1周年企画特別編(3)
ここは次元の狭間の空間の食堂。
その食堂内の長いテーブルに5人の男女が座っていた。
「はい、というわけで前回に引き続いて俺たち渋谷系Gチューバーのエントランスが進行を務めます」
「今回は本作に登場する各キャラを深掘りします」
そう言って報道番組のアナウンサーのようにテンションがまったく高くなくなってしまった自称渋谷系Gチューバー、エントランスと名乗る2人組の元チャラ男を見て、この路線変更は本当にこれでいいのだろうか? とカイトは他人事なのに少し心配してまった。
これは仕方がない、異世界から戻る度に絡まれて謎の動画を撮られている身からすれば当然の反応である。
ちなみに「突撃! 次元の狭間の空間訪問」はその10まで動画がアップされている設定だがその内容が語られることは今後訪れる事はないのであしからず……
「さて、それではまずはこの物語の主人公の紹介から行いたいと思います! 主人公は川畑界斗。職業は地球にいた時は学生。今は数多の異世界を旅する異世界渡航者です」
「え? 異世界渡航者って職業だったの?」
カイトがエントランスの2人に聞くとエントランスの2人はお互い見つめ合うと。
「そうなの?」
「知らん、台本にそう書いてあるし」
そう言って、質問にそれ以上答えず話を先に進め出す。
あくまで台本通りに進行したいようだ。
アドリブ駄目な人達かな?
「主人公、川畑界斗の武器はマルチウェポンであるアビリティーユニットGX-A03。見た目は拳銃のグリップのようなものでボタンを押すとレーザーの刃が飛び出してレーザーブレードになります」
「外見はラ○トセーバーやビ○ムサーベルに見た目はそっくりですね!」
「色々とやめろ」
「アビリティーユニットはこれだけだとレーザーの刃しかだせない武器ですがオプションパーツを取り付ける事でマルチウェポンとしての本領を発揮します」
「その代表格がアビリティーチェッカー。まさにアビリティーユニットの核と言えるものですね」
「アビリティーチェッカーをグリップのようなアビリティーユニットの側面に取り付ける事によってアビリティーユニットは多くの機能を使えるようになるのです!」
「転生者、転移者、召喚者から能力を奪ったり、奪った能力を使用するにもアビリティーチェッカーを取り付ける必要がありますからね」
「ちなみに、このギミックの元ネタはジ……」
ここで通信が途切れる……
「あ、どうやら回線が復帰したようですね! あまり踏み込んだネタはできないようです」
「……いいのかそれで?キャラを深掘りとは一体」
「さて、そんなアビリティーチェッカーのその他の機能は銃モードの詳細を選べるところですね」
「ライフル銃の5つのスタイルを選ぶ事ができるんですよね!それだけじゃなくオプションパーツの拳銃の銃身を取り付けてハンドガンモード、アタッシュケースを取り付けてのSAMモードなど多彩な銃火器に変形できるのです」
「それではここで現時点で判明しているガンモードをおさらいしておきましょう!」
◎ライフル銃モード
・アサルトライフルスタイル(外観モデル:ステアーAUG)
・バトルライフルスタイル(外観モデル:SCAR-H)
・カービンスタイル(外観モデル:H&K HK416)
・スナイパーライフルスタイル(外観モデル:マクミラン TAC-50)
・対物ライフルスタイル(外観モデル:ゲパードGM6 Lynx .50 BMG)
◎拳銃モード
・ハンドガンスタイル(外観:アビリティーユニット・ハンドガンモード)
・サブマシンガンスタイル(外観モデル:???)
・PDWスタイル(外観モデル:FN P90)
◎地対空誘導弾モード
・SAMスタイル(外観モデル:91式携帯地対空誘導弾SAM-2Bハンドアロー)
・ロケットランチャースタイル(外観モデル:???)
・グレネードランチャースタイル(外観モデル:???)
◎???モード(未登場オプションパーツ)
・ガトリングガンスタイル(外観モデル:???)
・高射機関砲スタイル(外観モデル:???)
・重機関銃スタイル(外観モデル:???)
