ガルム
「ワオーン、ワオーン」
ウルツの遠吠えが響く、うーん、ウルツよ、せっかく霧を出して逃げたのに場所を教えるような遠吠えは… うん、まあいいか…
ガサガサ、ギチギチ、メキメキ、 ウルツの遠吠えにより、虫モンスターが集まってくる。
ブンブンブンブン、うわ、次は飛んできたよ、気持ち悪い…
大スズメ蜂と、クワガタ、大ムカデだ、うわ、これは、ヤバイな。
「ウルツ、大ムカデとクワガタ頼めるか?、オレは大スズメ蜂を殺る」
とりあえず、弓で飛んでるスズメ蜂を落としていく。
「くそ、狙いを定めようとすると、連携で攻撃してくる」
ブーン、ブンブン、ブーン、ブンブン、
「ずっと聞いてるとイライラしてくるな」
とりあえず回避に専念しながら、何体か倒したけど、時間が経つにつれ数が多くて対応仕切れなくなっていくな
「はあ、はあ、はあ、」
ウルツを見ると、まだ、大丈夫そうだった。オレの3倍近い敵を抑えてくれている。
その時、虫達が地中から這いずり出てきて、完全にオレとウルツは囲いこむ
「こ、これは、完全な四面楚歌だな、はぁ、はぁ」
「ギギギ、ギギ、ギ、ギチ、ギチギ、ギギ、ギギ」
「狼の国、弱い、狼、献上、女王に、子供、食べ」
虫達が、トドメを刺そうと一斉に跳びかかってきた
その瞬間
オレの後ろに回りこんでいた虫達が一瞬で細切れになった。
「え、何が」
恐怖に駆られ後ろを振り向くと
そこには、胴体が黒く胸元が血のように赤い禍々しい巨大な狼がいた。
その威圧は歩く死のようだった…
「今の話し聞いたぞ、虫どもよ 我ら狼の国を裏切っただけでなく、我が兄の息子を殺すとほざいたな、兄の右腕として、貴様らを冥府の業火で灰にしてくれる」
巨大な黒い狼は蹂躙を開始する、オレとウルツを囲んでいた虫モンスター達は、一瞬で黒い炎に焼かれて周り一帯ごと灰になった。
「ワン、ワン」
ウルツがオレを心配して駆けてくる。
「ワン、ワン、ワン、ワオーン、ワオーン」
「ガルル、ガルル、ガル、ガルル」
ウルツは、黒い狼と話しをしていた…
あれ、ウルツ怒ってる?
黒い狼が、オレにも話しかけてくる
「人の子よ、無事か?」
「はあ、はあ、はあ、何とか」
「我が名は、ガルム、貴様がノアで間違いないな?」
「は、はい」
最初より、苦しくない、威圧を解いてくれたのかもしれない。
「姫に話しは聞いてある、兄達の遠征中に甥を預かってくれるらしいな」
甥? この狼、ウルツの叔父さん?ウルの兄弟?
「は、はい、姫様に言われてます」
「うむ、先ほどは我らのいざこざに巻き込み、すまなかった」
「いえいえ、逆に助かりました、危ないところだったので」
「うむ、王妃が死んでから、狼の国でも、先ほどのように従属をしていたモンスターどもが、各地で暴動を起こしている、これを鎮めるには、今回の戦争を仕掛けてきた、ゴブリンとオーガの部族を皆殺しにし、狼の威光を示さねばならん…」
「あの虫は、もともと狼の国に属していたのですか?」
「ああ、元は、違う土地を追われたモンスター達だ、果樹を育てて果実を献上する代わりに土地に住む事を、兄が許したのだ。
兄は姫とスコル、グレードウルフらを連れて戦争に向かった。
我は、ユグドラシルの守護を任され、ワーウルフらと共に国境の守りを固めていたのだ、その時たまたま、遠吠えが聴こえ、駆けつけたのだ…」
へー狼の国にも、封建制度みたいな物があるのか……
「ありがとうございます、お陰で助かりました」
「甥とその友を助けるのは、当たり前の事だ」
この狼この世界で出会った中で1番の人格者かもしれない。
「しかし、甥には怒られてしまった…」
「え、何でですか?」
「オレ達の冒険を邪魔するなと」
その言葉を聞いてオレは胸が熱くなった。