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2話

 広い通りの中央では馬車が行きかい、その横を建物に沿うようにして多くの人が歩いている。

 その流れに逆らわずにギルドに向かう。


「ちょっと、そこの兄さん!朝は食べたかい?まだならうちのはどうよ!」


「安いよ!安いよー!今朝収穫した新鮮な野菜が今なら全品5ゴルだ!」

「買うわっ!」

「あたしもよ!」


「おい!危ねーだろ!前見て歩けや」

「うおっと、すまんすまん」


「ぬおっ!?おい、ガキ!急に横切んじゃねぇ!踏みつぶされてぇのか!って、速ぁ!?」

「ごめんよーー!おっちゃーーん…」


(うんうん、今日も賑やかだ!)


 まだ日が出て間もないというのに、この通りは人が生み出す活気に満ち溢れている。朝のこの雰囲気は、一日の活力が得られるようで好きだ。


「お、アルンじゃねぇか」


 通りの空気を満喫していると、横から声をかけられた。


「おはようございます!ステラさん」


 僕を呼んだのは、軽食屋を営む20代半ばの青年、ステラさんだった。


「おう、おはよう。朝はもう食ったんだろ。昼はきまってんのか?」

「いえ、決まってません。今日は依頼を受けようと思っているので」

「ほう?なら、うちで買ってかねーか?」


 ニヤリと笑ったステラさんが売るのは『サンディ』と呼ばれる軽食だ。

 甘辛く焼いた肉をレタスに似た野菜とともに、細長いパンで挟んだサンドイッチのようなものだ。


「いいですね。買っていきます」


 ステラさんにニヤリと笑い返す。

 彼が作るサンディは持ち運びやすく食べやすい。なにより、美味しい。


「いいね。15ゴルな」


 ステラさんに料金を渡すと、すぐに作り始めてくれる。

 カウンターの下から次々と具材を取り出し調理台に乗せる。

 パンを切り、その上に用意していた具材を手際よく乗せていく。


「今日は何の肉ですか?」

「ん?今日のはマッスルバードの腿肉だな」

「あれ、今日も魔物の肉なんですね」


 ステラさんが使う肉は豚や鶏など家畜のものが多かったはずだ。


「肉を買ってる店がな。最近大量に仕入れるからって、かなり安く売ってくれんのよ」

「そうなんですね。だから、値段が変わらず」


 会話しながらも、ステラさんは手を止めない。

 具材を挟むようにパンを乗せる。

 仕上げにサンディを手早く紙で包めば完成だ。


「そういうこった。よし、できたぞ」

「ありがとうございます!」


 それを受け取り礼を言うと、ステラさんは快活な笑みを浮かべた。


「おう!いつもありがとな。気をつけて行けよ」


 軽く手を振り、ステラさんの店を後にする。


「マッスルバードの腿肉かぁ、昼が楽しみだ!」


 旨みも身もギュッと詰まったマッスルバードの腿肉は、味と噛みごたえがたまらない。

 歩きながらその味に思いを馳せていると、ほどなくして目的地の正面に辿り着く。

 行きかう馬車が途切れたタイミングで通りを横断した。


 通りの反対側にも人の川ができていて、その一部が目的の建物へと流れ込んでいく。

 彼らは種族、老若男女を問わず、武器と防具を身に着けている。まさに、冒険者といった風体だ。


 眼前にある冒険者ギルドは石造4階建てmp、広い通りにあって一際目立つ大きな建物だ。

 特にこれといった装飾もなく、素材のままの色をした無骨な見た目をしている。


 人の流れに逆らわずギルドに入ると、数人の視線が飛んできた。

 しかし、僕であることが分かると直ぐに外れる。知った顔だからだ。

 新人研修期間を含めて2年、毎日のように通えば顔見知りも増えるものだ。

 僕も特に気にすることなく、る受付カウンターへと向かう。


 ギルドの1階は、広々としたホールになっている。

 入り口の正面には受付カウンターがあり、その奥はギルド職員の事務スペースになっている。

