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リベンジ

目がさめた。見慣れぬ天井に戸惑う。博士の研究室を訪問していたのだと思い出す。

視線を感じた。壁にもたれ掛かるように腕を組み、ピロロ姫がこちらを見ていた。静かに口を開く。


「お前を私の守護魔獣から解任する。この城より、立ち去れ」


それだけ言うと、俺の反論を許さず、踵を返し部屋から出ていった。


俺が弱いから外されたのだ。涙が頬を伝う。そのことに戸惑う。まだ、出会って二、三日なのに俺は別れが悲しいのか。傍に居れなくて悔しいのか。

そうだ、ピロロを奪われて悔しいのだ。理不尽に、そばに居る権利を剥奪されたことが悲しいのだ。


負けたことは事実だ。何を言おうと、覆ることは無い。もしあれが戦場ならば、ピロロを守れなかった。やはり、それは、守護魔獣として失格だ。

今、俺に出来ることは()()蛇に勝つことだけだ。それだけはやり遂げよう。


博士が部屋にきた。目があう。


「気分はどうだい」


「大丈夫です。むしろ、体が軽くなった気がします」


「無事、キナクリドン種も覚醒したようだね」

俺の体の色を確認しながら博士がいった。身体を確認してもらうことにした。


「すごい。上顎に毒袋が出来ている。君の覚醒は、かなり、君のイメージに依存するようだ」


口内検診をしながら、博士が興奮気味に言った。口を開けたままにするよう言われる。異物が突っ込まれ、吐き気が込み上げてきた。グッと堪える。あわや、大惨事である。


毒袋から赤黒い液体が採取され、試験管に取り出された。博士がろ紙に付着させると、瞬時に炭化した。


結界で5cm大の半球を作り、その液体を注いでみた。形を球状に変え、ふよふよ漂わせる。結界は耐酸性を獲得したようだ。


これは、キナクリドン種への覚醒だけでは達成できなかっただろう。耐酸性が、それを分泌できる蛇種の要素だからである。博士がいったように、俺の思考がかなり影響を与えているよだった。ここら辺の研究は、博士にお任せするとしよう。


博士が、浮いている球を啄て遊んでいる。プレゼントすることにした。

博士にお礼を言い、研究室をあとにした。


日が登り始めている。俺は中庭に向かうことにした。戦う場所の下見である。前回は突然の戦闘だったために、それもできていなかった。


あれだけ激しい戦闘を繰り広げたにも関わらず、痕跡は一切残っていなかった。マゼンタ王の結界に守られているのだろう。


相変わらず、絵画のように美しい。この間の炭化など嘘のように、花壇には花が咲き誇っていた。隅に噴水が設置されており、水を湛えている。


「性懲りも無くまた来やがったか。そのまま去れば、命まではとらなかったものを」


背後から声がした。化学者の手を装着しながらゆっくりと振り返る。俺の色素(ピグメント)を馴染ませた強化版だ。


ドン・スネークが舌をチロチロしながら、睨みつてくる。俺も睨み返した。ピロロを奪ったコイツは絶対ゆるさない。


奴は例の赤い毒を飛ばしてきた。俺は横に飛んで避けると同時に、複数の結界を出現させ、その液体を絡めとる。そして、奴に叩きつけた。


奴は笑いだした。


「小賢しい。そんな子供騙しなど効かぬわ」


当然そうだとは思ったが、やってみたのだ。目眩まし程度にはなるだろう。


再び、奴が毒を飛ばす。また、絡め取ろうとすると、瞬時に硬化させ微細な結晶を叩きつけてきた。結界が破られる。


体の周りに結界を出現させ防いだ。追い討ちをかけるように、微細結晶を飛ばしてくる。回避したところに尻尾を叩きつけられ、噴水近くに吹き飛ばされた。


そろそろ、決着をつけるとするか。何十回とイメージトレーニングした作戦を実行に移す。


噴水の水に結界をまとわせ、中庭中に浮遊させた。奴が周りの数個を叩き割った。視界が奪われる。


俺は助走をつけ、やつの頭上へと飛んだ。水のカーテンから、突如として出現した俺を、奴は丸呑みしようと口を広げる。


奴の毒袋が、噴射体制に入り大きく広がった。即座に近くの水球を掴み、奴の毒袋へと叩きつける。


ドッカーン!


大爆発が起きた。辺り一面に真っ赤な液体が噴射される。浮遊している水球が破壊され、さらなる連鎖爆発が起こった。


俺は吹き飛ばされた。瞬時に張った多重結界と色素(ピグメント)による体表強化により、なんとか耐えられた。

この結果を予測していたからこそ、対応できたのだ。奴には、一溜りもなかっただろう。元人間様の逆鱗に触れた方が悪いのだ。

爆発がおさまると、奴は跡形もなく消えていた。


爆音を聞きつけ、城内が騒がしくなる。少し派手にやり過ぎたことを後悔したが、後の祭りであった。

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