初めての好き
感想などいただけると、尻尾を振って喜びます。
「だぁ〜っ、、なんだよ、あの映画?原作と全然話違うじゃねえかよ?なんで86分の内70分がアクションシーンなんだ?おかしすぎるぞ」
そう、映画映えしないとでもおもったのだろう、推理モノなのに3分に一回爆発するのだ。そんなに爆発する探偵映画ってある意味新境地だったけどな。
「ふぅ〜っ、、ですよね。映画館も爆発してしまえば良かったのに」
物騒なこと言うなよ。
悪いのは脚本家と監督だろ?
「はぁ〜っ、、これからどうする?」
「シン君の家に行きたい。」
お〜ぃ、マジで言っているのか‥‥
それよりも気になるのが、シン君って?
いつも先輩としか呼んでくれないだろ?
「芽愛、家になんて言ってどうすんの?トランプくらいしかないけど。」
俺も相原に乗っかって名前で呼びかけた。
自然に顔が熱くなる。
なんで、相原は照れないんだよ。
しかし、よく見ると頰がほんのり桜色に色づいていて普段より1割り増しで可愛い。
「先輩、何見てるんですか?」
「いや、そう言えば芽愛って今日はいつもより大人っぽいよな。」
「へぇ、先輩でも気付いちゃうんですね。今日はちょっとだけ頑張って化粧してみました。」
芽愛はほんの少しはにかんだ笑顔を浮かべる。
普段のトゲのある彼女も可愛いと思うけど、照れっ照れの芽愛も可愛いな。これがギャップ萌えといったやつなのだろうか?
「へぇ〜、化粧しなくても可愛いけど、こっちもいいな。普段、休みの日は結構化粧するのか?」
「殆ど家に居るから化粧することはないですね。たまに出かけてもキャッチセールスとか怖いですからサングラスにマスク、帽子は必須ですよ。」
それは目立ちそうだ。
どちらかというと不審者寄りで。
「変装して、余計に目立ってる芸能人か?」
「あっ、芸能人?それで、コンビニの店員さんがやけによそよそしかったんですね?」
「店員さんって?」
「高校生位の男の子なんですけど。ジッと見てると真っ赤になって目をそらされるんです。」
芽愛は首を傾げる。
これは本当にわかっていない顔だ。
「それって芽愛に気があるんじゃ?」
「なんで私に?」
芽愛はこのまま更に首を傾げる。
あと二回くらい首を傾げさせたら首がもげてしまいそうだ。
「いや、世間一般から見ても芽愛は可愛いと思うぞ。実際告白とかされてるだろ?」
「本当にして欲しい人は中々してくれませんけどね。」
‥‥?
マジか?
好きな人居たの?
落ち込んだらダメだよな。
「へぇ〜っ、好きになってから長いのか?」
俺は平静を装って質問する。
「そんなにストレートに聞くんですね?さすがシン君。長くはないですよ、まだ数ヶ月です。」
数ヶ月って事は入学してすぐってどこか?
同級生なのだろうか?
少なくとも時期的に俺ではない事は確かだ。
やばい、泣きそう。
こういう時は芽愛の恋が結実するのを応援してあげるのが普通なのだろう。
「どんなところが好きなんだ?」
「‥底抜けにやさしいところ。ちょっと子供っぽいところ。誠実なところ。私と気があうところ。笑うとかわいいところ。ですね。」
少し照れながらポツリポツリと語り出す芽愛の顔はまさしく乙女の顔だった。
正直に言うと、結構ショックを受けてしまったな。
だから、俺は大げさに左手を振り上げて時計を見る。
「あ〜っ、こんな時間。俺、用事あったんだった。続きはまた今度な。」
そして、早口でそうまくし立てると逃げるようにその場を後にした。
目の前を歩く先輩を見て考える。
私は先輩のどこが好きなのだろう?
顔‥は悪くな、、いいと思う。
他の人に聞いたことないから私主観だけど。
じゃあ、性格は?
