蛇の離脱 (★蛇視点)
「これでも、くらいやがれっ! 」
俺様は自慢の赤毒を、黒龍目掛けて噴射した。
ほぼ同時に、黒炎が此方へ放たれる。緑龍をも倒した必殺技だ。あんなチンケな炎など瞬殺だぜ。
深紅と漆黒が直線上で激突する。
「!? 」
俺様目掛け、黒炎が駆け上がってきやがった。激しい蒸発音とともに、赤毒が一瞬で飲み込まれる。それでもなお、炎は勢いをゆるめねぇ。
慌てて、体を低くし回避した。黒龍が体制を変え追撃してきやがる。そのまま、懐に飛び込み黒竜の首に噛み付いた。
奴は俺様を振り払おうと、暴れ回る。
(ドン・スネーク、きこえるか)
イラだっている俺様をさらに、不快にする声が、頭の中で流れた。
テキトー返すと、ピロルの奴が石化の可否について聞いてきやがった。
(出来るっちゃあ、出来るが……な)
石化後の無様な姿を思い浮かべながら答えた。あんな弱っちぃ姿を戦場で見せたくねぇ。
(黒龍は動きを封じるしか、倒す術がない。やってみてくれ)
俺様のことなどお構い無しに言いやがる。
(仕方ねえなぁ。絶対、俺様の方を向くんじゃねーぞ)
再度念を押して、渋々受けてやった。このままだと、拉致があかねぇからな。
ピロルの野郎が作戦を簡潔に伝え、合図をだした。
黒竜をなぎ倒し、素早く距離を取った。
三者の動きに惑わされ、一瞬、黒竜の動きが止まった。
即座に石化を開始した。
眼に色素を集め、照準をあわせる。奴が足元から石化しだした。徐々に広がっていき、首の付け根まで達する。
俺様が本気をだせば、こんなもんよ。
「あっ、不味い……」
思わず、呟いてしまった。
それまで赤く見えていた世界が、色彩を取り戻す。体もどんどん小さくなり、力が抜けていった。
ピロル野郎がチラリと見やがった。
てめぇ、こっち向くなっつっただろーが!心の中で絶叫しながら、草むらに飛び込んだ。
ピロルがギャーギャー騒いでいるのが聞こえた。俺様の凄さを目の当たりにして、騒いでんだろう。
ゴゴゴゴー、バリッ、バリッ、ゴゴゴゴゴー!
平野に轟音が響き渡った。
頑張っているようだ。
まぁ、俺様があそこまで追い込んでやったんだ。後は楽しょーだろ。寝ながら待つことにした。
暫くして、あんなに騒がしかったのが嘘のように、静寂に包まれた。首をもちあげると、ピロルの野郎がヘタレこんでいた。
たいしたことねーな。
俺様は早々にポケットで休むことにした。




