表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/124

寄り添いの鉄槌 (★教帝聖下視点)

「あらっ、まだ、立つの? 」


 ゆらりと立ち上がった私を見て、シスターリアがいった。

 無数の水晶片に襲われ、満身創痍だった。


 さらに、長時間の戦闘で色素(ピグメント)はごっそり持っていかれている。

 聖剣を維持するためには、大量の色素(ピグメント)が必要なのだ。そして、攻撃にも色素(ピグメント)を纏わせるため、二重に消費することになるためだ。


「何か、言い残すことはお有り? 」


 シスターリアが勝ち誇った笑みを浮かべながらいった。左眼の色眼は、すでに、解かれている。


 舐められたものだ。うまい具合に。


「確かに、色素(ピグメント)総量、その操作術、そして、剣技に至るまで私は貴女に完敗だ」


「あら、教帝聖下ご自身が認めて下さるなんて、光栄だわ」


「しかしながら、それでも貴女は教帝聖下にはなれない。

 なぜなら、色素女神(ピグマリア)様のお心に寄り添うという一番大切なものが、私に劣っているからだっ! 」


「なっ!?

 ふんっ、所詮負け犬の遠吠えね。相手をするのも馬鹿馬鹿しいっ!! 」


 そう叫ぶと、シスターリアが動き出した。


「そして私は、負けてもいない」


 同時に私も行動を開始する。


 シスターリアが私に迫ってきた。

 私はというと、空気中へ色素(ピグメント)流し込んだ。


 次の瞬間、空気中から無数の白色光線が放たれ、シスターリアを全方位から貫いた。

 振り抜かれた聖剣は、私へと届くことなく消滅する。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあっ!! 」


 凡そ人間のものとは思えない叫び声が、神殿内にこだました。


 シスターリアは私を侮っていた。

 それはもう、わざわざ【色眼】を用いて互角を演出するほどに。

 私がよろけるのだって、見えていたに違いない。

 あそこで、私を一突きしていれば、全てが終わっていたのだ。

 しかし、彼女はそれを選ばなかった。


 数手先を読んだのだろう。

 水晶で防げると思った私が、絶望し痛みつけられる未来を。


 より苦痛を与えられると知った彼女は微笑み、そして、その未来を選んだ。


 水晶が爆砕させたのは私だ。あの水晶は元々、ハクと私の色素(ピグメント)で出来ているのだ。それを操るのは造作もないことだった。

 シスターリアの攻撃が、切っ掛けではあったが。


 斬撃により爆砕されたと見せかけて、一部は私を攻撃させ、残りを微細な結晶として空気中に浮遊させた。あとは、色素(ピグメント)光線を流し込めば、反射増幅を繰り返し、シスターリアに聖なる光の鉄槌を下してくれるというわけだ。


 彼女の気持ちへの寄り添い勝ちと言ったところか。寄り添いながら、寝首をかいたのだが。


 もしかしたら、彼女はすでに、人体を超越していたのかもしれない。思考が余りにも(コク)に感化されすぎていた。色素(ピグメント)操作術に異様に長けていたのも、その為だろう。


「っ!? 」


 一切の痕跡を残さず消滅した彼女を思い、そんな事を考えていると、二体の色素女神(ピグマリア)像から無数の漆黒兵が湧き出すのが目に入ってきた。


「あの尼っ!! 」


 思わず叫んだ。

 消滅を悟ったシスターリアは生存を放棄し、持ちうる全色素(ピグメント)を神殿に流し込んだようだ。


 神殿の制御を試みるが、容易に弾かれる。


 四の五の言っていられる状況ではない。

 私は聖剣を再び出現させると、漆黒兵へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