話題をいつも通り友人と語り合いながら今日も帰宅路につく。家に着くまでの時間帯だって今日も何事もなかった。


 家に帰ったころ妹は……やはりこの時間帯になるといつも通り変な薬を調合している。

「……ふふふっ、兄さんへの惚れクスr」あっ爆発した……。何やってんだアイツ……。


 ……だが、そんな平凡……とは言えないが、悪くないそこそこな日常はあっけなく……あっけなく? まぁいい、終わりを迎えた。その日、窓が大きな音を立てて開けられる音で俺は目を覚ました。時間は夜中の12時くらいだったか、寝てた俺には一瞬なんなのか分からなかったがすぐに分かった、そう、誰かが部屋に入ってきたのだ。俺は驚いて飛び起き、部屋の電気を点ける……。


「……みーっちゃったー♪」


 ……までもなかった。淡い青色の灯がこちらを照らしている。その焔は、俺の視線を釘付けにしやがて足を炎へと向かわせていった。

 本能が足を進ませ、意識を足に向けてもその灯火は足を操り炎へと向かわせる。


 まるで、それは哀れな蛾を終わりへと誘うような。妙に神秘的な光景だった。


 近くにいるのは、淡い水色の光に照らされる限りでは美しい水色をした髪の少女だ。しかし、ところどころその肉体の形状は人とは思えないほど凶悪な形状となっており、それは明確に彼女が人ならざる者という証明となっていた。


 死へと勝手に近づく自らの足を恐れつつも、現実は非情ながら熱は段々とソレに近づくたびに増していく。


「……あははっ、そのまま焼け死んじゃいな? アンタの精気多そうだから、さっさと殺させてよ♪」

「……っ」


 心底楽しそうに馬鹿にしたその言葉に、逆らうことのできない自らの両足。

 ……本来なら、ここで恐怖の言葉を口から叫びながらそのまま焔に身を焼かれていたかもしれない。

 実際、俺はただの人間だ。どこぞのライトノベルのようにスキルや魔法なんて持っていないし、それどころか頭脳面ではテストであまり良い点数を取ることなんてできちゃいない。


 ……しかし、足を半分以上進め彼女とちょうどすれ違ったタイミング。俺の感情は、突然沸点へと達した。


「うるせぇ!! お前が突っ込めクソ野郎!!!」

「――え? っぁ……!?」


 油断していたこぶしを思いっきりぶち込み、青く光っていた焔に彼女を殴り飛ばす。無論、ヤンキー漫画のような威力などは出ないが……小柄な少女がそこそこ大柄な学生に殴り飛ばされたとしたら、それは結構な距離を吹き飛ばされてもおかしくないだろう。案の定、彼女の体は焔へと突っ込み突然悲鳴を上げだした。


「……っ、ぅう……ひっど……」

「……なぁ、どの口が言ってんだ?」


 焔は消えるが、彼女の体は少し火傷が残ったらしく結構な涙目になりながらも立ち上がろうとする。その姿を見た俺は無意識的に彼女へまた近づいていくと……そのまま拳を構え……躊躇なく振り下ろした。何度も。何度も何度も……。


「ぐぁ!?」

「あのっ、ちょっ!」


 ……殴っている途中、どうにも幼い印象を受ける彼女の顔つきに思わず若干罪悪感を覚えるも、それでもこの衝動を抑えることはできなかったらしく自らのこぶしは殴り過ぎで若干赤くなっていた。

 

 ……まぁ、そろそろ言っておこう。


 俺は昔から、ウザいと思ったやつをひたすらにぶん殴りたくなる謎の衝動を抱えている。原因は……完全にはわかっていないが、脳の異常らしい。基本は妹がよっぽどやらかさない限りは手を出すことはないのだが……たまに自分でもよくわかってないまま、手を出すことがあるのでそこは個人的にも気にしている。


「……こんな……はずじゃ……」


 小さく呟く彼女だが、その視線にはいまだに恨みがこもっていた。……だがまぁ正直な話、俺にとっては「ざまぁ」というやつである。というか、俺の妹が作っていたよく分からない薬(というか媚●)を原液そのままですべて飲み干してもらうよりは100倍マシだと思う。……そういやアイツ、間違えて俺に飲ませるつもりのものを自分で飲んで1回自爆してたなぁ。


「……ふ、ざけ、るな……ふざけ……ひっ」

「……やり過ぎたなやっぱ」


 握った拳を見せるだけで怯える彼女、その目の前で呟いたその言葉は今宵の空に消えていく。しかし、これは序章に過ぎないことを……俺は、なんとなく察してしまっていたのだった。

面白かったらブクマだけでもしていってもらえると嬉しいっす

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