ローガン
「おい、ノア、起きろ、ノア、目を開けてくれ」
「ノア兄、起きて、死んじゃ嫌だよ」「わんわん、わん」
ゆさ、ゆさ、体を揺らされる。
うーん、何だ?意識がゆっくり戻っていく、父さん、ミリア、ウルツの声がする
「ん、おはよう、父さん、ミリア、ウルツ」
父さんとミリアとウルツが泣きながら抱きついてくる。
「うぉー、ノア、良かった、本当に良かった。」
「ノア兄、良かった」「わふ、わふ」
「えっと、これ、どういうこと?」
「気付いたようだな?」
イスに座り、こちらを見ている体格のいい強面の男、ギルドマスターのローガンさんだ。その横にレノンさんがいた。
「ノア坊、驚いたぜ、家に着いたら、ミリアちゃんは泣いてるし、ノア坊は倒れてるし、それ見たモアメットが発狂して叫びだすしでよ、とりあえずオリビアちゃんは家に帰しておいたぜ。」
「はぁー、すいません、オレ、倒れてたんですね…」
「うむ、モアメット、お前もそろそろ冷静になれ、息子のほうが冷静だぞ」
「はい、すいません、ローガン先輩」
「馬鹿もん、人がいる前では、ギルドマスターと呼べと言ったろ」
「は、はい、すいません、ギルドマスター」
ん、何かやけに皆、仲良いな? 昔からの知り合いか?
「ねえ、父さん、ギルドマスターとレノンさんは冒険者ギルドの職員になる前から知り合いだったの?」
「ん、ああ、そうか、ノアにはまだ、話してなかったな」
それから、眠そうなミリアとウルツを寝かせ。
ローガンさんが、それぞれの関係とフロルの町に来た理由を色々と話してくれた。
父さん、ローガンさん、レノンさんは、アーリヤ王国の人ではなかった。
元々は、北方に位置するカザーム王国の出身らしい。
3人はカザーム王国のレギンという町の出身で、歳も近く近所だった事から昔から良く遊んでいたそうだ。
ローガンさんとレノンさんは、父さんより年上で先に冒険者になり一緒のパーティーを組みランクAまで上がったらしい、父さんは何年か後に冒険者になり違う人とパーティーを組んで、各地を回っていたという。
20年近く前、アーリヤ王国が兵を集い、冒険者や傭兵を雇い、ディザール山脈という場所を領土に入れようと軍を動かした。
ディザール山脈は、ミスリルや様々な鉱石が取れる事で有名だった。そこに採掘場を造り、鉄、銅、銀、金、ミスリルを大量に得る、それがアーリヤ王国の目的だった。
「それってディザールの悪夢ですか?」
「ノア、お前知っていたのか?」
「はい、教会で教わりました、ディザールに進行したアーリヤ軍は大量のモンスター達と戦う事になる、そしてその時、三万人いた兵が撤退時には、5千に減っていたという事件ですね…」
「ノア坊、10歳なのにお前、頭いいなー そうだ、そのディザール山脈の戦いにオレとローガンはいたんだ…………」
「うむ、今、考えても思い出したくない、あれは戦いなぞと呼べる物ではなかった。あの時のあの……」
「おい、やめろ、ローガン、それ以上はやめろ……」
珍しくレノンさんが声を荒げた。オレも父さんも困惑する。
「あ、ああ、すまん、これ以上は、脱線してしまうところだったな」
その戦いで、アーリヤ王国の辺境伯と仲良くなり、フロルのギルドマスターに任命された事、父さん達のパーティーがたまたま来て、再会した事など色々話してくれた。
「その様子だと、体に異常はなさそうだな、今日あった事を教えてくれないか?」
「はい、大丈夫そうですね。体に以上は、ん?…」
「どうした?ノア、体が痛むのか?」
長袖を着てるから気付かなかったけど、手首から肘にかけて青いトライバルタトゥーのような物が彫られていた。
「なんじゃこりゃー」
オレの声がフロルの町に響いた。