プロローグ
目を開けるとオレは白い世界の中にいた。
「あれ…? 何だここは?」
仕事帰りにラーメンでも食おうと思って歩いてた筈なのに…
「気づいたかのぅ 鈴木大地よ」
「え!?」
いきなり話しかけられ驚き、周りを見渡し声の主を探す、すると妙に貫禄のある爺さんが立っている
目があうと、面倒そうにため息を吐き
「はぁ〜 今日は、これで46人目だったかのぅ… 疲れるのぅ… はぁ~」
などと愚痴を零している
「1回しか説明せんぞ」
「は?」
「とりあえずワシが神じゃ」
「え!?」
「鈴木大地よ、お主は死んだんじゃ」
「へ!?」
「そして異世界転生するんじゃ」
「な!?」
「準備は良いか?」
「いや、いや、ちょっと!」
「何じゃ? 次もつかえておるからの早くしてほしいのじゃが…」
「いやいや、ちょ、ちょっと待って下さい、いきなり死んだとか転生とか言われても頭が追いつかないですよ」
「鈴木大地よ、驚くのも無理はない、慣れじゃ、うん、慣れ」
「慣れって… あの… 死因は何ですか?」
「事故じゃ」
「み、短か!? あの… 神様、もうちょっと詳しく…」
「交通事故じゃ…」
「………あ、はい…」
何なんだこの神様は、めちゃくちゃ適当すぎるだろ…
早く終わらせたいのが態度に出すぎてるよ…
オレの読んでた漫画やラノベだと、詳しく転生後の世界について教えてくれたり、チートスキルやチート職業を授けてくれたりするんだけどな…
「そろそろ良いかのぅ?」
「ち、ちょっと待って下さい、まだ聞きたい事が…」
オレは、焦りながらも駄目元でスキルや職業の事を口にする。
「あの… スキルとか、職業は選べたりしますか?」
すると、何か神様の機嫌を損ねたらしく
「そーゆうとこ、そーゆうとこじゃよ、鈴木大地よ、本当にこれだから最近の転生者は… 口を開けば、やれチートスキルだやれチート職業だと… 本当に嘆かわしいのう… ワシらの若い頃は、何も無いのが当たり前の……」
神様の地雷を踏んだらしく、そこから暫くの間、まるで親戚の叔父さんのような武勇伝を踏まえた説教が続いた。
「あ、あの、神様、最後に質問良いですか?」
「うぉほん、ん、何じゃ? 時間も押しとるし、これが最後じゃぞう…」
「はい、あの… さっきから名前が出る、鈴木大地って誰ですか?」
「え…」
すると神様は、乾いた笑みを浮かべ
「ふぉ、ふぉ、ふぉ、冗談は良くないぞ、鈴木大地よ、お主は冗談の才能があるようだな… きっと、冗談のチートスキル持ちじゃ! 神であるワシが驚く事など、2000年ぶりじゃわい、ふぉ、ふぉ、ふぉ…」
「いえ、冗談ではなく、オレの名前は、桜井湊っていいます」
「ふぉ……………………」
神様の笑いは急に止まり、少し考えた後、優しく話しかけてきた。
「湊君や、欲しいスキルや、職業はあるかのぅ?」
「いえ、最近の転生者には勿体ないです、何でも神様の若い頃は…」
「み、み、湊君は、良く見たら顔がとてもイケメンじゃな、将来はアイドルや芸能人になれるかも知れんの… うん、うん、そうじゃ、君はもうアイドル、ワシの中のアイドルじゃ、うん…」
「え、将来って、先程、神様に死んだって言われたんですけど…」
「…………………」
長い沈黙が続き、神様がやっと語りだす。
「湊君よ、人はな誰でも間違いを起こしてしまうものじゃ、うん、しょうがない、そう、間違いは誰でも…」
それから神様は、10分くらい1人で喋っていた
色々ツッコミ所満載だが、我慢して話しを進める。
「オレは、元の世界には帰れないですか?」
「残念ながら、お主の世界では死んだ人間を蘇らせる事は出来ぬのじゃ…」
(まあ、そりゃ、そうか…)
「じゃあ、神様、転生しなければどうなりますか?」
「輪廻のことわりから外れ、魂が消滅してしまうのじゃ…」
「なるほど…」
という事は、悩んでも結論は1つか…
神様は、腹立つけど転生するしかないな
他に選択肢がない…
「はぁ… オレ、転生します!」
「すまんのぉ… 湊君、こちらの不手際で…」
「いえ、まあ、こうなったらしょうがないですから…」
「……では、始めるぞ」
神様が何かを念じ始めると
体の回りを光の粒子が包み意識を完全に奪っていく
そして神様の間違いで転生した異世界生活が始まった。