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フェンリル

「なんじゃこりゃー」


この世界に転生して1番大きな声をあげてしまった。

というか、なんじゃこりゃーという言葉を初めて使った。


白い犬を鑑定したところ、名前の欄が空白で、種族の欄に


「フェンリル」という表記があった。


それ以外のステータスが鑑定不能だった、鑑定Lvが低いからだろうか?


「お前、パン食べたいの?」


「わん」


あれ、フェンリルだよね?ただの白い犬じゃないよね?とりあえずパンあげよう。


「ほい、食べな」


パンを差し出すと、美味しそうにバクバク食べていた。尻尾ブンブンだ


「わん」


食べ終えるとオレに近寄り袖を噛んで引っ張ってくる。


「ん?付いて来いって事?」


「わん」


そうして、森の奥にトコトコと歩いて行く。


ん?、どこ行くんだ?


不思議に思ったが、とりあえず白い犬を追いかける。


ん、結構歩くな?というか距離が離れるとオレが来るのを待ってる?


何か嫌な予感がするな、考えろ、何だ? 何かが引っ掛かる。


くそー、分かんねー、何だ?、森に入ってボーンラビットを狩って


「あ」


ヤバイ、とんでもない事態に巻き込まれてるかもしれない。


そうだ、そうだよ、ボーンラビットを狩って以降、森でモンスターに遭遇してない。


町の外のモンスターの少ない所ですら、こんなに出会わなかった事はない。


ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ………、頭の中に文字が続く。


冷や汗が止まらない。


白い狼が立ち止まり、こちらを見て茂みの奥に入って行った。


「はあ、はあ、とんでもない日だ」


ラッキーとか笑っていた時の自分に戻りたい。


「くーん、くーん」


何だ? 呼んでるのか? 近付くと茂みの奥から強烈な血の匂いがする。


変な夢でも見てるみたいだ、足が震える、息がしづらい、体が逃げるように言っている。


けど、だけど、ここで逃げて町に被害が出たら、父さんやミリアが……


最悪逃げるにしても情報だけでも持ち帰って、冒険者ギルドに伝えなくては


「い、行くぞ」


気力を振り絞り、茂みの奥に入った。


「はは、ははは、」


現実味のない光景に笑いが込み上げる。頭のネジが外れかける


木々がへし折られた場所には広い空間があり、八つ裂きにされた、100匹近いゴブリン、オーガ、数体の人間が血だまりの中に浸っていた。


地獄が降ってきた。


地獄には2匹のフェンリルがいた。


1匹は、小さなフェンリル


もう1匹は、体長5メートルは超えるかもしれない大きなフェンリル。


大きなフェンリルの回りを小さいフェンリルが走り回っている。


オレは考える事を止めて、ただ、立ち尽くしていた。


大きいフェンリルはオレに気付くと、殺気を放ち威嚇してくる。


すると、フェンリルの回りに急激に魔力が集まりだし、大気が唸る。


「あ、」


あ、多分、死んだなこれ、今のオレでは逆立ちしても勝てない。


「ごめん、父さん、ミリア、オレ、死んだかも」


死を覚悟し、目を閉じる


「くーん、くーん」


鳴き声がしたので、目を開けると先ほどの小さなフェンリルがオレの側を嬉しそうにくるくる回っている。


すると、大きなフェンリルから殺気が消えた。


ん、何だ? 殺気が消えた? どう判断して良いか分からず様子を見ていると


「ガサガサ、ガサガサ…」


東の方角から何かが急速に近付いてくる音がした、今度は何だ?


「ガルル、ガルル」


東側の茂みの中に何かがいる、そして数が多い、殺気を感じる…


恐怖で、東側の茂みから目が離せない。

オレが東側に警戒を完全に傾けたその瞬間…


「パキ」


背後から、枝を踏むような微かな音がした。


しまった、心の中でそう呟き、後ろを振り向くと


10体近いワーウルフが、攻撃態勢になっていた。


ワーウルフの爪がオレの体に突き刺さろうとする、その瞬間


「待て」


という低い声が響き、ワーウルフが動きを止めた。


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