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初めての復讐

「お前は破門だ。これからは次男の雪哉に後継者教育を施すことにした。もちろん、ブラックカードも取り上げるからな。」


普段は温厚な親父が温度のない表情を浮かべていた。それは事実上の死刑宣告だった。


俺はあの名門、八千代家の長男だ。


えっ?知らない?

マジかよ?お前、本当に日本人か?

日本の唯一無二のホテル王、八千代貞継の長男だぞ?


まぁ、貧乏人ってのは住む世界が違うから、かえって俺のような雲の上のような存在のことはわからないか。



しっかし、破門か‥‥

ブラックカードもないってマジで本当にどうするんだよ?今週は水曜日には山川美波と、土曜日には芹澤綾菜と、日曜日には三浦萌奈とデートの予定なんだぞ。


金が無いと、デートできねぇじゃねえか。


親父のコネが効くレストランに行くのはいいとして、足すらねぇから移動はどうすればいいんだ?さすがに電車移動なんてダサすぎてできねぇしな。



しょうがない、俺が物心ついた時から運転手をしている、山野に頼むとするか。



「おぼっちゃま。申し訳ございません。ご主人様から、おぼっちゃまの肩は絶対に持つなと厳しく言われているものですから。」


山野は顔に苦痛の色に浮かべて絞り出すように声をだす。



しかし、彼は懐からボロボロの一万円札を取り出すと、俺に握らせる。


山野について話してみよう。


山野はお人好しの見本のような人物で人に優しい。泣いている子供がいると、すぐに駆け寄っていく。俺は見たことはないが、電車の座席も老若男女全ての人に席を譲ってしまう。


そんな彼だから、利用する奴だっていたのだ。


数年前、学生時代からの友人に頼まれて、借金の連帯保証人契約を結んでしまった。そして、その友人はお決まりのように蒸発して借金を背負ってしまった。


それでも、相手を恨んだりせずに、相手の無事を祈っているんだから、もう人間辞めて聖人にでもなればいいと思う。



まぁ、話は脱線したが、山野は借金でかなり苦しい。それで、あの一万円はかなり貴重なものの筈なのに、俺にアッサリわたすなんてどういうことだよ?


俺が『信じられない』と言った表情を浮かべると、山野は目尻にシワを寄せた。


「いいんですよ。私ができるのはこれくらいの事ですからね。」


「‥‥ありがたく貰っていくし、返さないからな。」


「もちろんですよ。おぼっちゃま、最近、あまり元気がないですから今日は楽しんできてくださいね」


控え目に手を振って俺を送り出した山野は俺にとって孫を可愛がるお爺ちゃんみたいな存在だが、俺って心配をかけ過ぎだろうか?



そして、水曜日、俺は山川美波とデートに出掛けるために電車に乗っていた。



せっめ〜っな。座席が空いていたのに気づいて座ったのはいいが隣の席のおっさんと肩がばちばち当たって気持ち悪いな。しかし、気持ち悪いからって立つと角が立ってしまうか?


どうするんだよ?

今日は誰もついてないから、喧嘩はマズイぞ。



ちょうど前に妊婦が立ったので、作り笑顔を浮かべて席を立つことができた。



「ありがとうございます。」

妊婦のお礼を背に俺は隣の車両に移動した。



そして、奴が視界に入った。

全身の血が沸騰したんじゃないかと思うほど、全身が熱くなり、視界が明滅する。


ダメだ。今はまだ準備が出来ていない。

とにかく今は雌伏のときだ。


慎重に綿密に計画を練って、あの身の程知らずを



地獄に落としてやる‥‥‥!

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