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前作では、描かれなかったエピソード。
「何で…何で、魔物の氾濫が起きないのよ!?
私が【聖女】として大活躍する予定なのに!」
あの方がそんな独り言を言っているのを聴いたのは、偶然でした。
エミール様に早く会いたくて、以前エリー様に教えて頂いた、魔術科練に行く近道を通っていた時でしたわ。
私、そっと踵を返してすぐにエミール様のところに行こうとしましたけど、あまりの恐ろしさに足が竦んで動けなくなってしまいました。
「誰!?其処に居るのは?」
き…気付かれてしまいましたわ!
どうしましょう!?
ガサッ
「ニャ〜ン」
「何だ、猫か…脅かさないでよ。」
そう言ってあの方は、私に気付かずその場を立ち去って行かれました。
「危ないところでしたわ……。
偶然、猫が出て来てくれて助かりました……。」
と、突然背後に気配を感じたので振り向くと、其処には……
「偶然な訳ないでしょう。危ないところでしたわね。」
後ろに居たのは、エリー様の妹のケイト様でした。
「どうして此処へ?」
不思議に思って尋ねると、
「サーラ様が此処に入って行くのが、見えましたので追いかけましたの。
この先の開けた場所が、【猫集会場】ですのよ。」
「【猫集会場】?」
「『最近、此処を荒らす人間がいるから、何とかして欲しい。』と、頼まれまして。
どうやら、荒らしていたのはあの方だったようですね。」
頼まれたって誰にですの?
「ところで、今の話エミール殿下や風紀委員会に、報告した方が良いかと思いますけど。」
そうですわ!
惚けている場合じゃありません!
「で、では私、エミール様に報告してまいります!
ケイト様は、風紀委員会の方をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、わかりましたわ。」
ケイト様とは其処で別れ、私は急いでエミール様に報告しに行きました。
【魔物の氾濫】を望むなんて…あの方、【聖女】どころか、【悪魔】なのではないでしょうか?
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(サーラが立ち去った後)
「シルバー!もういいわよ。
出て来なさい……。」
「ニャ〜ン」
ガサガサッ
出て来たのは、立派な黒虎猫だった。
「貴方のおかげで助かりました。
さ、風紀委員会に報告したら帰るわよ。
オマエを寮の部屋で、飼っているのは内緒なんですから。
ちゃんと大人しくしていて下さいね。」
「ニャ〜」
ペロペロ…クシクシ……
呑気に顔を洗うシルバーを抱き上げるケイト。
まだつづきます。