自然魔法
「ラズリ、大丈夫か?」
ゴブリンを粗方片付たオレ達はラズリと合流し
残った、ホブゴブリンとゴブリンアーチャーと対峙する。
高見の見物をしていたホブゴブリン達は、まさか他のゴブリン達が倒されると思っていなかった様で明らかな動揺の顔を見せていたが
「ギャー、ギギャー、ギャー、ギャー」
ゴブリン達はお互いに何か話しあうと、覚悟を決めたらしく
こちらに向かって戦う姿勢を示し威嚇音を発してくる
「ギヒャ、ギギャー、ヒャ、ヒャハ」
途端にホブゴブリン逹がオレ逹に向かって攻撃を仕掛けてくる、その一方で木の陰にいたゴブリンアーチャーは角笛を吹き、オレ逹とは真逆の方向に走って逃げていった。
「ヴォーーーーー、ヴォーーーーー」
ゴブリンアーチャーの吹く角笛の音は果樹園の全体に響き渡っていく…
「くそ、やられた…」
オレはウルツと共にホブゴブリンを倒して、ゴブリンアーチャーを追おうとするが、次の瞬間…
「ヴォーーー」「ヴォーーー」「ヴォーーー」
オレ逹の周り、四方八方からゴブリン達の角笛の音が聞こえ始める
「な、なあ、ルーリエ、これって…」
「ええ、仲間を呼んだわね… ゴブリンが集まってくるわ…」
「どうする…」
オレは絶望的な状況になり、頭をフルに使い考える
このまま戦っても勝ち目はないだろう…
唯一の生存確率が高い方法は、地下牢に残した虫達を見捨てて、オレ逹だけで一点突破で果樹園を抜ける方法だ… これなら、ウルツとルーリエの連続魔法とオレのアイスミストの目眩ましで何とか逃げきれるかもしれない…
けど、それだとラズリの守りたい虫達が…
それにきっとその方法だと、ラズリはこの場に残り最後まで戦うだろう…
くそ、くそ、何かないのか… 全て上手くいく方法が…
オレは考えが纏まりきらず、焦りから苛つきが押し寄せる
すると下を向いたまま、ラズリがオレに話しかけてきた。
「ねぇ、ノア、私とテイムを解除してほしいの…」
オレは、いきなりの話しに困惑する
「な、何言ってるんだ… こんな大変な時に冗談言うなよ」
「私ね本気だよ、弱い人間のノアの事が嫌いになったの… だからテイムを解除してほしいの…」
「な、何だよ、その言い方、大体こんなに悩んでるのもラズリ逹の為なんだぞ…」
「だったら、お互い悩まなくて良いね… テイムを解除してノア…」
「な、冗談でも言って良いことと悪い事が…… あ…」
その時、オレはようやく気付いた、ラズリがわざとオレを怒らせてテイムを解除しようとしている事に、さっきからずっと顔を下に向けているのも、それを隠す為だろう…
この場に残ってもオレ達が生き残る可能性が少ないと分かっているから…
ラズリが残れば、オレ達も残る選択をしてしまうから…
ルーリエを見ると複雑な顔していた、彼女も分かっているのだろう…
このまま、この場にいても死を待つだけだと… だから何も言えないのだ…
どんな選択をしても誰かが死んでしまうかもしれないから…
オレが迷っていたばかりに、仲間に余計な気を使わせてしまったらしい…
「オレはテイムは解除しないし、ラズリや虫達を残していかないよ」
すると、ラズリが動揺して声を上げる
「な、なんで? 私はノアの事は嫌いって言ったのに… なんで…」
「ラズリがオレの事を嫌いでも、オレはラズリの事好きだぞ…」
「え…」
ルーリエが後ろで「あれは友達の好き、あれは友達の好きよ…」とブツブツ呟いている…
ラズリは顔上げ、オレの顔を見つめてくる…
オレの思った通り、ラズリは大粒の涙を流しながら泣いていた
「私は、女王なの… 皆を守らないといけないの… だから戦わないと…」
「うん、知ってるよ、ラズリは優しいからな…」
「私は、全然優しくないよ… 本当は、ノアをここから逃がさないといけないのに… なのに… ノアが残ってくれるって、好きだって言ってくれた時… 本当は駄目なのに… 嬉しいって思ったの…」
ラズリは泣きながらオレに話してくれた
すると角笛が響き渡り、オレ達の視界にゴブリン達の大群が姿を見せる。
ルーリエとウルツが斥候してくれた時に見た、本体だろう
パッと見て、300~350体はいる
「ちょっと、ノア、悠長に話してる場合じゃないわよ」
「ああ、分かってる… オレは、ラズリと虫達を助ける為に戦う、ルーリエとウルツは…」
「ノア、あたしは最初に言ったでしょ、ノアが行く所なら何処でも一緒に行くって…」
「ワン、ワン、ノア、ウルツ、イッショ」
「2人共… ありがとな」
オレはルーリエとウルツに感謝し、ゴブリンの大群を迎え撃つ準備をする
「ねぇ、ラズリはドルイドなら自然魔法が使えるのよね?」
ルーリエが唐突に質問をしてくる
「ああ、鑑定した時は、自然魔法Lv5って書いてたけど…」
「だったら、自然魔法を使ってみたら? このまま戦闘に入っても、あたしとウルツの魔法の後は乱戦になるだろうから… バインド系の魔法なら、敵の動きを止めたりするのに役立つかもしれないし…」
「確かに、ラズリの自然魔法を見たことなかったな… なあ、ラズリ、何が使えるんだ?」
「え、えっと私、人間になった時に初めてドルイドだって分かったから、自然魔法は何が使えるか分からないの… 風魔法は使ってたんだけど…」
するとルーリエは少し考えてから、ラズリにアドバイスする
「うーん、多分大丈夫だと思うわ、鑑定で書いてあったのなら多分使える筈よ、集中して頭に浮かんだ文字を言葉にするの…」
「頭に浮かんだ文字を言葉に… うん、やってみる」
ルーリエの言葉からヒントを得たラズリは、目を瞑り集中しながらゆっくりと言葉を口にしていく
「メキメキ、メキメキ、パキパキ、バキバキ、メキメキ」
「ギギャ?、ギギャー、ギギャ、ギギャー」
ラズリが詠唱を始めると、地面から木々が伸びていき、大地が揺れる
ゴブリン達も異変に気付いたらしく、警戒の声が響く
「な、何だこれ…」
「ち、ちょっと、これって…」
オレ逹やゴブリン達の驚きの声を余所に、ラズリの詠唱は続く
集中していたラズリが全てを詠唱を終えた時には
夥しい数の木の人形達がラズリを守る様に佇んでいた
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