 受付カウンターの左には掲示板があり、依頼票が張り出されている。ここで受ける依頼を吟味し、眼鏡に適うものがあれば依頼票を剥がして受付で手続きを行う。


 受付の右には2階に続く階段と、その手前に談話スペースがある。

 ここには複数の椅子と机が用意されおり、即席のパーティー結成、依頼主との報酬の交渉などを行う。


 ギルド内には数人の冒険者がいた。まだ朝が早いため、依頼を受けにくる冒険者は少ない。

 それに合わせて、受付カウンターにも職は2人しかいない。


「アルン、おはよう」

「あ、おはようございます」


 そのうちの1人から声をかけられ、その人のもとに向かう。

 銀髪美女のシルフィさんだ。

 切長の碧眼が涼しげな、可愛いというより綺麗という言葉が似合う人である。

 日頃からお世話になっているギルド職員さんだ。


「今日は採取、討伐どっちにする?」

「近場のものがあればどちらでもいいです」


 挨拶もそこそこに、受ける依頼の話に進む。勝手知ったるとはまさにこのこと。


 冒険者ギルドで出される依頼は、大きく分けて4種類ある。採取、討伐、護衛、調査だ。

 これらは持ち込まれた依頼の内容によって、ギルドが独自に振り分けており、受注には等級(ランク)制限が設けられている。

 F、G級は採取依頼だけ、E級からは討伐依頼が追加されるといった具合だ。護衛はC級から、調査はB級から受けられるようになる。


 僕はD級なので、採取か討伐のどちらかを受けることになる。


「そうねぇ。近場でいくと、ミドルボアの討伐依頼があるわ。場所はメアの森よ」


 シルフィさんが手元の依頼票をめくりながら教えてくれる。


 ミドルボアは討伐ランクE級の魔物で以前にも狩ったことがある。

 冒険者のランクでいえばD級なら1人、E級なら4人以上のパーティーで安全に狩れる強さの魔物だ。


「ミドルボアなら狩ったことがあります。何頭ですか?」

「3頭よ。頭の切り落としと魔石の切除、血抜きまでしたら、追加報酬が発生するわ」

「気前が良いですね」

「急ぎで新鮮なお肉が必要みたいよ。3頭とも東通りにある店舗に直接持ち込んで欲しいって。受ける?」


 メアの森は東門の先にある。店が東通りにあるなら無駄に移動する必要もない。


「受けます」

「そう。じゃあ、依頼票にサインして。後は、この納品書にも。お肉を納めたら、店の人にサインをもらってきてちょうだい。サインのある納品書を提出することで依頼は完了よ」

「分かりました。店までの地図が欲しいです」


 依頼票と納品書にサインをしながら、店までの簡易的な地図を用意してもらう。

 記入を進めていると、早々に地図の記入を終えてこちらを眺めていたシルフィさんから話しかけられる。


「アルンももうD級冒険者なのね」

「はい。この前試験を受けて無事に」


 冒険者には能力の高さや依頼の達成率、ギルドへの貢献度などを踏まえた等級、通称『ランク』が与えられている。

 ランクは上から順に、S、A、B、C、D、E、F、Gとなっており、それぞれのランクで規定回数の依頼を受け、依頼達成率が基準を超えれば、昇級試験が受けられる。

 その試験に受かると晴れて昇級となり、受注できる依頼が増えていく。


 D級到達は冒険者として一人前となった証であり、E級からD級への昇級は『最初の壁』とも言われている。


「早かったわねー」

「そうですか? 2年もかかりましたよ?」

「何言ってるの。2年は十分に早い部類よ。それが10歳から12歳の2年間なら、なおさらね」

「そういうもんですかね」


 サインが終わった納品書を収納袋にしまう。

 依頼表を渡すために顔を上げると、微笑を浮かべたシルフィさんと目が合った。照明の光を複雑に反射する碧眼が優しげに細められている。


「な、なんですか」

「あんなに小さかったのが、こんなに大きくなって…」

「……」


 しみじみと言われると、反発するのも難しい。


(10歳の僕はそんなに小さかったかな…)


