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初めてのエッチなお願い


あれ?

寝てたのか?


目の焦点が定まらないが、たぶん誰かがこちらを覗き込んでいる。



「あっ‥気が付いた。」

焦点が定まってきた頃にはその誰かが刹那だとわかった。よく見てみると、彼女の目は赤く染まっていた。



「あれ?ここはどこだ?」

そう、見知らぬ天井、ベッド、部屋だ。


ただの部屋ではない、すごく豪華な部屋だ。

ダメだ、俺のボキャブラリーが死んでいる‥



「ホテルですけど、覚えてないですか?」


刹那は不安そうにこちらを覗き込むが、ちょっと顔が近すぎてドキドキしてしまう。



「あれ?俺たちホテルに?なにしてたんだ?」


「はい、恋‥エッ‥なんでもないです。思い出したらダメです。ほんとに死ぬかと思った」


恋‥?エッ○?

エッチな事?とか?


死ぬかと思った?

俺、そんなに下手だったの?


まったくもって覚えていないが、童貞を卒業したんだろうか?


というか、刹那。ぶっくんである俺への罪滅ぼしのつもりで、そんなことをしたんじゃないだろうか?


正直初めてなんで、上手く出来た自信がない。

刹那の身体に負担をかけなかったのだろうか?


様々な疑問が浮かんでは言葉に出す前に消えていく。


「刹那、大丈夫だったか?」

「いえ、葵達も手伝ってくれたし早くすみましたから」


‥‥葵さんが手伝った?

ウソだろ?


お貴族様は、着替えどころか初エッチまで使用人におんぶに抱っこだっていうのか?


正直に言ってしまうとドン引きなんだが。


まぁ、気になったのはそれだけではない。


早く済んだだって?

そんなに早かった?

それを本人にどストレートに言うの?

そういうデリケートな事はオブラートに包んで話すのがマナーじゃないか?



「いや、でもこうなった以上、責任がだな。つ、付き合うか?それとも誠意とか?」

誠意‥‥オブラートに包んだが、ようは慰謝料を俺が払うべきなのかも。


考えがまとまらないし、喉が渇いた。

近くにある水差しでコップに水を注いだ。


「つ、付き合うのがいいなら、うれしいですけど、こんな事で罪滅ぼしになるのかしら?ところで、誠意って?」


そこを聞くのか?

金で解決みたいで(いや、まさにその通りなんだけども)詳しく説明したくはなかったが‥



「お金だよ。」

言った後、グイッと水を一気にあおった。



「そうですか。えっと、、五千万位かしら?」


ブーッ‥‥


マーライオンのように、水を吹き出した俺を誰が責められよう。


なんなの?

俺ってば一生奴隷なのか?


まぁ、吹き出した水の大半が刹那の顔にかかったのだが、決してワザとじゃない。


「すまない、結構濡れたな。風邪引くからシャワーでも浴びてきたらどうだろう?」


「でも、イオ君が心配なんです。」


本当に、本当に心から心配していることは刹那の潤んだ瞳が雄弁に語っていた。しかし、体調は全然わるくなかった。


「あのなぁ、俺は刹那の身体のほうが心配なんだけどな。」

刹那にどんなエッチをしたかはわからないが、それでもそれなりに身体に負担はあった筈だ。


「さっきも言いましたけど、イオ君をここまで運んでくるのに葵達が手伝ってくれたから私は大して疲れてないですよ。」


‥‥‥?

あれ?

エッチは?


ま、紛らわしっ‥‥いや、俺の妄想が逞しいだけで、刹那は普通に話してただけなんだろう。


というか、刹那にバレたらドン引きされるな。



「そ、、そか。それでも、そんなズブ濡れだとやっぱり刹那が風邪をひくと思うな」

それから、何度も何度もお願いして、やっと刹那を、着替えさせることに成功した。



シャワーの音を子守唄にウトウトしていると、

音が止み、刹那がバスローブ姿で登場する。


あれ?

あれれ?

なんでそんな格好で‥‥

あっ、着替えか?

そりゃあ、持ってきてないよな。



とりあえず俺の服を渡すか、、

俺が上着を捲り上げている途中で刹那をみると、真っ赤な顔で俺から若干目を背けている。


どうやら純粋な刹那は俺の裸体に恥ずかしがっているようだ。


「‥‥早速、するんですね」

刹那は静かに呟くと頷いた。


する?

する?

あれ?


上着を脱いでしばし考えるけど、まったくもって意味がわからない。


‥‥思わず目を逸らすと鏡が目に入って自分達の姿が目に入る。



半裸の男とバスローブ姿の女が向かい合っているの。妙に客観的にそれを見つめて気づいてしまう。



明らかに俺が脱いではいけない場面だったな。


これ、まるで俺がヤル気満々みたいだ。

というか、刹那は刹那で警戒心がなさ過ぎる。


「あのなぁ、俺はぶっくんかもかれないけど、子供の頃とは全然変わってるんだよな。ちょっとは警戒してくれない?」


「警戒‥‥ですか?」

刹那は生まれて初めて聞く言葉のように辿々しく告げる。


「あぁ。それに助けたお礼も婚約破棄も過去の事だろ?もう過去に縛られるのはやめて前を向いたら?」


「えっ‥と過去があって今の自分があるんじゃないんで‥‥そうですね、前を向きますね。」


刹那は一瞬反論しそうになったのに、俺と目が合った瞬間に意見を翻した。


そして、ぎこちない笑みを浮かべた。



あっさりと意見を翻して、そんな笑顔を浮かべた理由が知りたい。


そんな好奇心がなかったと言えば嘘になる。


それでも、過去に囚われて胸を痛める刹那をもう見たくはなかった。



だから、俺は猫をも殺すアレを心の中に閉じ込めて

無理矢理笑みを浮かべた。


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