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旅は道連れ


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ! 」


「博士、いい加減五月蝿いです」


赤翔馬(せきとば)を着地させながら、俺は言った。博士はマゼンタ王国をたってから、ずーーっとこの調子だった。これ以上、耐えられそうもないので、休憩することにした。木に手網を結びつける。博士は木陰に倒れ込み、そのまま動かなくなった。


ラキノン王にエロー学術都市行きを伝えると、愛馬・赤翔馬(せきとば)を貸してくれることになったのだ。赤翔馬(せきとば)は、伝説に違わぬ名馬だった。


ただし、俺達は一刻をあらそう。

そこで、翼を授けることにしたのだ。


「そんなことが、できるのか」


俺の提案に、博士が目をキラキラと輝かせながら呟いた。

首元に手をそっと手を添え、色素(ピグメント)を流し込んでいく。博士が興味津々にのぞきこんできた。俺の手元を起点として、五角形縦長の翼が出現する。

あとはこれで、赤翔馬(せきとば)さんが飛ぶ練習をするのみだ。そこで、はたと思い当たった。


……俺達、乗ったままじゃね……


……かといって、降りたらどっか行っちゃいそうだし……


止める間もなく、嬉しそうに駆け出した。


「「あぁぁぁぁぁぁぁァァァあああああっ!!

」」


まさか、俺達自ら出発のサイレンを奏でることになろうとは、夢にも思わなかった。





必死にしがみつく事数時間、やっと安定して飛べるようになった。

当初のルートからは大幅に逸脱し、チタニア教帝領に近づいていた。心身ともに疲弊した俺達は、教帝領で休息させてもらうことにした。結局、教帝聖下のご好意に甘え、一泊させてもらった挙句、食事までごちそうになった。


そして、朝一で見送られ、現在にいたるというわけだ。

死にそうな博士曰く、あと数時間でエロー学術都市に着くらしい。


「博士、そろそろ出発しますよ」


「やだー」


「じゃー、先に行ってますね」


そう言いつつ、赤翔馬(せきとば)に飛び乗ると、博士がノロノロと動き始めた。

そして、俺の後ろに跨る。


「それじゃー、いきますよー」


俺は勢いよく手網を引いた。赤翔馬(せきとば)が空中に駆け上がる。


「まっ、まって、まだ、こころのじゅん、びゃあぁぁぁぁぁぁぁぁああ! 」


博士の気持ちとは裏腹に、出発のサイレンが辺りに轟いた。





開けた平原の先に、広大な城塞都市が見えていた。城門では入門検査が行われており、人々の行列が出来ている。


学術都市が近づいてきたため、数キロ前から赤翔馬(せきとば)を走らせていた。地に足がつくと、見る見るうちに、博士が輝きだした。


「ピロルくん、ここら辺で準備をしよう」


博士が楽しそうに、組み立て式の籠を作り始めた。三角柱を横にしたような構造で、上部に持ち手があった。三角の面が開閉式になっており、開け放たれている。


「さっ、中に入って」


「なっ! いやですよ。そんな、ペットみたいなの」


満面の笑みで促してくる博士に、全力で拒否する俺。形成逆転と言わんばかりの笑顔が、妙に癪にさわる。


「入らないと……」


「入らないと? 」


「まず、身体検査」


「……身体検査」


「次に、病期の検査」


「…………病気の検査」


「そして、去勢手術」


「ひっ!? 」


思わず、股間を抑えて飛び上がってしまった。


「それじゃー、いくよー」


俺はシブシブ動いた。

そして、カゴの中へ収まる。


博士が勢いよく扉を閉めた。籠が空中に舞い上がる。


「はっ、博士っ、かごをっ、わざと振り回すっ、ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ! 」


出発のサイレンに背を押され、博士が意気揚々と赤翔馬(せきとば)を走らせた。

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