青気奪還
ブルーフィールズ城の中を突き進んでいた。
俺達4人にラズワルド卿の部下を加えた、総勢30名程度で行動している。
青士団は外に待機させていた。皇帝一族とジンク王子が人質に取られているのだ。大勢で向かいインディゴ卿に悟られれば、最悪の事態に成りかねない。それを考慮し、最低限の人数で作戦を決行したのだ。
俺達は最初15名程度だった。巡回兵に遭遇する度、仲間の数が増えていった。ラズワルド卿による問答無用の一突きで、みな青気を取り戻した。
もしこの世界にSNSが存在していれば、今頃『剣をもて! 』がバズっていたことだろう。
目の前で度々繰り広げられている、一突きで眩い光とともに我に返るシーンを集めて動画にしても面白いかもしれない。
そんな、下らないことを考えながら突き進んでいると、次階へと続く階段の前で1人の女性が腕を組み立っていた。
「下が騒がしいようだったけれど、貴方方でしたのね」
女はそう言うと、ラズワルド卿に微笑みかける。ブロンズの髪を1つにまとめ、センスのいい紫色軍服に身を包んでいた。
ラズワルド卿が鋭く睨み返し、女の動きを油断なく観察している。この女は強敵のようだ。
「私はティルスと申します。敬愛するインディゴ卿の右腕を自負しておりますわ。ただいま、卿は重要な任務に従事しておりまして、いかなる者もこれより先はお通しできませんの。やっと、あの邪魔な姫が始末されるのです。皆さんも、お喜びになって。うふふふふふふ」
ティルスはそう言うと、うっとりと悦に浸っている。
「お前、その姫というのは、ヴァイオレッタのことか」
ピロロが無表情で問うた。
「あら、ご存知ですの。姫というのも、烏滸がましい。何処の馬の骨とも知れぬ田舎娘が、無垢なカッパー王子を誑かしたのよ」
ティルスは吐き捨てるように言った。
「ふっ、女の醜い嫉妬か」
それに、ピロロが呆れたように応える。
「あら、此方にも田舎娘さんが紛れ込んでいるようね。いいでしょう、私が身の程を弁えさせてさしあげましょう」
「ヴァイオレッタを侮辱したことを後悔させてやる。此処は私が抑える。先にいけ。ヴァイオレッタのことは頼んだ」
そう言うと、ピロロは短剣を抜き、ティルスに向けて放った。短剣は瞬時に真紅の鋭利な結晶となりティルスを襲う。
それを避けるように、ティルスが真上へと飛んだ。その隙に俺達が階段に掛け寄る。俺達目掛け、真上から複数の手裏剣が放たれた。
ピロロが髪飾りでそれらを追撃する。放たれた髪飾りは幾重にも分かれ、ティルスの手裏剣を尽く弾いた。
俺達が階段を駆け上がると、ティルスが追ってこようする。
ピロロがぬっと現われ立ちはだかり、あろう事か、頭突きを食らわせた。思わぬ攻撃にティルスが真後ろへと吹き飛ばされる。
「お前の相手はこの私だ。田舎娘の怖さをその身に刻んでやろう」
ピロロそう言うと、不敵に笑った。
 