 シルフィさんは僕がこの街に来た10歳の頃から僕のことを知っている。

 冒険者登録を担当してくれたのも彼女だ。それ以来、散々お世話になっていた。


「それも、D級になるなんて…」


 そう言いながらカウンター越しに手を伸ばしたシルフィさんに頭を撫でられる。

 咄嗟に動くこともできず、なされるがままに撫でられる。


「……」


 このお姉さんモードに入ったシルフィさんには抵抗しづらいのだ。頭が上がらない。

 しかし、このままでは背中に突き刺さる多くの視線の圧に耐えられそうにない。


「あ、あの、行ってきます!」


 素早く離れ、シルフィさんに宣言する。

 そうすると視線の圧はぐっと小さくなった。

 しかし、当のシルフィさんは不満気だ。僕の頭があった場所を見ている。


「もう少し撫でさせてくれたっていいじゃない」

「いや、えー…。僕は犬猫ではないんですが…」

「……」


 そういうことではないと分かりつつも、一応の弁解を試みる。

 こちらをじっと見つめるシルフィさんの表情からは不満がありありと伺えた。


「……では、またの機会に」

「なら良し!行ってらっしゃい!」


 シルフィさんは満面の笑みを浮かべた。


(負けた…。しかし、この笑顔を見れたのなら本望です)


 この笑顔が見られるならと心から思うが、背後で再度膨れ上がった視線の圧が尋常ではない。視線だけで人を殺せるんじゃなかろうか。

 背中に冷や汗が流れるのを感じる。


(いや、これは男性に対してのものではなくてですね。むしろ弟とか、そういうものに対してのものだと思うんです。あ、いや、弟とか調子乗ってすいません。だから、そんなに圧をかけるのはやめてくださいぃ…)