「いや~結構選択肢ありますね?」
「まぁ、その時々で状況に応じて使い分けてますけど」
「まだ未登場の銃火器のモデルはどんな銃なの?」
「それは作者の趣味なのでその時にならないとなんとも……」
「ちなみにビーグルとかそのうち出てくるの?」
「それはさすがに言っちゃうとネタバレでは?」
カイトがそう言うとエントランスの2人はお互い見つめ合うと
「それでは次に現時点で奪って使える能力をおさらいしておきましょう!」
話を次に進めだした。
◎7.5章終了時点でのアビリティーチェッカー登録能力
・魔術障壁(シールド/バリア)能力(取得序章)
・プログラミングの能力(取得1章)
・勇者の聖剣の能力(取得2章)
・アイテム収納・取り出し・登録能力(取得3章)
・パーフェクト・クッキング(取得3章)
・精神潜行メンタルダイブ(1度のみ使用可能な能力としてカグから与えられる。短編「夢喰と眠り姫」でも登場)
・魔王の能力(取得5章)
・聖斧の能力(取得6章)
・自身を含めた仲間の支援サポート能力(取得7章。7.5章で強化+1)
・魔法(取得7.5章、強化+1)
・魔物の擬態能力(取得7.5章、強化+1)
・箱庭の夢(取得短編「夢喰と眠り姫」)
「能力も結構増えてきて選択肢増えてきましたね?」
「増えすぎると使わなくなったり、なんであの能力使わなかったの? ってのが絶対出てくるんですけどね……」
「まぁ、あるあるですね」
「それで済ましていいのか…」
「というか転生して魔法を使えるようになるって異世界ものの鉄板ネタなのに、なんでその世界の話すっ飛ばして8章からすでに能力奪ったから魔法使えますよ! って状態にしたの?」
「いや、ダイジェストですっ飛ばしても問題なくね? と思ったので」
「えぇ……(困惑)」
「まぁ、魔法アカデミー編の転生者が学院に通って俺TUEEEする展開から能力奪われる展開まではいずれ短編なりで書こうかとは思います」
「なるほど! いずれ短編なりで書くってことは書かないって事ですね!」
「おい」
エントランスの2人はそのまま台本に目を落とし、話題を変えて話を進める。
とにかく台本の進行に忠実に従いたいようだ。
「さて、続いてこの物語のヒロインを紹介したいと思います! ヒロインはフミコ。弥生時代に存在した現在では資料も記録も存在しない倭国の小国の一つで姫巫女だった少女ですが疑似世界でカイトと出会い、精神世界で存在を確定してもらって仲間となりました」
「カイトに対しての好感度がMAXなわけですが、そのきっかけは精神世界で彼から言われた言葉であると本編でも触れられてますが、ぶっちゃけ何言われたの?」
エントランスの2人が興味津々といった表情でフミコに聞くが、フミコはカイトの方を見ると。
「う~んと……それは2人だけの秘密です」
そう言って笑顔を向けてくるが、カイトはどう反応すべきか困ってしまった。
何せカイトは精神世界で無我夢中だったため、なんと自分がフミコに何を言ったのかまったく覚えていないのだ。
これがフミコの気持ちがわかっていながらカイトがフミコに恋愛面で踏み込めない原因の1つであった。
自分が何を言ったが思い出せないという失礼な状態で関係を持つわけにはいかないという硬派な思想なのである。
「秘密ですが……まぁこのあたりはストーリーが進んでいけばいずれ本編で語られるでしょう」
「そんな適当でいいのか……」
「さて、フミコさんは翡翠の勾玉の首飾りに多数の武器や物資を収納できるため「歩く武器庫」と初期は表現されてましたが、そんなフミコさんの7.5章時点での武器一覧を見てみましょう」
・翡翠の勾玉の首飾り
・銅剣×2本(それぞれ外観が異なる)
・銅矛
・銅戈
・丸木弓
・石の短剣
・銅鐸
・銅鏡(三角縁神獣鏡)
・聖弓(6章でのみ)
・???(短編「夢喰と眠り姫」で使用)
「弥生時代の農具の横鍬やら組み合わせ鋤やらも出てきましたが、今後弥生時代以外の武器を取得する予定はあるんでしょうかね?」
「って短編でネタバレしてますね」
