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パソコンの捜査自体はずさんなものだった。
「あるいはそこまでボクの腕が上がっていたか。…くすっ」
警察でも発見できないほど上手く痕跡が消せたのならば、ナツキのコンピュータの腕はそれこそタカシナ並みと言えるだろう。
ナツキはタカシナのことを好きだった。一目見た時から、ずっと気になっていた。
そして彼もナツキに好意を抱いていたことに、ナツキ自身も気付いていた。
その理由は―ナツキがタカシナのパソコンにハッキングし、その情報を盗み見ていたからだ。
大好きなタカシナに少しでも近付きたくて、ナツキは密かにコンピュータの知識を上げていた。
そしてタカシナの携帯電話とパソコンのアドレスと電話番号から、ハッキングをしていたのだ。
その中にはナツキの写真と情報ばかり、詰まっていた。
タカシナが言っていた会社の情報はなかった。本当に侵入して見るだけで、盗ることはなかったのだろう。
「…ゴメンね? 先生。ずっと黙ってて」
ナツキは口元に笑みを浮かべた。
彼が半ば、ストーカーになっていたことにも気付いていた。
写真を隠し撮っていたり、情報を集めていることを知っていた。
だからはじめて車で送ってもらった時、彼は迷わずナツキの家に着けたのだ。
でも彼から告白してくれるのを、ナツキはずっと待っていた。
タカシナがずっと自分を追い求めていることに気付きながら、それを放置していた。
「まさかこんなことで告白してくれるなんてね。…何かキッカケがあればとは思っていたけど、世の中、分からないもんだね」
ナツキは肩を竦め、クスクス笑った。
大人しくも真面目だったタカシナは、自分達の立場や歳の差で告白することを躊躇っていた。
何かキッカケがあれば、してくることは分かっていたから、今回のは本当に意外だった。




