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狼の国

「待て」


オレの聞き違いじゃなければ、大きなフェンリルが喋ったように見えた。


「ガル、ガル、ガルル、ガル」


ワーウルフと会話しているように感じる。


「今、フェンリルが喋った?」


あまりの出来事につい声を出してしまう。


「そうか言葉が分からぬか、アデルよ、こやつに分かるよう人の言葉で話してやれ」


「畏まりました、姫…」


大きなフェンリルが、ワーウルフのリーダーらしき男に命令した。


「それで、アデルよ、母上は無事か? 父上は戻られたか?」


「王は戻られました、今現在、眷属をつれて残党を駆逐してます、しかし王妃は残念な事に……」


「そうか…………… 誇り高い最後だったか?」


「は、とても誇り高く、気高い最後でした、王が帰るまで少ない兵で10倍近い敵を食い止めて、我々の為に自身を顧みず闘い続けてくれました…」


ガリ、大きなフェンリルの口から血が滲んでいる。


「ゴブリンやオーガのウジ虫共め、父上がいない間に攻めてきおって」


「姫、怒りは分かりますが、今は落ち着き、王と合流する事が先決かと」


「く、そうだな、すまない、冷静さを欠いていた…」


話がついていけず呆然と立ち尽くす、オレの回りを尻尾をブンブン振りながら小さいフェンリルが楽しそうにトコトコ歩き回っていた。


「お前のせいで大変な事になってるんだぞ、分かってるか?」


そう言って小さいフェンリルの頭を撫でる、とても気持ちよさそうに


「わん、わん、わん」と鳴いて返事をする。


すると、大きなフェンリルがこちらに話しかけてきた。


「人間の子よ、弟が世話になった感謝する。何か欲しい物はあるか?褒美を取らせよう」


うわ、びっくりした、いきなり振られた、確か姫って言ってたな、となると

オレは少し考えた後、前世の知識を生かして片膝をつき話しはじめる…


「は、感謝の意、誠に痛み入ります」


アデルという、ワーウルフが「ほう」とオレを値踏みするように声を出した


「ふ、子供が無理をするな、敬語を使わなくてよい、アデルも良いな?」


「は」と小さい返事をして、アデルは他のワーウルフに周辺警護の指示をだす。


この場にいるのが、オレと姫、弟、アデルの4人になった。多分、人払いだろう。


「すいません、可能ならば、今回あった事を教えて頂けませんか?」


「うむ、良いぞ、私も教えてほしい事がある」


「分かりました。では、自分から話します。まず最初に…………」


なるほど、だいたい現状が整理できた。


1日でとんでもない知識量が頭に入ってくる、博識のスキルがなければ頭がパンクしていたかもしれない。


まず、人間が東の森と呼んでいるこの森は、狼神「ウル」が統治する狼の国だという…


狼達はユグドラシルという大樹を守りながら暮らしていて、森を侵略者達から常に守ってきたという、しかし、この200年は「ウル」とその眷属達に恐れをなし、許可を得た魔物以外は森に入ろうとはしなかったらしい…


しかし狼の森は広大で食糧も多く、他の荒地の魔物が常に狙っていた。


そして、「ウル」の妻のフェンリルが妊娠し、出産が近いタイミングで

盟友の巨人族から戦争の援軍を要請される。


仕方なく、「ウル」は、足の早い上位眷属を連れて援軍へ行く


「ウル」を恐れて手を出せなかった、他のモンスターの国や集落も、新しいフェンリルがこれ以上増えて狼の国が強くなられては困ると

周辺で1番数が多い、ゴブリンとオーガの部族が上位種を含む3万の軍勢を率いて奇襲したのだ。


いくらフェンリルでも、出産後に本来の力が出せるはずなく


娘にその弟を託し逃がしたのだった。


アデルは、王妃の近衛隊長で姫の護衛を任され、後を追って来たらしい。


ここにある死体の山は、弟フェンリルに危害を加えようとした、冒険者とモンスターの成れの果てだと言う…


「なるほど、だから、モンスターも出なかったのか」


森の支配者たるフェンリルがいるから、他のモンスターも隠れてたのか


「ところでお前、ちゃんと説明分かってる?」


小さいフェンリルの頭を撫でると嬉しそうに、ワン、ワン、ワンと尻尾を振ってはしゃいでいる。


「弟は、生まれて間もないから、人の言葉はまだ喋れん」


笑いながら、姫フェンリルは答えてくれる。


「人間よ、私からの質問だ、名前を教えてくれぬか?」


「ノアです」


「ノアよ、いきなりだが、少しの間、弟を預かってくれぬか?」


「え、何でですか? 家族で暮らしたほうが良いと思うんですが…」


「うむ、その事だが、我らはユグドラシルを守る一部の兵を残し、少々国を空けようと思う、激しい戦いになるだろうから、まだ幼い弟を連れて行けぬのだ、だからしばらく預かってほしい。 まさかと思うがフェンリルである、私の頼みが聞けぬとは言わぬだろうな?」


「は、はい、任せて下さい」


いきなり、威圧感だすの反則だろ…


すると、姫フェンリルが語りだした。


「我らの領土を土足で踏み入れ、母上を殺した、ゴブリンとオーガのウジ虫どもに、この世の地獄を全て見せて根絶やしにしてくれるわ」


フェンリルの姫が笑いだし、アデルさんも笑っている


「我ら、狼は怨みを絶対に忘れない、何があろうと首を噛み切りますぞ」


アデルさんも高らかに宣言し、良く言ったみたいな事を言う姫


オレは、心の中で強く思った。


お家かえりたい……


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