「はい、行ってきます…」


 努めて周りを見ないようにしながら、ギルドの入り口に向かう。

 怒気を孕んだ視線に身を貫かれながら、なんでこんな目にと思わずにはいられない。

 さすがはシルフィさんだ。冒険者有志で行われる人気投票で不動の1位を欲しいままにする魅力は半端ではない。


 逃げるように入り口に急ぎ、扉を開けて通りに飛び出す。

 同時に、横から声をかけられた。


「綺麗どころに目をかけてもらえて、良いご身分だな」


 声の主はギルドの壁に背中を預ける目つきの鋭い男性だ。


「フォルトさん!おはようございます」


 この人はフォルトさん。黒髪をオールバックにした痩身猫背の男性で、B級パーティー『波風』の斥候だ。個人でもB級の冒険者である。

 今は何やら渋い表情をしている。皮肉を言ったのに、僕が嬉しそうに挨拶したからだろう。


「……最近、魔獣の目撃情報が増えてる」


 それだけ言うと、彼は足早に去っていった。これから向かうメアの森のことだろう。

 深くは潜らず、浅いところでも注意を払い、目的を果たしたら早々に帰還するべき、というところだろうか。


 彼の皮肉混じりの発言に騙されはいけない。その奥には相手を思いやる優しさが潜んでいる。

 そのことは、この2年間でよく分かっていた。


 フォルトさんが所属する波風は男性4人のB級パーティーだ。

 メンバーは、リーダーで大剣使いのヴォルフさん、盾使いのゴードンさん、魔法使いのゼラーさん、斥候のフォルトさんだ。

 彼らは人当たりがよく面倒見も良いため、冒険者ギルドからの覚えが良く、同僚、若手を問わず冒険者にも慕わている。この街の冒険者のリーダー的存在といやつだ。

 かくいう僕も、依頼で何度も一緒になり、私生活でお世話になった回数も合わせると両手の指では足りない。


「ありがとうございます!気をつけます!」


 有益な情報をくれたフォルトさんに大きな声で礼を言うと、軽く手を挙げて応えてくれた。

 その背中が見えなくなるまで見送る。


「行くか!」


 フンッと息を吐き、気合を入れる。まず向かうのは中央広場だ。


 この街、アステル公爵領都『アステル』には東西南北に走り、街地全体を十字に切り裂く大通りがある。

 大通りとその先にある門には方角によって名前がついていて、東の大通りなら『東通り』、東の門なら『東門』だ。

 また、大通りが交わる場所には『中央広場』があり、噴水と巨大な時計台がある。領主館と並ぶこの街のシンボルだ。

 その周囲には飲食店が軒を連ね、住民の憩いの場にもなっている。


 ギルドがあるのは北通りだから、中央広場に向かうため南に足を向ける。

 少し歩くと、人混みの頭上に時計台が見えてくる。東西南北の通りに向かって、四つの時計を持つ大きな建造物だ。一つ一つの時計は魔道具らしい。


「今は8時か。良い時間だな」


 このまま真っ直ぐメアの森に向かえば、昼前には着くだろう。

 そこから狩りを始めれば、日が暮れる前にはアステルに帰ってこられるはずだ。


 寄り道はせず、中央広場を経由して東通りに向かう。

 ここから東門までは、ただ歩くだけだと30分以上かかってしまう。アステルは国内でも有数の規模を誇る大きな街なのである。

 人が混み合うこの時間帯なら、もっと時間がかかってしまうことは日を見るより明らかだ。

 そこで普段から無属性魔法『身体強化』を使い、通りの中央、本来は馬車が進む場所を馬車と並ぶように走ることにしていた。


『身体強化』は身体機能を高めてくれる魔法で、筋力や瞬発力、反応速度の向上などをもたらしてくれる。

 発動は簡単、魔力が多く宿る部位から魔力を引き出し、体全体を巡る魔力の量を増やすだけ。

 イメージを必要としないため、無意識に使っている人も多かったりする。


 とはいえ、この魔法の効力を高めようとすると話は変わってくる。

 まず、「魔力が多く宿る部位」だが、これが人によって違う、もっと言えば個人の感覚によるのだ。

 どこの臓器で魔力が生み出され、貯蔵されているのかが分かれば話は簡単だった。

 しかし、現実はその逆をいく。

 研究が進められても、人がどこで魔力を生み、溜め込んでいるのか分からなかったのだ。これは魔法学、長年の未解決問題になっている。

 よって、身体強化をより強めようとする人は「なんとなく魔力がたくさんある感じがする場所」を探し当てることから始めなければいけない。


 さらに、問題は続く。

 魔力が宿る部位探しは良かった、ああでもないこうでもないと試行錯誤すればなんとかなる。

 しかし、「体全体を巡る魔力の量を増やす」は危険が伴うのだ。

 魔力が体全体を巡らず、ひと所で滞ると、集まっていく魔力にその部位が耐えられず破裂するという危険が。


 僕は見たことがないが、文字通りボンッと破裂するらしい。

