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1周年企画特別編(1)

 そこは異様な空間だった。

 地面は真っ黒に塗りつぶされており、どういった素材で造られているのかわからない。

 それが地平線の彼方まで広がっており、その景色を遮る構造物は何もない。


 そう、その空間には何もなかった。

 真っ黒に塗りつぶされた地面と雲も星も何も浮かんでいない薄暗い空が広がっているだけだ。


 そんな何もない空間で川畑界斗は片膝をついて目の前の敵を睨んでいた。

 息は荒く、体中傷だらけで額からは血が流れている。


 なんとか立ち上がろうとするが、片足の骨が砕けており力が入らなかった。

 すでに片膝をつくのが精一杯な状態だ。


 「まったく……ここまでかよ」


 自分の思い通りに動かない体にカイトはため息をついて、それでも握った武器は手放さなかった。


 その手に握るはアビリティーユニットGX-A03。

 拳銃のグリップのような見た目の脇に窪みに取り付けられたストップウォッチのような外見た目のアビリティーチェッカー、そしてグリップの底に取り付けられた拡張パーツであり、強化ユニットであるアブソーブ・コネクター。


 この全能力リミッター解除モードを持ってしても、カイトは目の前の敵に傷一つ与えられないでいた。


 そう、地平線の彼方まで何もないこの空間において唯一の例外として異彩を放つ存在……

 無数の目が蠢く右肩に気味悪くはためく形容しがたい翼のような何かを生やした左肩。

 顔なのか、何なのかわからない形のものが首から生え、足からは触手のようなものが無数に飛び出している。


 数秒でも凝視していたら吐き気がこみ上げてくる容姿のそれは、カイトが今いる世界の頂点に君臨する存在。


 いや、この世界ではない。すべての次元に存在する世界の頂きに立つ者だ。


 超高次元の存在にして、この世のありとあらゆる物質の始祖。

 原初の素獣アディルハイト。

 それがその存在の名だ。


 すべての神を喰らい、すべての次元を蝕む存在……それがアディルハイトだ。

 それの前ではすべてが無に帰す。故に誰もそれを傷つけられない。

 そんな最悪の相手に、しかしカイトの心はまだ折れていない。


 「確かに攻撃は届かない、すでに体もボロボロだ……それでもまだ終わってねぇー!!」


 カイトは叫んで気合いで立ち上がろうとする。

 そんなカイトをアディルハイトはただ眺めているだけだ。


 アディルハイトにとってはカイトが立ち上がろうが脅威でも何でもない、向かってくるなら殺せばよし、向かってこないなら放置でよい、それだけだ。


 そんなアディルハイトの態度にカイトは怒りを覚えるが、やはり体は限界のようだ。

 何とか立ち上がろうとするがバランスを崩して倒れそうになる。


 (くそ!! どう足掻いても俺はやつに勝てないのか!?)


