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初めての恋は盲目


はぁ、このジャージを着るのは中学の時ぶりだな。


俺は家の鏡の前で、ポーズをとる。

成長してしまったせいかジャージのパンツの裾が短い。まるでクロップドパンツみたいだ。


まぁ、今更買い替えたり出来ないよな。


一抹の不安を抱えながらも俺は眠りにつく、前に重大なことに気付いた。



「そういえば、俺って高飛びの知識はあんましないよな。付け焼き刃、かもしれないけどネットで調べるか。」


余りに熱中し過ぎたのだろう。結局寝たのは太陽が地平線から顔を出した頃だった。



「兄貴?おいっ、起きろ。目覚まし時計がうるさいんだよ。」


武史の怒号で目を覚ました俺は、時計を見て、思考が停止した。


現在、9時50分。

待ち合わせ時間は10時ちょうど。

三島公園までは自転車で20分。



あかん、詰んだ。



いや、取り敢えず遅れるとメッセージ入れてから急げば、芽愛の逆鱗に触れずに済むかもしれない。



急ぎで『15分遅れる』とメッセージを入れて

ジャージに着替える。そして、歯を磨きながら寝癖をなおして、家を出た。



それからはとにかく早くペダルを漕ぐだけの生物になりきり、ひたすらに漕ぎ続けて、なんとか10時10分には目的地である三島公園に着くことができた。


三島公園まで必死に自転車を漕いだせいであがった息を整えながら、待ち合わせ場所に駆け込んだ。



そして、頭が真っ白になった。



なぜなら芽愛の服装がおおよそ運動をするのに不向きな格好だったのだ。頭に血が上ってしまい、よく見れてはいないのだが、ジャージどころかヒラヒラしたスカートを履いていた。



おまけにヒールがついた靴なんて履いていて、彼女が本気で走り高飛びに取り組む気なんて更々なかったことがすぐにわかってしまう。



何が頑張るだよ。

本気にした俺が馬鹿みたいだ。



なんだろう。

このやり場のない気持ちは。


相原ってば、いつも一生懸命で、そんないい加減な事言うタイプに見えないからなのだろうか?


ただ、どんな人間にも欠点も過ちもある。


相手の事を好きになるというのはそういう部分も含めて好きになるということなのだろう。


それなのに、こんな1つのことでやるせない気持ちになるなんて‥‥『俺の好き』は、なんて歪んでいるのだろうか?



勝手に理想の相原像を描いて、理想と違ったら勝手に失望する。恋は盲目なんて言うけど、本当の相原を見ていない俺なんて、相原にとってみたら迷惑極まりないヤツなんだろうな。



自己嫌悪で何かが胃からせり上がってきそうになって、なんとか堪える。


「先輩、どうしてそんなふくそ‥‥大丈夫ですか?顔色悪いですけど」


なぜだか目を細めて怒りそうだった相原の動きが一瞬止まる。今度は心配そうに俺の顔を覗き込む。いつもなら俺の鼓動が跳ねただろう。


しかし、今だけは彼女に俺の本心を悟られたくなくて、顔を背ける。そして、


「悪い、帰るわ」

そう言い残して、追いすがる相原を無視して逃げ出した。




‥‥俺って相原の事が好きなんだよな?


相原だって人間だ。頑張ると言ってみたものの、心変わりくらいあるだろう。


「俺って、相原のこと好き‥なんだよな?」


俺は自分で自分が信じられない。


女の子に好かれたこととかないし、女の子の知り合いの少ない俺は『相原への気持ちが唯一無二だ。』なんて大声で言えるほど、数ある中から相原を選んで好きになった訳じゃない。



例えばトモヤのようにモテたら相原を選んだだろうか?芽愛をディスるつもりはないけど、彼女はとっても面倒くさい性格をしている。


そう思っている俺の好きはホンモノなのか?


結局その日は一睡も出来なかった。








今日の先輩変だったな。


私は全身が映る大きな鏡を見て今朝の事を思い出す。


せっかくのデートにちょっとキレイ目なイタリアンの予約したのに先輩は何故かジャージ姿で登場したあげく、、私の姿を見て急に顔色が悪くなってしまった。


「ちゃんとした格好で来て下さいね。」

って私言ったよね?


もしかして、私の格好が変なのかと思って友達に見てもらったけど、、、おかしくないって。


もしかして、清楚系の方が好みだったのかな?


ワンピースの裾にはレースがあしらわれていて、スカート部分の裾は膝上だったし。



一生懸命選んだし、『先輩が褒めてくれるかも』なんてガラにもなくニヤニヤしていた自分がバカみたい。


それとも単純に体調悪かっただけなのかな?

それはそれでダメ‥なんだよね。


先輩から『15分遅れる』ってメッセージを貰った時にヒドイ返事しちゃった‥本当、死にたい。



先輩、本当に大丈夫かな?

そういえば、頭に手をやってたよね?

風邪なのかな?



私は心配になってメッセージを送る事にした。

えっと、あんまり長いと先輩の負担になるかな?


う〜ん、何て打とう?

うん、こういう時はシンプルに心配している事だけ伝わればいいか。



私は迷って書いて、そして消してを繰り返した挙句、結局一文だけメッセージを送った。


『先輩、本当に頭大丈夫ですか?』



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