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潰える野望

「ジンク皇子、貴様は皇帝陛下一族を殺害し

私の手により葬られるのだ。国民が貴様の罪を許しはしまい。そして、私が英雄王として歴史に名を刻むのだ。ふははははははははっ! 」


インディゴ卿が扉の外にまで聞こえる大声で、長々と演説している。俺達は今、帝王の間の扉の前にいた。ここに着くまでに、俺は心の中で『いいね』を連打しまくっていた。結果、仲間は総勢50名ほどまでに膨れ上がっている。


ラズワルド卿が俺に目配せをした。俺が頷く。と、同時に扉を押し明け、中に飛び込んだ。俺は瞬時に結界を展開し、皇帝陛下一族とジンク皇子の部隊を守る。ラズワルド卿は、呆気に取られて動けない青士団を尻目に、インディゴ卿の背後に周り、その首に剣を翳した。仲間の50名がなだれ込み、周りの青子団を抑える。


「一歩でも動けば、此奴を切る」


ラズワルド卿はそう言い放った。さらに、部下にインディゴ卿を縛るように言いつけた。一瞬をついて、インディゴ卿がラズワルド卿の部下を蹴り飛ばし、ラッパを高々と鳴らした。

ラズワルド卿が剣を振りかざす。


「ラズワルド、その剣を下ろせ! 今に、ここに大群が押し寄せる。私を殺せば奴らを制御できる者がいなくなり、皆殺しだぞ」


ラズワルド卿が悔しそうに剣を下げた。インディゴ卿に命じられ、その場に跪く。さらに、俺に結界を解くように命じた。俺は頑として聞き入れない。


「まぁ、良い。軍が到着したらその鮮やかな毛皮を剥いで、ここに飾ってやろう」


インディゴ卿が俺を睨みながら言った。


次第に部屋が振動しだした。大群の歩みで城が揺れているだ。インディゴ卿が勝利を確信し、微笑んでいる。勝者の余裕だろうか、はたまた、自分の手は汚したくないのかもしれない。ラズワルド卿には手を下さず、青士団が来てから捕えさせるようだ。


勢いよく扉が開いた。青士団が一斉になだれ込んでくる。そして、皆の周りを埋めつくした。


「ラズワルド、後一歩だったな。後一歩で敬愛なる皇帝陛下をお守りできたのに。お主はいつも、詰めが甘いのだ。知恵が足らぬとも言えるな。力だけでは勝てぬのだ。ジンク皇子とともに謀反に加担したことにして、さらし首にしてやろう。まぁ、ここで命を落とすお主には、どうでも良いことだがな。ふははははははははっ! 」


インディゴ卿はそう高笑いすると、青士団にラズワルド卿を捕らえるように命令した。暫しの沈黙が流れた。誰も動かない。


「何をしているのだ!さっさと捕らえよ! 」


インディゴ卿が苛立たしげに怒鳴った。それでも、誰も微動打にしない。


「インディゴを捕らえよ」


体の芯に響く荘厳な美声が、帝王の間に木霊した。フサロ皇帝陛下の命令に、青士団が一斉に切っ先を、インディゴ卿へ向けた。その場で縛り上げられる。同時にインディゴ卿の側近たちも捕えられた。


「こっ、皇帝陛下、お待ちください。わ、私は……、わ、私目は……」


事態を飲み込めないインディゴ卿が、あたふたしている。ご自慢の知恵を巡らせ、必死に言い訳を考えているようだ。


「インディゴ見苦しいぞ、お主も誇り高き青士であるならば、罪を認め償え。地下牢へ連れて行け。此奴は青士道を大きく踏み外した。然るに、シアニン帝国の礎を築くのに多大な功績を残したのも、また事実だ。最期まで丁重に扱ってやれ」


皇帝フサロが静かにいった。


それを聞き、インディゴ卿が咽び泣く。


「私は何処で間違ったのか」


そう力なく呟いた。


皇帝陛下を支え礎を築き、帝国を牛耳った男の最期は、余りにも儚いものだった。

皇帝陛下への尊敬や羨望が、いつしか嫉妬に変わり、澄んだ青をどす黒く飲み込んだのだ。

そこを、ニガレオス帝国皇帝ボン・ブラックに付け込まれたのであった。

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