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初めての黒歴史



翌日の昼間


今日はトモヤが珍しく風邪で休んだ。


俺はクラスにトモヤ以外に親しい友人が居ない。

だから、教室で一人寂しく飯を食うのがイヤで体育館裏で食べる事に決めた。


あの場所人気がほとんどないからな。

それに、ベンチがあるので気兼ねなくボッチ飯を味わえる。



しかし、目的地にたどり着くと残念ながら先客が2人も居た。



男女が向き合って立っていた。



なんだ、リア充か?

もしかして、人気が無いところで思う存分イチャイチャでもしに来たんだろうか?


こんな奴ら原子核融合でも起こして爆発してしまえばいいのに。



‥‥‥いや、よく見るとカップルじゃない。



片方は神埼さん。もう片方はイケメンの爽やかな男だったけど、二人の距離はカップルのそれではないように見える。だってなんだかよそよそしいし。



「俺は前から刹那の事が好きだったんだ。なぁ、付き合ってくれないか?」

「はい、、、なんて言えないよ。私達は友達でしょ?それに、私は好きな人が居るから首を縦に振れないよ。」


神埼さんは側から見ている俺さえも胸が締め付けられる程、悲しそうな表情を浮かべている。そして、苦しそうに言葉を紡いだ。


これがもし演技なら、もう、俺は女の子のことなんて信じられなくなるだろうな。




「好きな人?おい、そんな話聞いたことないぞ。誰だよ、それって?」

イケメンは先程と違い、余裕の無い口調で神埼さんに詰め寄るが、


「それは、、、ヒミツだよ。」

神埼さんは人差し指を唇にあてた。


その仕草がなんだか艶めかしく思えたのは神埼さんが綺麗だからなのか、俺の煩悩が強いからかなのか?

とにかく、なんだかエロかった。



「刹那をストーキングしている二年生の男子。もしかしてアイツのことが好きとか言わないよな?」

そんな奴が居るのか?大丈夫なのか?


美少女も楽しく生きていくのは大変なんだな。

正直、人生イージーモードかと思ってた。



まぁ、男の方も情けない奴だよな。

ストーカーなんてしても相手をモノにするどころか、怖がらせるだけだろうに。



「あっ、、、あの人は違うの。地下鉄で私を救ってくれたってだけで、お互い恋愛感情なんて全く持ってないから。」


ん?

あれ?

地下鉄?

救ってくれた?



‥‥もしかして、ストーカーって俺のこと‥?

ウソだろ?



どっちかって言うと、神埼さんの方がストーカーだと思ってるんだけど。もしかして、俺の校内の評判って凄いことになってるのか?



「そうか。じゃあ、刹那の好きな人って誰なんだ?」

神埼さんに詰め寄るイケメンはかなり余裕が無くなってきた。割って入るべきだろうか?



「もおっ、しつこい男の子は嫌われるって習わなかった?」

神埼さんも『しつこく恩を返そうとする女の子は嫌われる』って習わなかったの?



「ウンワッウッウッ、わかったよ。もう、聞かない。刹那がそこまで頑なに拒むってことはそれなりに理由があるんだろうからな。」



「察してくれてありがとう。ごめんね。」

神埼さんはひどく悲しそうな表情で、真っ直ぐイケメンの顔を見つめた後、体をくの字に曲げた。


そして、神埼さんは俺の横を通り過ぎる際に『ぶっくん、、、あいたいよ。』と謎の言葉を呟きながら去っていった。



涙、、、、、間違いない。



すれ違う時に見た彼女の瞳には涙が浮かんでいたし、ひどく辛く、何かに必死に耐えているような表情を浮かべていた。


彼女のその様子は正直気になったけど、部外者の俺は彼女にかけるべき言葉が思いつかなかった。


だって、彼女が何が辛くて、何に耐えてるかなんて俺には想像がつかないんだから。


地下鉄で助けた時とは事情が違うんだ。無闇に人の事情に首を突っ込まないほうがいい。



俺は誰でも助けられるヒーローなんかじゃないんだからな。



ズキッ‥‥

また頭痛か?



思わずうずくまりそうになって、なんとか踏み止まった。




幸い、神埼さんは最後まで俺が居ることに気付かなかったようで思わず息をついた。

ただ、油断した俺はイケメンと目が合ってしまい、気まずさのあまり逃亡した。



あ〜、便所メシはあんまり気分の良いものじゃなかったよ‥‥







放課後


今日は天気が良く、雲ひとつない空が広がっていた。それはまるで俺の心を表しているようで、心が更に晴れ晴れしていくのを実感する。



俺の気分がこんなに澄んでいるのには訳がある。


今日は神埼さんが俺の背後を取ることもなく平穏な気持ちで1日の終わりを迎えることが出来たのだ。



『当たり前が当たり前であるということ』がこんなに尊いものだなんて、神埼さんに付きまとわれるまでは気付くことが出来なかった。



しかし、駅で電車を待っていると背後から肩に手を置かれたので、自分の鼓動が跳ねた。



短い春だった‥‥



うなだれつつも振り返ると、小葉‥か?

いやいやいやいや、まぎわらわしいって。



「どうしたの、伊織?今日は神埼さんと一緒じゃないの?」

チェックのスカート、紺のブレザー姿の小葉が目の前に立っていた。

まぁ、ウチの学校の制服なんだけどね。



「いや、別に普段から一緒じゃないって。それより、小葉こそ、今日も1人だなんてまるで孤高の戦士だな。」


これは小学校の時、ボッチの小葉をみんなの輪の中に入れようと誘ったら

『孤高の戦士は群れないものよ』

なんてキメ顏で言った小葉に対する皮肉だ。


結構昔の話なのによっぽど印象的だったのか、ウザいキメ顔すらもはっきり思い出せる。



『きっと、小葉は黒歴史を掘り返されて恥ずかしさに悶えるだろう。』そう思っていたが、


「伊織はわからないかもしれないけど、友達とズーッと一緒に居ると、たまには1人になりたくなるものなのよ。」

小葉はスルーしてもっともらしい理由を述べていた。但し、目は泳ぎまくっていたけど、、、


動揺し過ぎだろ?



「それに、昨日、友達一人増えたしね

あっ、そうそう、土曜日空けといて、ちょっと用事に付き合ってもらうから。」

小葉は俺の肩をバンバン叩きながら勝手に俺の予定を決めてしまう。


お前は大阪のおばちゃんか?


というか、俺男子、男子だから、ちょっとは意識してくれ。まぁ、本当に意識されたらそれはそれで気まずいからやめて欲しいけど。



「また荷物持ちか?UFOキャッチャーであんなにかさばる物ばっかりゲットしてんじゃねぇよ。まぁ、いいよ。」

どうせ土日に予定なんてないもんな。



そして、土曜日に待ち合わせ場所に行くと、小葉の隣には神埼さんが立っていたのだった。


この物語の神埼刹那さんは別作品の『氷結姫と呼ばれる‥‥』の神埼刹那さんとは全くの別人です。


作者の頭が死んでいて、名前が覚えられないので同じ名前にしてしまいました。そちらもお読みの方は紛らわしくて大変申し訳ございません。

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