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そう言ってコウガはシキの隣に寄り添う。
「…そう。じゃあ普通の人に気を付けることにするよ」
「キミも普通の人だろう?」
「とりあえずは、ね」
ヤレヤレというように、ナツキは肩を竦める。
「価値観は人間として、おかしいとは自覚している。だけどそれを隠す理性は持っているんだ。―あなたと同じようにね」
「…だね。オレとキミはとても良く似ているよ。機会があれば、また会おう」
「あっ、名前教えてもらっても良い?」
「オレはコウガ。彼はシキ」
「ボクはナツキ。また会えると良いね。コウガ、シキ」
「うん、じゃあね」
「………」
コウガは笑顔で、シキは無表情でナツキに背を向けた。
二人の姿が闇に溶け込む前に、ナツキはその後ろ姿を写メに撮った。
「…ホント、また会いたいな。ボクの同類」
ケータイの画面に映った二人の姿を見て、ナツキは狂気の微笑みを浮かべた。
そしてケータイをカバンに入れ、歩き出した。
人間の街の中へ―。
【終わり】




