生い立ちと出会い。
私の母の口癖は、
「お金は大事よ。お金が無ければ幸せな生活なんて送れないわ。」
こういう思考の持ち主だ。
だから母は医師である父と結婚したんだと心から納得できる。母の見た目からは、もっと粋な人を選びそうな気もするけれど、経済力に勝るものは無さそうだ。
母の性格に似たのか、この環境で育ったからなのか、私は成長していくにつれて夢を見ることは無くなっていった。
そんなある日、私は飼い犬のノエルと散歩に出掛けた。休日はいつものんびり散歩をする。帰り道にある公園のベンチに座ってそこで読書をするのが日課なのだが、この日は予想外なことが起きた。
家を出た途端、ノエルがいきなり走り出した。
散歩でこんなに早いスピードで走ったことは今までで一度も無い。すごいスピードだ。
「ノエル!どうしたの?こんなに急いで!」
リードを引かれるままに走っていくと、いきなり
ノエルが吠え出した。
「ワンワン!ワン!」
その先にはラブラドール・レトリバーを連れた
高身長の青年がいた。
「ごめんなさい。ほら、ノエル!静かに!」
「大丈夫ですよ!トイプードルのノエルちゃん?ノエルくん?」
「あ、女の子です。」
「じゃあ、ノエルちゃんですね。」
「そちらは?」
「ラブラドールのレオです。雄です。」
「レオくん!初めまして!」
ノエルはすごく騒いでいるけど、さすがラブラドール・レトリバー。すごく落ち着いている。
「あ、私は凛って言います!あなたは?」
「え…あ…僕は…るいって言います。」
「るいさん!本当にすみませんでした。
びっくりされましたよね。ノエルがいつもこんなに走る事なんて無いんですけどね、、」
「いえ、大丈夫ですので全然気にしないで下さい!」
「すみません、ありがとうございます!」
それから、他愛のない話をして私達はその場を後にした。