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遭遇

再度言おう。俺は仮にも心は男子大学生である。宙ずりされる魂ではないのだ…。


半場あきらめにも近い心境で、冷静に分析してみる。


地面に紐で輪っかを作っておき、足を踏み入れると吊り上げられる仕組みのようだ。

何度かバウンドしてみるが、竿も紐もビクともしない。


考えるのをやめた。どうしようもないことを悩むのは性にあわないのだ。


だんだん、楽しくなってきた。


ブラーン


ブラーン、バイーン


ブラバイーン、ブランブラーン……ブーーランバイーーーーン


不味いと気付いた時には完全に制御できなくなっていた。下手くそなヨーヨーのように、自転しながら放射状に飛んでいく。

急激に三半規管が刺激され、気持ち悪くなる。ホントの地獄はそこからだった。10年ぶりぐらいに、ブランコが急には止まれないことを思い出した。

慣性を呪った。そして、ほんの少しだけ、考えなしの自分に反省した。


体調が回復するまで、小一時間かかった。厳密には、回復ではなく順応、いや、諦めである。

とにかく、揺れを克服すべく心頭を滅却する。目を閉じて、瞑想する。


「じーーーーーーっ」


瞼の裏側につぶらな瞳が2つ浮かんだ。慌てて目を開ける。


俺の精神世界に土足、いや、裸眼で踏み込むとは、いい度胸である。辺りを見回すが誰もいない。気のせいか。

気を取り直し瞑想へと戻ろうとしたら、唐突に目が合った。


水面に二つの目が浮かんでいた。(元)人間驚きすぎると声が出ない、とはよくいったものである。一人いや、一匹で自転放射運動を繰り返しただけだった。


そうこうしているうちに、目の数は増えどんどん盛り上がっきた。複眼の海坊主みたいな存在なのかと思ったが、目を凝らすと一つ一つ別個体であった。そのうちの一体が陸へと上がってきた。


頭の中で有名なゲームソングが流れる。


ゼリー状のデローンとした体躯に、クリっとした目。

そのスライムもどきは、あまりにスライムだった。だだ、俺が知ってるソレとは、体の色が違った。半分赤色で、半分透明なのである。


異色の存在に興味をもった俺は、話かけて見ることにした。


キュイ(こんにちは)

話せないのを忘れていた。まぁ、仮に話せたとしても、伝わらないだろうけど。


スライムは首を傾げた。ように、見えた。かわいい。不覚にも見とれた瞬間、似つかわしくない速度で飛び掛ってきた。


ペチャッ!


顔面にへばりつく。


苦しぃ……くない。


その音を皮切りに、無数のスライムが待っていましたとばかりに、俺に飛んできた。赤いジェル状物質で包まれたとたん体が浮遊した。

まるで羊水に包まれた胎児のようだ。ゆっくりと向きを変え、見事、紐を掴むことが出来た。


爪をたて、紐を切ろうと試みる。無数のつぶらな瞳が、俺の手元に集まってきた。

痛いぐらいの視線を感じながら、頑張ること十数分。やっとの思いで紐がきれた。


あれ、落ちない。スライムが紐と竿に絡んでいた。視線で合図を送ると、ゆっくり解く。


ベチャッ!


音はすごかったが、ほぼゼロ・グラビティで地面についた。ビッグスライムはまた、個々に分離し湖へと帰っていった。俺はそれを手を振りながら見送った。


これが、短かった俺の人生で初めて件の最弱モンスター(スーパーヒーロー)と遭遇した瞬間だった。

同時にそれは、俺と色素魔獣(ピグメントモンスター)(ピグモン)との初遭遇でもあった。


そして、 俺はこの時まだ、知る由もなかった。

後にこの色素魔獣(ピグモン)が世界を救い、ご神獣様として崇められるまでになろうとは。



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