 諦めかけたその時だった。

 何もないこの空間に突如光が差し込んだ。


 一体何だ? とカイトが思ったその時、カイトにとって懐かしい声が何もないこの空間に響き渡る。


 「かい君!! 待ってて!! 今助けるから!!」


 その声を聞いて倒れそうになりながらも思わず顔を上げて光が差し込んできたほうを見る。

 すると、そこには神々しく差し込んだ光のカーテンをバックに空からゆっくりと滑空してくるフミコがいた。


 「フミコ……!?」


 思わず叫んでしまった直後、倒れそうになった体が制止する。

 そして体全体を光が包み込み、次の瞬間には体中の傷が治癒しており、体力も回復していた。


 「ハイ・リザレクションか……でも何で?」


 傷が治った事で倒れずに踏みとどまったカイトの前にフミコが降り立つ。

 そしてフミコはそのままカイトに抱きついた。


 「良かった!……本当に無事で良かった!」

 「フミコ……一体どうして?」


 困惑するカイトの様子に抱きついていたフミコは一度カイトから離れるとカイトに笑顔を見せる。


 「ひょっとしてかい君、あたしが死んじゃったと思った?」

 「いや、だって……」


 カイトは混乱した。

 そう、確かにあの時、フミコはアディルハイトの外殻であるジムクベルトの攻撃で撃墜したはずである。

 あの状況下で生き延びていたとはとても思えない。


 そう考えるカイトにフミコは懐からある物を取り出して見せる。


 「これのおかげだよ」


 フミコが見せたもの、それはタイムコンソールと呼ばれるガジェットツールだった。

 それを見てカイトはようやく理解した。


 「時空因果を弄ったのか!?」

 「うん! 成功するかわからない、一度しか使えない荒技だけど……でもこうして助かった! そしてかい君を助けられた!」


 言ってフミコはタイムコンソールを懐にしまうと再びカイトに抱きつく。


 「かい君! あたしはもうかい君から離れないよ! かい君と一緒に最後まで戦う!」


 そう言うフミコをカイトも抱きしめ返し、そして頷いた。


 「あぁ、そうだな! 俺もフミコをもう離さない。だから決着をつけよう! このクソッタレな因果の渦にケリをつけよう!」


 言ってカイトはフミコを引き離す、そしてお互い見つめ合うと手を繋いでアディルハイトへと向き合う。


 「決着をつけるぞ! アディルハイト!! お前を倒す!! すべての世界に生きる命を守るために!! ここですべてを終わらせる!!」


 叫んでカイトはアビリティーユニットを振りかざす。

 グリップ底のアブソーブ・コネクターが輝き、アビリティーチェッカーからすべての能力のエンブレムが投影され、アビリティーユニットから飛び出すレーザーの刃に飲み込まれていく。


 『All ability attack』


 アビリティーユニットから電子音声を発する。

 そしてそのままレーザーの刃を振り下ろした。


 その一振りは次元を斬り裂く。


 同じくフミコも首飾りの勾玉を握って引きちぎると頭上に掲げる。

 そしてそのまま勾玉をアディルハイトに向かって投げつけた。

 すると飛んでいく勾玉が目の前のアディルハイト周囲の時空を破壊していく。


 それらの攻撃にアディルハイトがはじめてよろめく。

 しかし、決定打にはほど遠い。


 そんな時だった。

 カイトとフミコの背後から誰かが声をかけてくる。


 「ちょっと! 私を忘れてない?」

 「その声は!?」


 カイトが振り返ると、そこにはケティーがバズーカー砲を抱えて立っていた。


 「ケティー!!」

 「はーい! 川畑くん、私も一様は仲間なんだからもっと頼ってくれてもいいんだからね?」


 そんなケティーを見てフミコの表情が一気に不機嫌なものになる。


 「なんでいるの?」

 「ちょっとフミコ! その言い方おかしでしょ!! 最終決戦に駆けつけるの普通じゃない!?」


 ラスボスを前にいつもの口喧嘩をはじめる2人を見てカイトは気が抜けてしまった。

 ここにきてなんとも緊張感に欠ける光景である。


 カイトはため息をつくと、口元を緩ませて2人に声をかけた。


 「はいはい、口論ならまずはすべてを終わらせてからにしようぜ!!」

 「かい君……うん、そうだね! 今はあれを倒すのが先だね」

 「そうよね、すべての世界がなくなっちゃ商売なんてできないしね!」


 言って3人は並び立つとアディルハイトを睨み付ける。


 「さぁ、終わらせるぞ!!」

 「うん!」

 「当然!!」


 そしてアディルハイトへと攻撃を仕掛けようとしたその時だった。


 「ちょっと待ったー!!!」


 また後ろから声が届く。

 振り返ると、そこには今までの訪れた異世界で出会った者たちに、カイトが能力を奪い殺したはずの転生者、転移者、召喚者たち全員が勢揃いしていた。


 「俺たちもいるぜ!!」


 そう言う彼らを見て、カイトは小さく笑う。


 「まったく……お前らってやつは」


 困った顔をしていると、フミコが笑いかけてくる。


 「かい君、これならきっと」

 「あぁ、勝てる! あのクソやろうにみんなの思いをぶつけてやろう!!」


 言ってカイトはレーザーブレードを突き上げた。


 「行くぞ!! 俺たちの根性見せてやろうぜ!!」


 そう叫ぶと、集結した大勢も同じく拳を突き上げてかけ声を上げた。

 そしてカイトと大勢はアディルハイトとの最後の戦いに挑むのだった。



 最終章:新時代の夜明けへ…         完。






 「いや、ちょっと待て!! なんじゃこれ!!」


 思わず叫んでしまった。

 これは仕方ないだろう。だって本当に唐突で意味がわからない。

 いや、ほんとになんだよこれ? 突然すぎんだろ?