「……ていうか短編は7.5章から随分先の話なのにここで併記してもいいわけ?」
カイトがそう言うとエントランスの2人はお互い見つめ合うと
「それでは最後にカイトとフミコをサポートする立場なのかはよくわからない立ち位置のケティー・マーシャントを紹介しましょう!」
話を次に進めだした。
しかし、この紹介の仕方はやはりケティーには気にくわないので。
「ちょっと! だから なんでよくわからない立ち位置なのよ!!」
叫んで抗議するが、エントランスの2人は気にせず話を進行する。
「ケティー氏に関しては公式設定だけ箇条書きします」
「ちょっと! だからなんで私の紹介そんな雑なの?」
ケティーを無視してエントランスの2人は台本の進行に従うのだった。
ケティー公式設定
・異世界渡航者であり数多の異世界を股にかける異世界行商人。
・次元の狭間の空間で売店を開いてる。
・異世界へと渡航する手段はガジェット、ムーブデバイスGM-R79を使う。
・作者の他作品「カオス・ブライト~少年と竜の大陸冒険譚」にも登場し、時系列ではカオス・ブライト本編終了後の設定。
・戦闘能力はかぎりなく0に等しいがいざとなれば商品の道具や武器を持ち出してそれなりには戦える。
・7章時点での主人公に対する好感度がフミコがMAXなのに対してケティーは75%と割かし高い。
・フミコと仲が悪い。
「……と、現時点で明かせる設定はこのくらいで」
「ちょっと!! だからなんで余計な事まで雑に紹介するわけ!?」
ケティーが顔を真っ赤にして怒るがエントランスの2人は気にした素振りは見せず、それどころか「スリーサイズ発表しなかっただけまだましでしょ」と言い出す始末であった。
「と、いうわけで特に長くもなかった1周年企画ですがここでお開きとさせていただきます」
「いや、ほんとに短かったね!」
そう言ってエントランスの2人がしめに入り出したのでカイトは面食らってしまった。
キャラの深掘りと言うからにはもっと多くのキャラの事を一言だけとかでも紹介するのかと思ったが、本当にメインの3人だけ紹介で終わるようだ……
自称神のカグは紹介されないようである。
やはり胡散臭いから紹介しないのだろうか?
「とはいえ、今回触れなかったキャラや設定はまた次回の機会にお送りしたいと思います」
「え? またこれやるの?」
「ん? キリがいい時とかまた来年とかに?」
「……いや、そこまで引っ張るネタ正直ないのでは?」
呆れた顔でカイトは言うがエントランスの2人は聞き入れず、そのまま台本片手に椅子から立ち上がると。
「は~い! そういうわけで食堂のふきんがポンポンポン! ってことで真面目なキャラお疲れ! さぁみんなでタピろうぜ」
「ほんと台本全部こなしてテンションぶちあげ、あけみざわって感じ?」
「マジ俺のバイブスに合わなかったけど、よいちょまってあざまる水産みたいな?」
「途中マジやばたにえんだったけど、ほんと最後まであげあげで乗り切ったみたいな?」
「いや~じゃあこの後もう一件いっちゃう系?」
「当然いと上がりけり~」
「はいは~い、じゃあそういうわけでお後がHere we go」
今さっきまでの黙々と台本通り進行するキャラから元のチャラい渋谷系Gチューバーに戻った2人が騒ぎ立てながら食堂を出て行った。
後に残された3人は嵐が過ぎ去った食堂でしばし呆気に取られ無言だったが、しばらくしてどこからか羽ばたきながらカラスの姿をした自称神のカグがやってきて、テーブルの真ん中に降り立つと。
「あれ? Gチューバーの2人はまだ来とらんのかの? 画面映えするように羽根を整えてきたのじゃが」
そんな事を言い出したのでカイトは哀れな顔で自称神のカラスを見た。
「連中ならもうどっか行ったぞ?」
「え? もう収録終わったの? それ早く言ってよ~」
言ってカグはそのままテーブルに突っ伏した。
珍しくマジへこみするカラスを見てカイトはため息をついた。
「こっちはもう懲り懲りだわ……」
こうして1周年企画は幕を閉じたのであった。
ここまでご愛読ありがとうございました。これからも本作をよろしくお願いします!