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コウガは写真家として、シキは死体を見慣れているモノとして、写真に写っているのは本物の死体だということは分かっていた。
分からないのは、何故このサイトに死体の写真が載ったかということだ。
「死体って『美しいモノ』かな?」
イスの背もたれに寄りかかり、コウガは肩を竦めた。
「価値観など、人それぞれだろう」
そう言ってシキは興味なさそうに、タオルで頭を拭き始めた。
「まあそうだね。…この件、マカは絡むと思う?」
コウガは意味ありげに微笑み、シキに視線を向けた。
シキは少しの間考え、首を横に振る。
「ないな。同属が関わっていないし、アイツの関係者の関わることでもなさそうだ。マカは基本的に人間のすることに興味も関心もないからな」
「シビアだけど正しいな。人のすることは理解できないものが多いけど、だからと言って分かろうとしてもムダに終わることが多いし」
「俺はお前の方がシビアだと思うがな」
「それはきっと、キミに関わってしまったからだね。シキ」
「言ってろ」
シキはタオルを壁に投げ付けた。
それを見て、コウガの表情が歪む。
「シキ、タオルは洗濯機に入れてってば」
「面倒だ。お前がしろ」
「ったく…」
コウガはパソコンの電源を落とし、立ち上がった。
「そろそろ寝るぞ」
「はいはい」
何かにつけて、命令口調で傲慢。
だけど意外に彼との生活を楽しんでいるのだから、自分の趣味も悪いと言える。
…そう。あの死体の写真を『美しいモノ』と思う投稿者のように。
口元に笑みを浮かべながらコウガはタオルを洗濯機に入れ、シキが待つ寝室へ向かった。