 そんな叫びの直後、部屋の照明がつき映像を流していたスクリーンがどこかへと消え去ってしまった。

 スクリーンが消え去ると、そこは次元の狭間の空間内の食堂の中であった。

 そしてテンションの高い2人がどこからかやってくる。


 「ちょっとちょっとカイト君さぁ? ツッコミはやくない? せめて俺たちの戦いはこれからだエンドまで待たないといけない系っしょ?」

 「そうそう、そこではじめて打ち切りエンドか~いってツッコミが際立たね?」


 そんな事を言いながら2人組は自分の隣にくると馴れ馴れしく肩に手を回してくる。

 なんだこいつら? と怪訝な目を見ていると、2人のうちの髪の毛をオレンジ色に染めている男がやれやれと肩をすくめる。


 「ちょっとちょっと~? 待ってよカイト君ひょっとして俺らの事忘れた系? ですか? ひどくね?」

 「いや、正直俺こんなチャラ男と知り合った覚えないんですが?」


 そう言うと今度は自分の肩に手を回してきている少しワニ顔の男が笑いながらバンバン背中を叩いてくる。

 正直、ウザくなってきた。


 「え? それマジ本気だして言ってる? 毎回会ってるじゃん?」

 「いや、いつだよ?」

 「いつも異世界から戻ってくるたびに会ってんじゃん! 動画も一緒に撮ってるっしょ?」

 「は? 何それ?」


 本当に何言ってるんだ? って顔をするとチャラい2人の男はようやく、顔を見合わせてなるほど~と頷き合う。


 「はいはい、そういう系ね? はい理解した」

 「はは! それ絶対理解してねーじゃん!」

 「……いや、さっきからほんと何なの?」


 呆れた表情で言うとチャラい2人は売れないラッパーのような動きをして自己紹介を始めた。


 「俺たち渋谷系Gチューバー、エントランスのGたろうと」

 「Gねちぃで~す。よろちくびー」

 「まーた下ネタ言ってんじゃんwwwwwこいつマジパねーわwww」


 そんな事を言って勝手に2人で爆笑してるウザいチャラ男たちを見てようやく思い出した。

 あぁ、いたねこんなキャラ……すっかり忘れてた。


 「ちょっとちょっと! 忘れてたって酷くない? 一様設定では異世界から次元の狭間の空間に戻ってくるたびに絡んでるって設定なんだけど?」

 「あ、そうなんすか? 番外編1以来まったく出てないのでてっきりなかったことになってたかと」

 「それはいくらなんでも無理じゃね?」


 そう言ってゲラゲラ笑いながら自分の周りで話を続ける2人を見て、これはもう天誅すべきだろうか? とアビリティーユニットを出すと2人は突然声のトーンを下げた。


 「え? ちょっとカイト君?真顔でアビリティーユニットこっちに向けるの止めてくれる? ちょっと落ち着こう?」

 「ほんと一回冷静になろう? ね? それ下ろして? こっちに向けないで?」

 「…………」


 このやり取り前もやったような気がするなと思いながらアビリティーユニットを懐にしまう。


 「で? 今回もGodtubeとかいう怪しい動画アプリに投降する動画を撮影するのか?」


 ため息をつきながら聞くと2人はテンション元に戻して、チャラい動作をしながら今回の企画を説明する。


 「何言っちゃってる系? 今回は本作の連載開始から1周年を迎えるって事でアニバーサリー企画しに来たに決まってんじゃん!」

 「マジで台本くらいちゃんと読まないと大御所にマジ大目玉っしょ?」


 いや、お前らちゃんと台本読むのかよ……真面目か!


 「そう言うわけで今回から1周年企画はじまるよ! とりあえず何か質問とかあったら感想に書いてね! でないとやれる事ないから!」

 「はは! マジうけるんですけど~」

 「いや、なんで企画はじまるよって言ってる傍からそんなネタなし状態なの? アホなの?」


 そうツッコむと2人はゲラゲラ笑うだけだった。

 うむ、大丈夫なのかこれ……

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