表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/54

初めてのワンピース


数日後


「待ったか?あれ?まだ約束の時間まで20分もあるんだけど」

刹那との約束の時間までまだ20分もあるのに、待ち合わせ場所には水色のワンピースを着た刹那が男に声をかけられていた。



そう、なぜだか、刹那に呼ばれたのだ。



「ううん、今来たとこ。」

刹那は言いながら目を泳がせる。いや、泳がせるどころか、目が溺れている。


男は舌打ちして去っていたからとりあえず安心だ。しかし、刹那はなぜつまらないウソをつくんだ?


「本当はいつから待ってた?」

「さ、30分まえ‥‥ごめんなさい、1時間前です。」


正直‥‥ドン引きだった。

前回と同じじゃないか?

なぜそんなに?

いや、そうか。



「待ち合わせ時間を1時間間違えたのか?」

「えっ‥‥??? あっ‥‥、そ、そうです」


一瞬、ドジっ子属性を持っていたのかと思ったが、この歯切れの悪さ‥‥というかウソのつけない性格なのだろう。


正直、これ以上追及したくはない。



「ところで、、、今日はどんな‥‥あっ、ワンピース似合ってるな。胸元の紺色のリボンもすごく可愛いし」


もちろん、相原に言われたからこんなことを言っているわけじゃない‥‥いや、別に刹那が俺を罵倒するなんて思ってないし。



「‥‥なっ、何を言ってるんですか?ふ、普通です。」

と言いながらも刹那は真っ赤になってしまった。うわぁ、意外と効果あるじゃないか。


「いや、似合ってると思うぞ。そういえば、今日はなんで呼び出されたんだ。」


そう、ちょうどお昼頃なのでランチとでも洒落込むのだろうか?



「そうでした。あの、イオ君。お願いがあるんです。」

しかし、内容を聞いて俺の頭は?だらけになった。







俺は玄関の扉を開けた。

そう。刹那は武史と話したいらしく、俺に仲介を頼んだのだ。


「ただいま。武史、悪いな。」

「まったく信じられない。俺は言ったよな、『兄貴に近寄るな』って。」


なぜだか武史はまるで野良犬のように刹那に敵意をむき出しにしていた。


「おいおいっ、どうしたんだよ?初対面の女の子にそんな態度失礼だろ?」

武史を窘めてみるが、


「初対面じゃないよな?お嬢様?」

武史は俺の聞いたことのない、色のない声を発する。



「はいっ、実はぶっ君には先日もお会いしているんです。だけど取り合ってくれなくて。」



「へっ?」

俺の口から変な声が漏れた。

それも無理はない。


だって、あのぶっ君が武史だったなんて。

ということは、2人が結婚したら、俺は刹那から『お兄ちゃん』って呼ばれるのか?


ちょっと、悪くないかもしんないっ。

いやっ、むしろ最高だ。



「刹那、おねがいがあるんだが。、、ちょっと、お兄ちゃんって呼んでくれない?」

「おいっ、兄貴、お前はこの裏切り者とははなさなくていいからな。」

武史は赤い色、、怒りの色を滲ませる。



「えっ?裏切り者?」

「そうだよ。こいつ、兄貴との婚約を破棄しやが‥‥やべっ、いやなんでもない」



「「えっ?」」

俺と刹那の声がハモった。


「えっ?」

続いて武史からも声が漏れた。



「「えっ?」」

その言葉を聞いた、俺と刹那の声がハモった。


やべぇ。

さっきから俺たち『えっ?』しか言ってねぇ。

まるでみんな言葉を忘れてしまったみたいだ。



「あ、、あの?アナタはぶっ君ですよね?」

そんなカオスな状況を破ったのは刹那だった。



「確かに俺はぶっ君って呼ばれることはあるけどな‥」

武史が言い澱んだところで扉が開いた。

そう、誰かが外から扉を開いたのだ。


「ああっ、わかりました。刹那様ってば、ぶっ君を探してたんじゃなくて、口を開けば『ぶっ君、ぶっ君』って言ってたそこの□リコン兼、元婚約者を探してたんですね?」


葵さん、、誰がロリコンだよ。

しかも一文字目を四角形の空欄にしてもそのまま読めちゃうから意味ないだろうが。



「ちょっと、まて。誰がロリコンだ「葵、どういうこと?」


「だから刹那様が探してた婚約者はそこの伊織さんなんですよ。ぶっ君を探せというから変だとは思ったんですが、やっと謎が解けました。」


笑顔でそう告げる葵さんはもちろん信じられないが、武史の『しまった』という表情がこれが事実だと如実に物語っていた。






「落ち着いたか?」

俺はお茶を出しながら刹那の顔を覗き込む。

涙は止まったものの、彼女の目は真っ赤だ。



まぁ、俺だって混乱している。



「まさかイオ君がぶっ‥私の婚約者だなんて。」


「いや、、元婚約者だからな。まぁ、信じられないが、どうせ俺は覚えてないから罪悪感を感じる必要はない。」


俺はそう言って刹那を安心させようとしたが、



「あの、、、私、、あの、、、あとで連絡します。今日は失礼しました。」


刹那の動揺はその程度では収まらなかったらしい。

慌てて頭を下げて去っていった。







あれ?


俺は今、刹那と高級ホテルのスィートルームに2人きりだ。しかし、今は刹那は俺の視界内にはどこにも居なかった。



そして、さっきまで隣のシャワールームから聞こえていた水の音がピタリと止む。




少しすると刹那が姿をあらわしたのだが、、、



あれれ?

なんでこうなった?


そう、刹那はバスローブ姿だったのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