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「あっ、すみません! 先生の彼女さんに迷惑ですよね」
「…いや、恋人いないから」
「そっそうなんですか? 先生、モテそうなのに」
「お前達の年頃だとそう見えるのかもしれないが、いざ恋人となるとそういうタイプじゃないとよく言われる」
「そう…ですかねぇ?」
ナツキは正直もったいないと思った。
けれど言ってしまうことは、秘めたる気持ちも言ってしまうこと。
なのでタカシナから視線を逸らし、呟くだけにする。
「ボクだったら…先生が良いな」
「何か言ったか?」
「いっいえいえ! その…学校にいる先生のファンのコ達が聞いたら、喜びそうだなぁっと」
「…ナツキはどうだ?」
「えっ?」
タカシナはふと真剣な表情になり、真っ直ぐにナツキを見つめた。
「ナツキはわたしに恋人がいないこと、嬉しく思うか?」
「そっそれは…」
ナツキは自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
「うっ嬉しいですよ! ボク、実は先生の隠れファンですし」
それを誤魔化すように、あえて明るく振舞った。
「そうか」
それを信じたのか、タカシナの返答は短いものだった。
「はい。先生は落ち着いているし、授業も分かりやすいし、パソコンの使い方も親切に教えてくれたし…」
気持ちを隠す為に慌てて言葉を続けるも、ふとタカシナが沈黙していることに気づいた。
「…タカシナ先生?」
改めて彼の方を見ると、タカシナはじっとナツキを見つめていた。
沈黙が、流れる。
見つめ合っている二人の距離が、だんだんと近づいていく。
「せっ先生…」
目の前に迫ってくるタカシナの視線から逃れられない。
「ナツキ…」
ナツキはゆっくりと眼を閉じる。
二人の唇は、静かに重なった。




