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アミの思惑 (★アミ視点)


「さっ、最近、調子はどうだい」


「うーん、センセーのお陰で、じゅんちょー」


あたしの返答にクラテス先生が弱々しく笑った。本人は笑顔のつもりなのだろうけど、全然笑えていない。おまけに、会う度ごとに顔色がどんどん悪くなっていっている。


「センセーこそだいじょーぶ? 顔色、滅茶苦茶悪いよ」


「はははっ、担当患者に心配されたら、お終いだな」


センセーがきまり悪そうに言った。


センセーはあたしの主治医だ。

あたしは、ある時から学校に行けなくなった。よく有る人間カンケーてやつだ。心配した周りがセンセーを探してきた。こんな見た目でも、とても有名な先生らしい。


センセーはあたしに、無理強いをしなかった。


「君の好きな時に、来たらいい」


数回カウンセリングしたのち、センセーはそう言った。


それからは好きな時にここを尋ねて、テキトーに話して帰る、そんな日々が続いた。センセーは、テキトーに相槌を打つだけだった。

何故だか、それがとても心地よかった。


あたしは、ここに入り浸るようになった。センセーに話を聴いてもらって、居ないときは、看護師さんと女子トークをして、たまに、勉強をみて貰って、心が少しずつ癒されていった。

結局、ガッコーには行けてないけど、バイトを始めたりして新しい友達もできた。


「何かあるなら、アタシが相談にのるよ」


疲れているセンセーが心配だ。


「……こっ、これを、応接室に寝ている黒い髪の男の子に、飲ませてくれ」


センセーが、震える手で白い錠剤を差し出す。


「これは何? 」


「……精神安定剤だ」


「なんで、センセーが飲ませないの」


「……彼は薬嫌いなんだ。気付かれないように、そっと飲ませてやってくれ」


センセーの目が泳いでる。

これは飲ませちゃいけないヤツなんだ。


「わかった。あたしに任せて! 」


笑顔でいい、錠剤を受け取った。

何でもないことを、引き受けるみたいに。


軽い挨拶をして、部屋を後にした。扉が閉まる寸前、センセーが安堵の溜息をついたのが聞こえた。


廊下にある椅子に腰を下ろす。

応接室からは、ここを通らないと外へは出られない。だから、ここで待つことにした。


センセーの依頼を受けたのには、2つ理由がある。1つはセンセーのため。あたしが辛い時、センセーが助けてくれた。今度は、あたしが助ける番だ。

そして、もう1つが例の男の子に興味が湧いため。実は先程、トイレの帰りに応接室で眠る男の子を偶然見つけていた。たぶん歳上であろう彼は、黒髪に端正な顔立ちだった。この世界では中々、黒髪男子には出会えない。


きっと、何か裏があるはずだ。

センセーの為にも、彼とのデートを楽しむことに決めた。

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