 師匠はこの事実を()()()()()()()使()()()()()()、なんてことないように言ってきた。


「あれは凄いぞ。儂はついぞなることはなかったが、戦場ではよう見たわい」

「……」

「急にボンッとくるんじゃ。まぁ、内臓なんぞがいって即死でなければ、回復魔法で治るからの。さして、問題にはならん」

「……」

「あ、じゃが今はまずいの。儂は回復魔法を使えんからな。ほほっ。気をつけいよ、アルン」

「ふざけんなっ!」

「おごほっ!?」


 僕は人生で初めてドロップキックをした。しかし、僕は何も悪くないはずだ。

 それ以来、何度か師匠にドロップキックをおみまいすることになった。


 それはさておき。

 こんな事情があり、身体強化をある時代には禁呪になっていたりもしたらしい。

 しかし、それでも人の「強くなりたい」という欲は止められなかった。

 数多の痛みと犠牲のもと、身体強化を繰り返し、魔力を巡らせることに慣れれば慣れるほど、巡らせられる魔力量は増え、破裂のリスクも減ることが突き止められた。

 それ以降、身体強化の禁呪指定は解除され、自己責任ではありつつも有用な魔法として再度、広まっていったと言う。


 まとめると、発動は簡単、されど危険な『身体強化』は弛まぬ修練が必要な魔法なのだ。

 あの時のことを思い出すと、今でも沸々と怒りが湧いてくるが、この鮮烈な思い出のおかげで、身体強化の危険性を忘れないでいられるの事実だ。


 そのことに鬱々とした不満を感じながらも、心臓あたりから魔力を引き出し、身体全体に巡らせていく。

 巡る魔力が増えるにつれて、身体がぽかぽかと温かく、そして軽くなっていく。

 人の流れと馬車の流れの間、少し空いたスペースで軽く足踏みして効果を確認する。


(うん、良さそうだ)


 前後を確認して走り出す。ひとまずは馬車に並走するくらいの速度で走る。

 馬車の邪魔にならないように走っていると、遠くに東門が見えてきた。

 そこいらで少しギアを上げる。

 一定の距離を保って進む馬車をぐんぐんと追い抜いていく。

 顔に吹き付ける風が心地いい。外套の裾が風に揺られてはためいている。


 途中、馬車の御者や乗客にギョッとされたが、それはご愛嬌だ。

 身長が低く、周りから見れば子供の僕が走って馬車を追い抜けばよくあることだった。

 一方で、子供なんかは興味津々といった様子で僕を見て、手を振ると目を輝かせて振り返してくれたりする。可愛い。


 かなり大きく見えるようになってきた東門からは、街の外に長蛇の列ができているのが見えた。街へ入ろうとする人たちが作る列だ。

 門の下では守衛さんが一人一人、身分証を確認している。


 それを横目に門を走り抜け、街を出る。

 街から外へ出るぶんには、身分証の提示は必要ない。また街へ入るときには身分証の提示が必要になるが、それも守衛の顔見知りになれば省略される。


「ん?アルンか?おはよう!」


 門を出たところで、頭上から大きな声が聞こえた。

 街を囲む高さ5mほどの城壁の上から、顔なじみの守衛さんが顔をのぞかせていた。


「おじさん!おはようございます。行ってきます!」

「おう!気をつけてなー!」


 身体強化を維持して走りながら、おじさんに手を振る。

 入場列をつくる幾人かがこちらを向き、その様子を不思議そうに眺めていた。


 東門の先には人の往来によってできた道がある。この道はアステル公爵領内の隣町へとつながっており、メアの森はその道中から南に少し離れたところにある。

 道に沿って移動しても良いが遠回りになるので、南東に真っ直ぐ進んで森を目指すことにする。


「人もいないみたいだし、いいかな」


 アステルは広大な草原地帯のど真ん中にあるので、街を出てしまえばかなり見通しがいい。

 近場に人がいないかを確認するのは容易だ。


 メアの森までは結構な距離がある。しかし、移動時間は短縮したい。

 そのために、身体に巡る魔力を増やし、身体強化の度合いを上げていく。

 数回ジャンプした後に走り出す。


 一歩踏み込むと、地面に足がめりこむ。それでも強く踏み込むと、体は強く前へと押し出された。

 走るというより跳ぶようにして前へ前へと進む。

 ゴウゴウという音ともに、顔にぶつかる風をより一層強く感じた。


 全力疾走ではないが、それでも競走馬のラストスパートより早いはずだ。

 前世の記憶からすれば、人間かどうか疑いたくなってしまう。

 こんなことを可能にしてしまうから、魔法はやはり魔法だ。


 緑の香りの混じった風を全身に浴びる。

 気持ちの良い朝であることを改めて実感しつつ、一路、メアの森へと向かう。

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