先輩はとにかく優しい。
例えば、私がどんな暴言を吐いても怒らないし、呆れたりなんかもしない。
中学の時、私には親友が居た。
その娘も私の暴言に対して先輩みたいな反応だから私も少しは安心していたけど、卒業式の日、彼女は私にこう言ったのだ。
「あ〜っ、これで芽愛とも縁が切れるね。私も友達が居ないからぼっちになりたくなくて、芽愛と付き合ってきたけど、芽愛の暴言はないわぁ」
「えっ?」
私の思考が停止した。
まさか彼女にそんな言葉を浴びせられるなんて、予想だにもしてなかったから。
「あれ、もしかして気付いてなかったの?芽愛みたいな娘、もう一生友達なんて出来ないね」
今までで一番の笑顔で言われた時は私は自分自身がバラバラと崩れるんじゃないかと思った。
どうやって家付近まで帰ったのかはわからないし、何故その日に限って先輩とバッタリ会ったのかもわからないけど、その時の私はいつも以上に攻撃的な気分になっていた。
「先輩、なんでこんな所に居るんですか?暇なんですか?それとも死にたいんですか?」
「いや、ちょっと用事があってな。相原と話せてよかった。相原、卒業おめでとう。」
先輩が笑顔を浮かべる。
「‥おめでたくなんかないですよ。」
しかし、私は思わず噛みつくような口調で先輩に言葉を浴びせかけてしまった。
「相原、どうした?」
「どうもしません、そんなに寄ってきてキモいです。消えてください。」
私の心は雨上がりの水溜りのように濁っていてひどく誰かを傷つけたい気分だったから。
「‥‥話したくなったらいつでもきくぞ。」
普通なら逃げるか、怒るかする。
そう思った私の考えが甘かった。
いつも私のワガママを聞いてくれる先輩は普通じゃないんだよね。
私は少し呆れたけど、それの何倍も嬉しかった。先輩だけは私を見捨てたりなんかしてくれない。
「実はですね。」
観念した私は心の中で降参のポーズをとる。
そして、私は全てを打ち明ける事に決めた。
先輩は私の要領の悪い話を辛抱強く聞き終えると、酷く悲しそうな表情を浮かべて口を開いた。
「そうだったんだ。でもな、俺ならこんなとこで腐ってないで、動きたいように動くけどな。相原はどうしたいんだ?」
先輩は私を挑発するようにニカッと笑った。
後から考えると私は完全に先輩にノセられてしまっていたのだろう。
勢いのまま親友の家に乗り込み、彼女と対面。
そのまま、部屋に上がり込んだ。
そして、
「ごめん、私のせいでイヤな中学校生活過ごさせちゃったね。私ばっかり楽しくてごめん。
美和の最後まで残してたお弁当のミートボールを勝手に食べてごめん。美和の漫画借りたままにしてごめん。嫌われてても美和のこと大好きでごめん。本当にごべんなざぃ」
最後は泣きながらで、まともに話せていたかもわからない。それでも、こんなことも言えないまま別れるよりはずっとよかった。
「私の方がごめん。本当に酷いこと言ったよね。
一緒の高校に進学する蓮香が、やらないと高校でイジメるなんて言うものだからのってしまったの。
芽愛があんなにショックを受けるだなんておもわなかったの。こんなに泣かせて、、、私、友達失格だよね。」
俯く美和を私はおもいっきり抱きしめてあげた。
もちろん、美和は驚いただろう。
正直、美和のやったことは浅はかだったと思うけど、私は美和が好きだからこれくらいで離れてあげる気は全然ないから。
そして、先輩はあの時から私の特別になった。
結局、今でも美和とは友達関係は続いている。
今日は絶対先輩とのノロケを聞かせてあげる。
でも、美和の好きな漫画の君のことも気になるから聞いてあげようかな。
私は今日も先輩の事を考える。
それだけで、私の世界は色づいて見えた。
十万字で終わる予定が‥‥超えてしまいました。
まだ続きます。