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だが二人とも、ハッキングという人には言えない趣味を持っていた。
おもしろ半分、そしてもう半分は自分の力を試す為もあり、いろいろな所に侵入しては、隠された情報を盗み見ていた。
「わたしはただ、侵入するだけでよかった。それを楽しんでいただけだった。だが…」
殺された男性はそのうち、情報を金に換え始めた。
もちろん、タカシナは止めた。
金が絡めばトラブルになることは分かっていたから。
しかし男性は忠告を聞かず、とうとう危険な情報にまで手を出すようになった。
そして会社のパソコンを操作し、金を横領した。
そこからはいろいろな会社の情報までも、操るようになっていったのだ。
「ニュースで会社のお金に手を出していたことは聞いていたんですけど、まさかそこまでとは…」
「そうだな。ニュースでは取り上げるには重過ぎただろう」
タカシナは暗い面持ちで頷いた。
「じゃあ…あの人はその危険な情報のせいで殺されたんですか?」
「…いや、アレはわたしのせいなんだ」
そう言って震える両手で自分の顔を覆った。
「先生のせいって…どういうことなんですか?」
「わたしは彼に止めてほしかった。だから…彼が情報を盗んだ所に、タレコミをした」
彼は盗んだ情報のことを、タカシナには打ち明けて、自慢していた。
それを聞いて盗まれた所に、彼が犯人だとパソコンから密告したのだ。
「ちなみにその相手って…」
「暴力団だ。彼は拳銃の密売の情報を盗んだんだ」
ニュースでは心臓をナイフのような物で一突きにされたと言っていた。
そのやり方は素人よりもプロだと、聞いていて思ったことを、ナツキは思い出した。
「結果、彼は殺されてしまった…。わたしのせいだったんだ」
顔を伏せたまま首を横に振るタカシナ。
ナツキはそんな彼に寄り添う。
「…ボクはそう思わない。彼は自分のしたことの重さを分かろうともしなかった。先生が密告しなくても、いずれは同じことになっていたと思う」
「ナツキ…」
顔を上げると、タカシナはナツキを抱き締める。




