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「わりと休日には」
「そういえばお前の撮る写真には、ここの風景が多かったな」
「はい。ケータイでよく撮るんですよ」
そう言ってナツキはケータイをカメラに見立てて、タカシナに向けた。
「あっ、良かったらタカシナ先生を1枚撮らせてくれませんか? もちろん、ネットには載せませんから」
「わたしの写真か?」
タカシナは怪訝そうな表情を浮かべた。
「はい! 部員達の写真はよく撮っているんですけど、顧問のタカシナ先生の写真ってほとんどないんですよ」
「…あまり写真に写るのが、好きじゃないからな」
「えっ、そうなんですか? ごっごめんなさい」
ナツキは慌ててケータイを下げた。
「…交換なら、良い」
「えっ?」
ナツキが顔を上げると、タカシナは優しく微笑んだ。
「わたしにナツキの写真を撮らせてくれるなら、映っても良い」
そう言って上着の内ポケットから、デジカメを取り出した。
「あれ? 先生も写真撮るの好きなんですか?」
「まあな。映るよりも撮る方が好きだな」
「あっ、ボクもです! …でも先生を撮らせてくれるなら、ボクも写ります!」
「交換成立だな」
二人は笑い合った。
「えへへ。じゃあ先にボクからで良いですか?」
「ああ。ここで良いのか?」
「はい! じゃあ撮りますよぉ」
ナツキはケータイを操作し、タカシナを撮った。
タカシナは撮られる瞬間、柔らかく微笑んだ。
滅多に見られない彼の微笑みに、ナツキは一瞬心を奪われる。
「あっ…」
「ん? どうした? 失敗したか?」
「いっいえいえ! それじゃあ次はボクの番ですね」
ナツキは自分の頬を軽く揉んで、笑みを浮かべる。
「どうですか?」
「ああ、良い笑みだ」
タカシナは満足そうに頷き、ナツキの笑みを撮った。
「ふふっ…。何だか恋人みたいですね」
思わず言ってしまった言葉に、ナツキは赤面してしまう。